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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第二章 御主神たちの憂鬱

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16話 神廟の復活と女神の巫女


【ニュース24】

「……続いてのニュースです。群玉県前澤市で三日前から行方不明になっている高校一年生、秋田日向さん、宮城柚月さん、山形千尋さんの続報です。警察は今日未明、崩落した廃旅館の裏山から、山形千尋さんのものと思われる自転車を発見しました。現場周辺は地盤が緩んでおり、二次災害の危険があることから捜索は難航しています。一方、山形さんの家族によりますと、本日十八時頃、山形さんの携帯電話から『無事』『必ず帰る』などとする短いメールが、一度だけ届いていたということです。しかし、その後の連絡は途絶えており、警察は発信元の特定を急ぐとともに、事件と事故の両面で捜索を続けています。続いては、次のニュースです……」





   ***





 石室に熱狂的なマジヤバエが響きわたる中、空気の質が変わっているのに私は気がついた。圧迫感のある澱んだ空気が、すぅっと消えた。


「私、何もしてないのに……」

『マジヤヴァエエイ!!』


 神扱いは不可逆的なところまで来ているような気がした。


 でも、私は、困惑しながらも、別のことを考えていた。


——あのスケルトン、光に反応してた……?


 スケルトンが砂になったのは、このプラスチックの棒ではなく、この赤い光に触れたから? 


——だから、この光を消そうとしてた……?


 スケルトンが伸ばす手が、フォースセイバーに明確に向かってきていた。

 結果的に自滅しにきていたようなものだった。


——魔性のものって、アンデッド系……


 そして、この光に弱い……?


 そうだとしたら、電池が切れたら、詰む。

 乾電池はここでは手に入らないし、予備なんて誰も持っているはずがない。


「……消さないと」

 私はフォースセイバーのスイッチを震える指で切った。


 いつの間にか、マジヤバエの声は消えていた。

 モノノフたちが、ひざまずいたまま頭を下げていた。


 静寂が石室を再び、支配した。


「千尋! どうする?」

「こんなに集まってきたら、何もできないよ」

「くうん」


 日向と柚月とスザクが私の元に走り寄って囁いた。


——この場も、日本と繋がっていた。


「あのトンネルのドアの向こうはきっと、外に繋がってるよ」

「どうやったら、また、あの場所に戻れるんだろう?」

 私は首を振った。


「スマホの充電が切れたから、電波の場所は探せない……」


 その場所が分かれば、また日本に戻れるはず。


——そうだ! マカーベの勾玉! あれが光れば…… スマホの代わりになるかも……?

 確かめないと……


「マカ……」

 私がマカーベを呼ぼうとした時、マカーベは一足早くアベーノに呼ばれていた。


『マカーベ! ご苦労だった。お前だけ居なくなって心配したぞ』


 アベーノがマカーベの肩に手を当てて、ほっとしたような顔を見せた。

 どうやら私たちと一緒に日本のトンネルに迷い込んでいた、とは思ってはいないようだった。


『アベーノ殿。黒神さまのお力があれば、ビャッコの巫女どもも、動くやもしれぬ』


 ロート・フォーゲル卿がアベーノに何かを話しかけている。


『あの女神を信じる邪教徒どもか。だが、力は本物だと認めざるを得ない……』

『ビャッコもゲンブの地を、魔性のものから取り戻したいのは、同じなハズ』


 二人は頷き合っている。


——ビャッコ? ゲンブ? ミコ? 


 現地語の中に一部、日本語の単語が入ったのが耳に残った。

 何を言っているかは分からないけれど、アベーノたちはどこかの地名を挙げているようだった。


 そして、二人はマカーベに目を向けた。


『マカーベ! ビャッコの地に赴き、古き盟約のもと、巫女どもを呼んで参れ』

『我とアベーノ殿の書簡が出来次第、出発しろ』

『はッ!』


 マカーベは、石の扉の前でこちらに目を向けた。

 仮面の下で、私と目が合う。

 その目は何かを伝えようとしているように感じられた。


「マカ、ベ……くん?」


 だが、神にされた私たちと直接、言葉を交わすわけにはいかない。

 アベーノたちは、私たちがあのトンネルで互いに言葉を交わし合っていたことを知らない。


 一緒にいて素顔を見られたことを、もしバレてしまったら……


 最悪、死罪……


 私の眉が曇ったとき、マカーべは背を向けて扉の向こうに消えた。


「あっ……」


 勾玉の手がかりが行ってしまった……

 でも、それだけじゃなかった。

 胸がきゅっと締め付けられる。

 


「絶対、この窪みに、あのマカーべの勾玉を嵌めるんだよ」

「そんな、ゲームみたいなこと、ある?」


 二人は壁に掘られた勾玉の窪みを触っていた。

 日向のゲーム脳に柚月がツッコミを入れている。


「あと、三つある、たぶん」

 私は漠然と日向の推測も、間違ってないように感じた。


——さっき、アベーノが『ビャッコ』って言ってた。


 そこに、ある。きっと。

 それは、確信に近い思いだった。

 あとは、セイリューにもあるはず。


 それぞれの土地に一つずつある。


「そう、思うよね! それしかないよ!」

「でも、それで帰れるかは、分からないけど……」


 私が否定的な見解を述べた時、アベーノの声が響き渡った。


「御主神さま…… 魔性のものを、打ち(はら)う、御儀式(ごぎしき)、このアベーノ、感に耐えませぬ……」


 アベーノがそっと涙を拭った。


「後ろの勾玉が、お(よろこ)びに、光り輝いて、おりますぞ」


 アベーノが私たちの頭上、石棺の上に手を差し示した。

 仰ぎ見ると二つの石棺の上部に、手のひら大の勾玉の形をした刻印があった。


 それが、淡く青白い光を放っている。


「あれも、勾玉かあ」

「さっきまで、光ってなかった……」


 日向も柚月もその勾玉を見上げている。


「スケルトンを、倒したから……?」


 私はそう推測した。


——まるで、封印が解けたみたい……


「神廟が…… 数百年ぶりに、我らの、もとに、お戻りに、なり申した……」


 アベーノの声が、涙声に変わっていった。


——数百年ぶり……?


「御主神さま、そろそろ、夕餉の、時間にて、そふらふ」


 アベーノが現地語で何か声をかけると、駕籠を担いできたモノノフが姿を見せた。


「さあ、御駕籠へ、わたらせたまえ」


 その声には、命令でも、懇願でもない、従うことを前提にした響きがあった。


 私たちはため息をついて、モノノフに促されるまま駕籠に乗ることしか出来なかった。


 私は石室を出るときに振り返って、ちらりと淡く光る勾玉を見た。


——その光は、そこが帰る場所だと、差し示しているように感じられた。


 一人で駕籠に乗せられて、また何かを誤解されたことに、今更ながら震える。


 あのアベーノの狂信的な目、ロート・フォーゲルの値踏みするような態度。


 無事、帰れるのだろうか?


——マカ、ベくん、必ず戻ってきて……


 この先に連れて行かれる魔性のものの地。


 不安が募る。


 勾玉がそこにも、あるかも……


 早く、家に帰りたい。


 だけど、だけど……


 マカーベのりりしい顔立ちが思い浮かぶ。


 マカーべに抱き上げられた、あの力強い腕の感触と体温。

 それを思い出すと、恐怖で冷え切っていたはずの体が、芯から熱くなるのを感じた。



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