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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第二章 御主神たちの憂鬱

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15/84

15話 送信と骨


Me Tube『地図にないトンネル ⑥』

再生回数: 2,234,567回視聴 3日前 2,891件のコメント



@conspiracy_guy 2時間前

これ警察も調べてるらしいけど、炎上商法だろ

good 12   bad


@older_sister_type 3時間前

お願い、無事でいて。ご家族のこと考えたら胸が苦しい

good 234 bad


@local_resident 5時間前

地元民だけど、あの旅館の裏、昨日から警察と消防がずっといる

トンネル崩れてて入れないらしい

good 567 bad

 返信 ↑

 @news_junkie 4時間前

 マジか…生きててくれ

 good 234 bad





   ***






 獣臭さとカビ臭さがつんと鼻をついた。


 空気が明らかに変わっている。

 マカーベの勾玉は淡く光ったまま、ぼんやりとその凛々しい顔を照らす。

 

 柚月のライトが照らし出したのは二つの石棺だった。


「戻ってきちゃった……」

「マジか……」


 振り返ると入ってきたはずのトンネルの鉄の扉は、石の扉に変わっていた。

 目の前には、あの石棺が鎮座している。


 あの…… サイクロプスの寝床?


「……マカーベさん? 降ろして……」


 マカーべの力強い腕に抱かれたままだった私がはっと意識を取り戻した。

 マカーベが慌てて、私を降ろした。

 日向と柚月の二人がにやにやしてこっちを見ていた。


「私も抱っこして欲しいなあ」

「そんなことより電波! メールだけでも……」


 私はポケットの中から、スマホを取り出した。


 アンテナ一本。

 4Gの表示がついていた。

 残りのバッテリーは3%。


 通知を無視して、メールボックスを開いた。


「今、どこにいる?無事か?返信してくれ」

「お父さん……」

 父からのメール、着信が数十件溜まっていた。

 日向も柚月もスマホを覗く。


 マカーベは剣の柄を握り、辺りを警戒するように後ろを向いていた。


 送信失敗のメールを開く。


「お父さん、ごめん」

 削除、やり直し。


 震える指でフリック入力をしていく。


「無事です」

 送信。


 バッテリー2%。


「日向も柚月も一緒」

 送信。

「トンネルに入った」

 送信。

「崩れて出られない」

 送信。

「知らない場所にいる」


 無情にもバッテリーの数値が減っていく。


 バッテリー残り1%。


「でも、生きてる。絶対帰る」


 送信。


「お願い!」


 シュポン……


 祈るように送信をタップする。


 日向も柚月も、手を組み合わせて目を閉じた。


 次の瞬間、最初のメールに「既読」がつき、瞬く間にすべて「既読」になった。


「既読ついた!」

「届いた!」

 ほっとした歓声が上がった。


「お父さんから、返信来た!」


 父からのメールの冒頭が表示される。


「無事で良かった。あそこのトンネルは、昔……」


 メールを読もうとした時、バッテリーがついに尽きた。


 私は真っ暗になったスマホを持ったまま、固まった。


「……お父さん、あのトンネル、何か知ってたの?」


 電源を入れ直す。

 続きが気になる。


「お願い!」


 ポン…… 一瞬、画面が光り、すぐに電池マークが表示された。


「マジか……」


 日向が天井を仰いだ。

 柚月がため息をついてライトを周囲に向けた。


「あ! 柚月! 右側の石棺の壁を照らして!」


 私は昨日見た模様を思い出した。


「これって、勾玉と同じ形だよね……」


 手のひら大のアルファベットのCの形。

 陰陽太極図のような模様は、マカーベが持っていた勾玉と同じ形だった。

 

——昔、父に連れられていった発掘現場で見つけたのと、似てる……


「見て、こっちにもあるよ」


 左側の石棺の壁にも上下左右逆さの同じ模様があった。


「あ、これって……」


 ヴン…… 私はフォースセイバーのスイッチを入れた。

 フォースセイバーの赤い光を石棺の間の壁に向ける。


 その瞬間、カタカタと乾いた音が響いた。 


 赤い明かりが、小さな勾玉の模様が並んで四つ彫られているのを照らし出した。


「ぐるるるる……」


 散らばっていた骨の破片が、まるで見えない糸で引っ張られるように寄り集まっていく。スザクが威嚇し出した。


「この窪みって、もしかして……」


 私がつぶやいた時、柚月の悲鳴が上がった。


「嘘でしょ! 骨が動いてる……」

「ヴァンヴァン!! グルルゥゥ!」

 スザクが毛を逆立てて、吠え立てた。


 ヴゥン…… 振り向くと同時にフォースセイバーは音を立てて赤い光が残光を描いた。

 そのフォースセイバーの光に反応したかのように、骨が組み合わさり始めた。


「御面、つけろ!」

 それと同時にマカーベが叫んだ。


 石室の向こうから、鎖帷子のガチャガチャした音が響いてきた。

 アベーノが何かを叫んでいる声が聞こえた。

 その声は切羽詰まったような、悲痛な声だった。


「やばい……」

「マカーベ、死罪になっちゃう」

 私たちは慌てて仮面をつけた。


「マカーベ! 私はヒナタ、この子がユヅキ、そしてチヒロ。覚えといて」

 日向がマカーベに小声で囁いた。

「……チヒロ」

 マカーベの顔が私を向いた。


 私はダース仮面の下で、顔が赤くなった。


「ちょっと、こっち来てるよ!」

 骨は吊り上げられるように立ち上がった。

 柚月が悲鳴を上げ、マカーベの後ろに隠れるように下がった。


 薄汚れた骨は、一つとして完全なものはなかった。

 噛み砕かれ、折れたその破片は、人のものか動物のものか、判別できない。

 しかし、それは操り人形のように歩き出した。


「カタカタカタ……」

 人の頭骨を形作った顔が、百八十度こちらに向いた。

 そして、その口が、不気味な音を発した。

 まるで笑っているような、おぞましい音だった。


「ひっ!」

「来ないで!」

「わんわんわん!!」

 そのスケルトンは、私の手に持つフォースセイバーに反応したかのように、ゆらりと向きを変えた。


 その刹那、マカーベが長剣を抜き払うと同時に、居合いのように振り下ろした。


 頭から袈裟懸けに斬られたスケルトンは、ガラガラと音を立てて一瞬崩れ落ち——

 そしてまた、上から引っ張られるように元に戻った。


「チヒロッ! ゼッタイ、たすける!」

 マカーベの燃えるような目が、私を見据えた。

「マカ、ベ、くん……」

 マカーベは再び剣を振るう。

 一閃、二閃、三閃。

 ガシャ! ガシャンと骨を砕く音が響く。

 しかし、骨は何度でも再生した。


「カタカタカタ……」

 スケルトンの口が動き、私の方を向いた。

 

「来ないでえ!!」

 私はフォースセイバーを握りしめて、スケルトンに向けた。

 手が震え、ガクガクと足がすくんだ。


 二つの石棺は高く、その挟まれた空間は狭く、どこにも逃げ場はなかった。

 ゆらりと迫るスケルトンに、震える足で後ずさる。

 背中が壁に触れた。


 フォースセイバーはぶるぶると震え、その度に残光が尾を引いた。


「きゃあ!!」

 スケルトンの手がフォースセイバーへ向かって伸びた。


 その背後から、マカーベの剣が何度も骨を崩した。

 しかし、一瞬にして修復されていく。


「カタカタカタ……」

「いやあッ!!」

 そのとき、私が突き出したフォースセイバーが骨の腕に触れた。

 コツンと押しのけた感覚があった。


「御主神様!!」

「グルルル……! ワンワン!!」

 割れた石室の扉から、アベーノが飛び込んできた。

 スケルトンを見たその顔は青ざめ、目が見開かれた。


 後ろから、松明を持ったモノノフたちが続いていた。


「ま、魔性のもの……」

 アベーノの声が震えた。


 モノノフたちが慌ただしく石室に入ってくる。

 瞬く間に石室は、人でいっぱいになった。


『黒神さまをお救いするのじゃ!』

 ロート・フォーゲルの叫びに、モノノフたちは剣をスケルトンに向けた。


「来ないでぇ!!」

 私は目をつぶって、フォースセイバーを振り回した。

 こつんこつんと、骨に当たる感触が手に響いた。


——もろい感じがする……

 

「御、黒神さま……」


 アベーノの困惑した声が響く。

 私が目を開けると、フォースセイバーに当たった骨が、砂のように崩れていた。


「か、た…… か……た……」

 フォースセイバーの光が当たった場所から、スケルトンの骨は次々とヒビが入り、砂となっていく。

 瞬く間に、私の前に砂の小山ができた。


「えっ…… なんで?」


 私は呆然としたままフォースセイバーを握りしめ、立ち尽くしていた。


 静寂が、石室を包み込んだ。


 誰も、何も言わない。


「おぉ……おお……」


 やがて、アベーノが震える声を出した。


「光の剣…… 魔性のものを、塵に還す…… まさしく……」


 アベーノが膝から、崩れ落ちた。


「まさしくッ! 神っ!!」


 その絶叫が石室に轟いた。

 

『本物の神じゃあッ!!』

 ロート・フォーゲルが何かを叫んで、片膝をついた。

 モノノフたちも、自然とひざまずいた。


『神! 我らの神!』


 モノノフの一人が叫んだ。


『マジヤヴァエ!!!』

『マジヤバエ!!』


 熱狂的なマジヤバエが石室にこだました。


——違う! そんなんじゃない!


 私は、ただの女子高生……


 小説家になることを夢見る、ただの女の子。

 

 神なんて言わないで!


「お父さん! 助けて……」


 その叫びは、誰にも届かなかった。


 


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