表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第二章 御主神たちの憂鬱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/84

10話 御主神と甲羅


【Ech】オカルト板

【地図にないトンネル】JK三人組の動画を考察するスレ Part12


1: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/18(金) 23:45:12.34

前スレ埋まったので立てました


最新動画の考察まとめ:

・前方後円墳が映ってる(今城塚古墳に酷似、継体天皇?)

・崇徳天皇の和歌が岩壁に

・二人の天皇が異世界転移した説


152: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/19(土) 01:23:45.67

>>1 継体天皇(507-531年)と崇徳天皇(1156年没)

600年以上の時間差があるのに、なぜ同じ場所に?


189: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/19(土) 02:15:33.21

トンネルが時代を遡ってる説

旧日本軍→煉瓦(明治)→岩壁(近世)→古墳時代 ?

JKたちも過去に行ってる?


234: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/19(土) 03:42:18.90

【悲報】警察、まだ発見できず

ご家族が心配してるぞ……早く帰ってきてくれ

 





  ***






「つ、疲れた……」

 お面を外した日向が、薄っぺらな布団の上に突っ伏した。

「もう、ムリ……」

 座り込んで頭を抱えた柚月にスザクが寄り添う。


 脳裏にまだあの獣の姿と飛んだサイクロプスの首、血の匂いが鮮烈に残っている。

 燭台の蝋燭がじじ……と静かな音を立てた。


「牛、食べられてた……」

「やめて……」

「……」


 私はあの悪夢のような光景を振り払うように、鍵穴のような前方後円墳を思い出した。


「あの、前方後円墳…… 今城塚古墳に、似てた……」

 

 父の研究対象だった。

 継体天皇のものとされている古墳。

 図面を睨み、考え込む父の姿が朧げに浮かんだ。


 私はこの世界にきてからの出来事を、疲れた頭で整理しようとしてみた。


「……ケータイ祖神って継体天皇? 瀬をはやみって崇徳天皇?」


——異世界転移? 異世界転生?


 この世界に私たちみたいに来て、この地を統治した……?


 ため息をつく。分からないものは分からない。


「もともと、古代の天皇だし…… この世界を治めるのに違和感はなかったんだろうけど……」


 父のメールをふと思い出す。


「お父さん、家に帰ってきてたんだ……」


 幼少の頃、ライターとして世界中を飛び回る母親と離婚して、父に引き取られた。

 東京から祖母の住むあの家に引っ越してきても、父は、研究・調査であちこち飛び回っていた。


 その祖母も去年亡くなり、あの広い家でほぼ一人で暮らしていたのだ。


「なに、ぶつぶつ言ってるの?」

「ごめん……」

「最後のお菓子食べる?」

「ありがとう……」


 グミを一粒口に入れる。甘酸っぱさが、疲れ切った脳に染みる。


「でも、電波が届くところが他にもあったじゃん! きっとどこかで日本に繋がってるんだよ!」

 日向はいつでもポジティブだった。


 その明るさに、どれだけ救われてきたか。


「そうだね…… こんなとこにいるよりも、日本で補習の方がよっぽどマシ」

「やめて……」

 柚月が本気で嫌そうな顔をした。


「なに? これ? なにか書いてある……」

 寝転んでいた日向が石壁を見て、不審な声を出した。

「柚月、ライト貸して」

 日向が瀬をはやみの掛け軸を少し傾けた。

 ライトを向けると、かすれた文字が照らし出された。


「かへりたし……?」


 墨で書かれた、古い文字。

 何か硬いもので削り取ろうとした跡がある。

 続いて書かれた文字は読めない。


「帰りたいってこと?」

「誰が、書いたの?」


 嫌な予感が、音もなく忍び寄る。 


「……私たちの他にも、ここに誰か来てたってこと?」

「まさか、……ねえ?」

「……その人、どうなったの?」

 

 重苦しい空気が流れた。

「帰りたい」と願った誰か。

 その願いは叶ったのだろうか。


——それとも……


「御主神さまがた…… 御食を、お調えいたして、ごじゃりまする」


 ヨシーノの声が、簾の向こうから響いた。

 その声色は、ひどくよそよそしい、畏怖に満ちたものだった。


「おんあるじかみ…… さま……?」

「ミケって……?」


 私たちは困惑した顔を見合わせた。


「粗末にては、ごじゃりまするが、御取りあげ、あそばせ、そうろう」

「……?」


 へりくだるような物言いに、私の背中が寒くなった。


「ヨシーノさん? 私たち神様じゃないですよ?」

「私には日向って名前があるんだけど?」

「こんなとこッ! もう居たくない!」

「ワンワンワン!!」


 私たちは口々に訴えた。

 しかし、帰ってきたのはアベーノの震える声だった。


「おお…… これぞ、まさしく…… 御主神がたの、御試し……」


 会話が成立していない。

 その不穏な言いように身が凍る。


「だから! 違うって言ってるでしょ!」

「このまま簾上げて出ちゃおうよ!」


 日向と柚月が大声を上げた。

 

「素顔見たら、死罪になるんでしょ! だったら見せれば……」


 その日向の勢いは、次のアベーノの冷たい言葉で凍りついた。


「神をたばかる、不貞な輩であるならば…… 即座に死罪もいたしかたなし……」


 その不吉な言葉の響きに、日向の簾にかけた手が止まった。


「え……?」


——どういうこと?


 神様なら顔を見せちゃいけない。


 でも、神様じゃない偽物なら、騙した罪で殺す?


 つまり、「神様を演じ続ける」か「死ぬ」か。

 二つに一つってこと?

 逃げ場なんて、最初からなかった……


 私は青ざめて座り込んだ。


「グルルル……」

 スザクが低く唸った。

「大丈夫だよ…… 大丈夫……」

 柚月がスザクを抱きしめて、自分に言い聞かせるように呟いた。


「……どういうこと?」

「バレたら、死罪……」


 日向が私を見た。

 私はうなずくしかなかった。


——かへりたし

 

 石壁の文字が頭に浮かんだ。


 あの文字を刻んだ人も、同じように追い詰められて、そして……?


 小説家志望の嫌な想像力が、否応なく掻き立てられる。


——これって、単なる異世界ものじゃなかったの?


 いつの間にか歴史ミステリースリラーものになってる……


「御主神さまがた…… 夕餉の支度が調いまして、そふらふ」


 アベーノの声が一段と低くなった。

 重苦しい沈黙が、部屋に満ちた。

 胃が痛くなるような緊張感。


 喉が渇いて、ひりつく。

 飲み込む唾さえ、出ない。


 そういえば、水分を、昼から取ってない。


——コーラでも飲みたい。冷たい炭酸を喉に流し込みたい。


 そんな気分だった。


「もう! やってらんない!」


 日向が叫んだ。

 恐怖が一周回って、怒りに変わったのだろう。


「まずいご飯も、変な儀式も、全部いや!」

「ちょ、日向! 怒らせたら……」


 私の制止は、日向を止められなかった。


「もう知らない!」


 日向も限界だったのだろう。


「喉が渇いたのッ! コーラ飲みたいッ! コーラ持ってきてッ!」


 日向はやけになって叫んだ。


「我はコーラが、所望じゃ!!」


 簾の向こうが静まり返った。


「……な、なによ! 持って来れないっていうの?」


「コウ、ラ……?」


 アベーノが困惑と驚愕がないまぜとなった声を出した。


「こうら…… 甲羅……」


 アベーノが息を飲んだ気配がした。


「玄武…… の、甲羅……」


 そうつぶやく声に、おぞけが立った。


『まさか……!』


 ヨシーノが、はっとしたように現地語で叫んだ。


「お、おぉぉ…… 御神託が、下されたもうた……」


 アベーノの声が、恐怖と歓喜で震えている。


「甲羅…… 魔性のものに奪われし、ゲンブの地…… 甲羅を以て、かの地を復し給えと、仰せられ、たまうか……!!」


 私は頭を抱えた。


——なんでそうなるの!?


「コーラの事じゃないよね……」


 日向が我に返って、ぼそっと言った。


「当たり前でしょ……」


——ゲンブ……


 玄武って、確か亀だよね……


 コーラと甲羅…… 亀…… 玄武…… ゲンブ……


 また、何か壮大な勘違いをされた。


 そして、魔性のもの、ってなに?


 鬼が、サイクロプスだった。


 魔性のものって……


 私はごくりと唾を飲み込んだ。


 かへりたし、だよ、私も……


 日向が何か言うたびに大事になっていく。


 私は目を閉じて、ため息をついた。


 日向も柚月も、もう何も言わなかった。


 私たちは完全に詰んだ。


 逃げられない。

 帰れない。

 拒否もできない。


 神様をやめることも、もう許されない……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ