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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第二章 御主神たちの憂鬱

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14/84

14話 勾玉と境


 Yafooニュース


【女子高校生3人が行方不明。最後の目撃は金曜夜。SNSでは憶測も】

 群玉県前澤市で女子高校生3人が同時に行方不明となってから、2日が経過した。3人は

 市内の同じ高校に通う友人同士で、金曜夜に外出した後、家族や友人と連絡が取れなく

 なっている。SNS上では、3人が以前から「地図にないトンネル」と称する場所で動画

 撮影を行なっていたことから、先日崩落が確認された裏山との関連を指摘する声が出て

 いる。警察は事件、事故の両面から崩落との関連を含め慎重に調べを進めている。

 (群玉新報・20日 20:34)                    続きを読む


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 ⚪︎dke******

 無事に見つかってほしい。ただそれだけ。家族の気持ちを考えると胸が痛い。

           返信 12 共感した 112 なるほど 0  うーん 0  

 ⚪︎kbt******

 SNSの憶測は控えるべき。まずは安全を祈りたい。

 返信 22 共感した 98 なるほど 5  うーん 0  

 ⚪︎jmn*****

 最近の子は夜に配信とか普通だからな。親は把握してなかったのかな。

   返信 9 共感した 34 なるほど 12 うーん 22

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   ***





 

 天井から、砂がダース仮面の頭に降りかかった。

 こつんと小石がヘルメットに当たって、私ははっと我に帰った。


「わんわんわん!!」

 スザクが柚月の周りを走り回って吠え立てていた。


「……崩れて、くるかも」


 私が誰にともなくつぶやくと、その声に柚月も顔を上げた。

 耳を澄ますと、どこかでコンクリートがきしむ嫌な音が続いていた。


「ヤバいよね……」

「……逃げないと」


 土砂とコンクリートと岩で塞がれたトンネルは、人力では到底、掘り起こせないと見ただけで分かった。

 近づくだけで足元からかすかな振動が伝わってくる。


 私はダース仮面のヘルメットを取った。

 投げ捨てたい気持ちを押さえて小脇に抱える。


——柚月のお兄ちゃんのだった……


 日向も柚月もすでに、お面は外していた。


「奥に、行こう……」

 日向が首を奥に向けた。


「そうだね…… トンネルの向こう側に抜けられるかも……」

「……もしかしたら、あっちの世界に行かなかったら、生き埋めになってた……?」

「……」


 例えそうだとしても、不運なのか幸運なのか誰にも分からなかった。


 私たちは大きなため息をついて、重たい足を来た道に向けた。


 そのとき、金属音が暗闇の向こうから、かすかに響いた。


「……何、今の?」

「鎖帷子……?」


 柚月がライトを向ける。

 光の輪の中に、何かが動いた。


「グルルル……ウォンウォンウォン!!」


 そのとき、スザクが吠えた。


「誰か、いる……?」


 柚月がライトを向けた先に、人影が伸びた。

 鎖帷子にマント、剣を下げた長身のモノノフ。


 その人影は、眩しげに手を顔に当てがった。


「マカーベさん!」

「マジか……!」


 その声を聞いたマカーべは、慌てて平伏する。


「もう、それはいいから……」


 日向がため息をついた。


「マカーべさん。やめてよ」

「もしかして、マカーべさん、日本語話せない? 大和言葉、分かる?」


 私はその疑問を確かめたかった。

 日本語を話せるのは、神官の格好をしたアベーノ、ヨシーノ、ミワーノだけ。

 モノノフたちは理解をしていなかった。


 だけど、マカーベなら、もし転移者の子孫だったら、言葉も受け継がれているかもしれない。


 果たして、マカーべは言った。


「オン、アルジ、カミサマ…… お面、外すな」

「えっ? 外すなって、タメ口?」


 柚月が思わず突っ込む。

 抑揚は変だったが、「御主神さま」と言ったのだと分かった。


「やっぱり……」

「日本語分かるの!?」


 日向が目を丸くしている。


「祖父の祖父、江戸。言葉、少し。父、夜、教える」

 マカーべは平伏したまま言った。


「江戸! かへりたし!」


 やっぱし、あのかへりたしは、江戸時代か!


 マカーベは松明を、持っていなかった。


——落とした?


 ここに迷い込んで、暗闇の中、途方に暮れていたのだろうか。


「マカーべさん? どうやって、こっちに来れたの?」

 日向が問いかける。


「……?」

「境を越えた……? なぜ?」


 私はその言葉を思い出した。

 その”境”にマカーべは反応した。


「境…… 勾玉、光った。祖父の祖父、残したもの」


 マカーベは巾着のついたネックレスを襟から引っ張り出した。

 巾着から光が漏れている。

 巾着をひっくり返すと、光り輝く勾玉が転がった。


「つまり、この勾玉があれば、境を越えられるってこと……?」


 マカーべが首を振った。


「祖父の、祖父の、言い伝え……」


 マカーべはたどたどしく話すが、もどかしそうに口をつぐんだ。


「きれい……」

「これって、スマホと同じ明るさじゃない?」


 冷たい青白い光が、手のひらから漏れてその場を照らし出した。


「ほんとだ……」

 私はスマホの画面を再び開いた。

 比べると似たような現代の光り、明るさだった。

 ちらりと表示に目を向ける。


 変わらず圏外の表示。

 バッテリー5%の表示に顔が曇る。


「……境を越えるには、この光が必要?」


——ここ…… 世界と世界の境目なんだ……


 私は思わず心の中でつぶやいた。


 そのとき、地響きが起きた。

 パラパラと砂と小石が降り注ぐ。


「やば、早く行かないと」

「マカーベさん? お面つけたよ」


 日向が突然、ゴムを鳴らして言った。

 もちろん、誰もお面はつけていない。

 そんな余裕はない。


「顔を上げて。早く行かないと崩れちゃう」


 マカーべがその声に顔を上げた。


 柚月が持つライトと勾玉の明かりが、四人の顔を浮かび上がらせた。

 私とマカーべの目が合った。


 そのマカーべの目が見開かれた。


「ピー…… コ……?」

 マカーべの口から、呆然としたようなつぶやきが漏れた。

「ま、かべ……くん?」

 正面から見るその端正な顔は、真壁くんにそっくりだった。


——ピーコ……?


 女の人の名前……?


 一瞬の間だった。


 慌ててマカーべが平伏しようとした時、日向が叫んだ。


「マカーべ! 立つのじゃ! 急ぐのじゃ!」

「わんわんわん!!」


 土砂が崩れ落ちる音が後ろで響いた。

 マカーべも緊急だと悟ったらしい。


 その顔がきゅっと引き締まり、素早く立ち上がった。


「走れ!!」

 日向と柚月が走り出した。


 しかし、二人とは比較にならないほど、私は運動音痴だった。

 一学期の体力テストで五十メートル走、十五秒……

 ぶっちぎりの最下位だった。


「千尋!」

 柚月が遅れた私に気がついて振り返ったとき、大きな影が横切った。

 マカーべが風を切って駆け戻ってくる。

 そして、私の手を取った。


「……えッ!?」


 顔がみるみる真っ赤になっていくのが分かった。


「ま、待って……」


 マカーべの大きな手に強引に引かれて、膝が崩れる。


「千尋っ! 早く!」

「マカーべさん! 千尋頼む!」

 柚月のライトは前方の闇を切り裂いていく。


 マカーベが後ろを振り向いたその目が、緊張を帯びた。

 トンネルの奥で雪崩のように壁が崩れ始めていた。


 すぐ後ろでコンクリートが剥がれ落ち、大きな破片が地面に落ちた。

 マカーべに力強く引っ張られ、足がもつれて転ぶ。


 岩が落ちる音、コンクリートが崩れ落ちる地響きが、すぐ後ろから迫った。

 砂煙が舞い、土臭さが押し寄せる。


 マカーべの眉がきゅっと寄った。

 力強く引き寄せられる。


「きゃっ!?」

 そして、私の軽い体がふわっと浮いた。


「かるい」

 マカーべが私の肩から脇に手を回し、両膝を抱え上げたかと思うと、一瞬でお姫様抱っこにされていた。


 真壁くんそっくりの顔が、すぐ近くにある。

 りりしい顔立ち、力強い腕。


 脳内で「なろう小説」のテンプレ展開が一気に再生される。


——こんな時に! なに考えてるの私は!


 私は、ただのモブのはずなのに。


 マカーべは私を抱えたまま、日向たちに追いついた。

 トンネルは息をつく暇もなく、ドミノ倒しのように土砂に埋もれていく。


 私は鞄とダース仮面、フォースセイバーをしっかりと握りしめながら、顔を真っ赤にして硬直していた。


「いいなあ」

 柚月がつぶやいた。


「わんわんわん!」

 スザクが吠えた先には、鉄の扉があった。

 ドアのノブは取れている。

 重たいそのドアを日向と柚月が体ごと押し付けて開いた。


 ぎいっとドアが軋み、一人が通れる隙間が出来た。

 そこに日向、柚月、マカーべと私の順で中に滑り込んだ。


 後ろでトンネルが崩壊していく音が轟いたのが、どこか遠い出来事のようだった。




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