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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第二章 御主神たちの憂鬱

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17話 魔性のものに一人で立ち向かわされる女


【閲覧注意】このトンネル、ヤバすぎる|消えたjk3人組の謎を追う【緊急考察】

 12.4万回視聴・1日前

 狗猿の月に吼えろ 


「はあい、くんばんはあ。今緊急で動画回してるんですけどぉ、視聴者さんから『取り上げてくれ』というリクエストがほんっとに沢山来てるんですよねぇ。あ、申し遅れますたあ、私都市伝説チャンネル『月に吼えろ』のいぬざるですぅ。今話題の女子高生三人組me tuber『地図にないトンネル』。この動画がねぇ都市伝説界隈で今話題沸騰中なんですよぉ。このトンネル。一説には旧日本軍の極秘施設ではないかと言われてまして、実際、2022年にはぁ北海路立箱市にてぇ、軍事トンネルが新たに発見されぇ、昨年にも和歌川県泡酢市にて発見されたトンネル遺構はぁ、終戦間際の米軍本土決戦を想定して掘られたものと見られていまぁす。このようにね。和令の世でも『地図に乗っていないトンネル』というのはぁ、日本に数多く眠っていると推測されていまぁす……そのうちの一つに彼女たちが…」Me tube自動文字起こし機能。以下続きを読む。





   ***






 昨晩は、誰も眠れなかった。


 食事も喉を通らない。

 沈黙がテントを支配していた。

 

 一度は戻れたあのトンネル。

 日本に帰れたと思ったのは束の間だった。

 トンネルが崩れ、帰りの道を失った。


 テントに設置された簡易な寝台で、寝返りを何度も打つ。


 暗闇の中で、日向が声を上げて泣いていた。

 柚月も嗚咽の声を必死に押し殺しているようだった。


 私も薄い毛布を頭から被る。


——明日は月曜日……

 

 学校は無断欠席、追試も出られない……


 それどころか、きっと事件になってる。


 女子高生、失踪事件。

 動画も絶対にバレてる。


 でも、メールは送れた。

 無事は伝えられた。


 お父さんから来たメール……


「あの、トンネルは、昔……」

 続きが気になる。

 

 絶対に生きて帰る。


 神様なんて、知らない!



   *



 朝食は、お粥のようなものを数口しか啜れなかった。

 みんな、無言だった。

 みんな、泣き腫らした目をしていた。


 でも、外に出れば仮面を被らないといけない。

 簾の奥で、姿さえ隠される。

 泣いてたなんて、誰もわからない。


 ゲンブの地まで続く道は、どんよりとしていた。


 ロート・フォーゲルのモノノフたちは、すでに先に進んで、もう見えなくなっていた。

 周りにいるのは、カモーノとミワーノのモノノフたち十数人。

 サイクロプスとの戦いで半数は怪我を負っていたようだった。


 スザクの地と違って、道はでこぼこ、ところどころ大きな陥没もあった。


 枯れた木々、澱んだ水、ひび割れた畑……


 そして皮と骨ばかりになった村人たちが、ぼろぼろの家の前でうずくまっているのが見えた。生気のない目がこちらに向く。


「人が…… 住んでるんだ……」


 私は一人で牛車に揺られながら、放心状態でつぶやいた。

 後ろにアベーノの目が光る。

 ヨシーノも時折、沈んだようにため息をついていた。


 ヨシーノが、マカーベの名を小声でこぼすのが聞こえた。

 マカーベがビャッコに行ってしまったことを嘆いているのだろう。


——そんなこと、知るか!


 そのため息を聞くたびに怒りが募る。 


 教科書を開く気にもならなかった。


「……ねえ、アベーノさん? なんで私一人なの?」


 途中で、私は聞いた。


「御黒神さま…… もとより、牛車は、一人乗りにて、そふらふ……」


 そんな理由?

 確かに三人と一匹じゃ狭かったけど。

 さらに疲労感が募る。


 日向、柚月……


 あの二人、大丈夫かな?




   *




 その晩、テントの中で私は二人と抱き合って再会を喜んだ。


「うえええ〜ん」

「日向、柚月〜 寂しかったよぉ……」

「おーよしよし」

「ミワーノったらね! あの人、何を聞いても、およよ、およよよと泣いてばっかりで、嫌んなっちゃう!」


 仮面を外した日向が、ミワーノの真似をした。


「でも、アベーノの辛気臭い顔より、マシじゃない?」

「あーあ、マカーベがいい!」

「わんわんわん!!」


 二人は無理やりテンションを上げているようだった。


「スザクだけでも、こっちに来てほしい……」

 私の懇願に、二人は快諾してくれた。

「そうだよね…… 一人じゃ心細いよね…… スザク行ってあげて」

「ワン!」

「スザク…… ありがと」


 私はスザクの頭を撫で回した。


「明日の夕方には着くって」

「ゲンブの神殿みたいよ」

「じゃ、そこで、もしかしたら帰れるかも……?」


 その私の言葉に、日向と柚月は眉を曇らせた。


「そこが、魔性のものの棲家だって……」

「えっ……?」

「魔性のものって、アンデッド系だよね……」

「骨とかゾンビとか、マジ無理……」


 日向がうえっという顔をした。


「だけど、フォーゲルさんたちが、やっつけてくれるんでしょ?」

 私は希望的観測を口にした。


「ほんとにそう思う?」

 柚月が眉をさげて、私が手に持つフォースセイバーを見つめた。


「……電池、足りるかな?」

「やばいよね……」

「まさか、先頭に立たされるなんて、ないよね……?」

「まさかねえ……」


 私はかすかな不安を追い払うように首を振った。




   ***





「なんで、私が一番前なの?」

「わんわんわん!」


 フォースセイバーの光は、神廟の時より明らかに光量が減っていた。


 あれから二日が経過していた。

 結局、昨日の夕方にはつかなかった。


 水曜日の昼になってようやく神殿の城下町というか、廃墟のような細々とした集落が見えてきた。


 私はすでに疲労の極致にあった。

 お風呂にも入れず、着替えもできない。

 お気に入りのブラウスは薄汚れ、ほつれてきていた。


 夜もあまり眠れない。

 日中は、振動が直に伝わる木の車輪。

 柔らかい敷物が敷かれているとはいえ、私のお尻は痛みで悲鳴をあげていた。

 

 アベーノの監視するような視線と、ヨシーノの重いため息。

 どんよりと澱んだ牛車の中は、まるで拷問部屋のようであった。


「スザク…… 本当に、いてくれて良かった……」

「くうん」


 私はスザクを敷物の上に乗せ、その体に抱きついて耐えていた。


 牛車は昼なお暗い神殿の前についた。

 分厚い雲が空を覆っている。

 今にも降り出しそうだったが、ひび割れた地面と枯れ果てた植物は、雨不足を物語っていた。


 牛車を降りると、ロート・フォーゲルのモノノフたちが整列していた。

 千人の視線が、一斉に私に向く。


『これより! 黒神さまとともに、魔性のものの! 討伐に向かう!!』


 大柄なロート・フォーゲルが私の隣に立って、声を張り上げた。

 ごついガントレットと大剣が、私の隣でうなりを上げた。


『マジヤヴァエ!!』


 千人のモノノフの咆哮が轟いた。


——大丈夫? こんな大声出したら、ゾンビとか寄って来ちゃわない?


「えっ、アベーノは?」


 振り向くとアベーノとヨシーノは牛車から降りて、平伏していた。


「アベーノさん…… 来ないの?」


「御黒神さま…… ビャッコの巫女どもを、待つ身なれば……」


 アベーノは顔を上げない。


——嘘だ……


 私は直感で分かった。

 この老人、安全な場所から見てるだけなんだ……


 でも助けが来るというのは…… 本当かも?


 それまで、待てばいいじゃない……


 そう思ったとき、アベーノが再び声を上げた。


「……夕刻になれば、魔性のものが、溢れ出す故…… さ、今のうちに」


 まだ、昼過ぎ……


「日向…… 柚月……」


 二人も牛車の中から、簾を上げて私を見ていた。

 二人とも「ごめん」というように手を合わせている。


「わん!」

「スザク…… お前だけか……」

 私を見上げたスザクと目が合った。


「でも、通訳はいてほしい」


『オンアルジカミサマ!』


 そう言ったとき、フォーゲルがどうぞ、というように、かっこいいガントレットを差し出した。 


「行かないと、ダメ…… だよね?」


 私が動かないと、誰も動けない。

 そういうことらしかった。


『イザ!』


 ロート・フォーゲルが、重厚なガントレットをはめた手で、神殿への道を指し示した。

 拒否権はないらしい。


——え? 怖いよ……


 私は促されるまま、千人のモノノフの間をゆっくりと歩いていく。


 階段の上を見上げる。

 黒ずんだ石造りの神殿。

 何百年も人の手が入っていないような荒れ具合だった。


 でも、この光があれば……


 フォースセイバーのスイッチを入れた。


……ブ、ブ、ヴォン


 頼りない起動音が、私をさらに不安にさせた。

 赤いライトが明滅している。


——電池…… 持つ?


 生温かい風が吹いた。

 腐った臭い。

 かたかたと、乾いた音。

 木の枝が揺れた。


 まるで、魔性のものが「おいで」と手招きをしているようだった。



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