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ヴァンは食事の用意以外はそれなりに何でも一通り出来る人のようで、私が出かけている時は子供たちの食事の用意さえしておけば世話は引き受けてくれていた。
子供達にナイフの使い方も教えてくれているようで、私が居ない間のことをカールとリッテが色々話してくれるようになった
それを楽しそうに話してくれるので私も嬉しかった。
サンズの実を皆でもいでいると『屋敷の上空を飛ぶ魔物が直に来る』と神様が教えてくれた。
飛行で飛び上がり、敷地内に入って来る前に飛竜を退治した。
「ハルカ⋯⋯」
カールが私の横を飛んでいた。
髪は銀色に変わっていて、よく見ると瞳も銀色になっていた。ふらつくカールに手を伸ばし、安定するのを待つ。
「飛べるようになったよ」
「うふっふっ。私以外に飛んでいる人を見るのは初めてだわ」
下に戻るとリッテが頬を膨らまして怒っていた。
「私まだ飛べないのにっ!」と。
なだめるのにそれなりの時間を要してやっと機嫌を直してもらうのにクッキーとロールケーキを作る約束をさせられ、その日は仕事に行かずにお菓子作りをみんなで楽しんだ。
その日の夜、カールが私の部屋にやって来た。
「話聞いてもらえる?」
「勿論よ」
黒髪、茶色の目の平民の両親から生まれたカールは色素の薄い銀髪、銀眼だった。
この世界では髪と瞳の色に遺伝の法則はない。
魔力を持っているかいないかで髪色と瞳の色は変わるからだ。
私は炎と聖魔法の力が強いように思うから髪が薄いピンクで、水魔法の力も強いので瞳が青磁色なのだと思う。多分。
『違うわよ。ハルカ!! 色に意味はないわ。ハルカの思い込みよ。
だってハルカはどんな魔法でも同じように使えるでしょう?』
言われてみれば確かに。
『この世界で重要視されるのは色素が薄いか濃いかそれしか意味はないわ。一応遺伝の法則はあるのよ。火属性同士の親からは水属性単体の魔法を持った子は生まれないとかね。
でも過去に水属性を持った人が血縁者にいれば水属性を持った子も生まれるのよ。
魔力が強いと薄い色になるだけで。
カールは銀髪銀目ではなく黒の色素の大半が抜けたグレー? ハルカの世界で言うアッシュ? なの。そしてキラキラして見えるのは魔力が微量に漏れ出ているだけなのよ。
ハルカも同じ。ピンクの髪だけどキラキラして見えるのは魔力が漏れ出ているからよ』
衝撃的ですね髪色に遺伝の法則がないって⋯⋯。
薄い金髪と金色の瞳のリッテは雷魔法と聖魔法が強いのだと思ってたのに違うんですね⋯⋯。
銀色の髪と瞳を持つカールは多分聖魔法と闇魔法、そして多分無属性魔法が強いのではないかと思っていたのに!! 全く関係ないとは!!
話はそれてしまったけど、カールが話してくれたのはナンシーとは違う酷い親だった。
カールが生まれた時、カールの両親は狂喜乱舞して喜んだそうだ。
魔力を使えない親から色素の薄い子が生まれたのだから大魔法使いになることは間違いないと。
けれどほんの数時間で思い知ることになる。
赤ん坊のカールに魔法制御なんて出来ないということに。
おむつが汚れた。お腹が空いたとカールは泣く。
親には理解できないことでも泣く。
感情が揺らげば魔法を制御できない赤ん坊は魔法を無意識に放ってしまう。
カールの溢れた魔力で住んでいた家は壊され、借家だった家の弁償を両親は迫られた。
新たな家に住んでもまた壊される。何度か繰り返している間に両親の借金はどんどん膨らんでいく。
けれどカールは幼いままで魔力が制御できるようにはならない。
とてもではないけれど赤子がお金を稼げるようになるには十年以上の日数が必要だ。
二軒目の家くらいまでは両親もカールが大きくなれば取り戻せる損失だとそれなりにカールを可愛がっていた。
カールの年齢が上がるとともに魔法を抑えられるようにはなったが、その頃にはもう両親からの愛情は失われてしまっていた。
借金の返済に両親は寝る間も惜しんで働いていたがある雨の日、家の屋根から雨が漏れた。
父親は突然何もかもカールのせいだと言い出し、カールに暴力を振るい始めた。
一度振るった拳は簡単に振り下ろされるようになってしまった。
カールは父親からの暴力を自分のせいだと自身を責めるようになってしまった。
そして自身の銀髪銀眼を無意識に黒に近づけていった。
すると両親は魔力を失ったと思い込み「本当にお前は役立たずだ!!」と言って、もっと酷い暴力を振るうようになってしまった。
「大きくなったらお前の魔力でいい生活が出来ると思っていたのに大きくなって力を失うなんて」と言って毎日殴られ蹴られ続けたそうだ。
そしてもう死んでしまいたい。と思った時、私が助けに来たのだと。
そして、両親があんなふうになってしまったのは僕のせいだと。
それは違うと言ったけれど、カールを納得させることはできなかった。
ただ私は「カールは悪くない」とカールを抱きしめて、カールは悪くないと何度も告げることしかできなかった。
「私たちはただ魔力量が人よりも多かっただけで私たちが悪いわけではないわ。暴力を振るう人たちが悪いのよ」
カールを宥めていてもこんな言葉ではカールに届かないことは解っていた。
きっとナンシーも言われても受け入れられなかっただろう。
それでも私は気休めの言葉を紡ぐことしかできなくて、慰めにもならない言葉を止められなかった。




