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カールとリッテに声を掛ける。
「この人はヴァン。暫くここにいてもらうから色々助けてあげてね」
「男の子がカール。女の子がリッテ。事情があって人を怖がるから穏やかに接してあげてね」
「わかった。気をつけるよ」
リッテは私のスカートの陰に隠れていたけれど二人共「こんにちは」と可愛らしく挨拶をしていた。
本当にいい子たちなんだから〜〜〜!!
可愛くて身もだえしそうになるのをこらえるのが大変だ。
私たちの部屋は二階にあるのだけどヴェンの部屋は三階にした。
「疲れたでしょう。気が済むまで眠って」
「ここまでしてもらって申し訳ない。俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ」
「じゃぁ、遠慮せずにお願いするわね。カールに剣を教えてあげて」
「お安い御用だ」
そう返事すると限界が来たのかすぐにベッドに倒れ込んでしまった。
おやすみなさい。良い夢を見られるといいわね。
ヴェンも子供たちが来たときみたいに一昼夜目を覚まさずに寝て、翌日の夕方に起き上がってきた。
ちょうど夕ご飯の支度をしているところだったのでヴェンのために用意した椅子を勧めた。
「俺もなにか手伝おうか?」
「なにかできることがあるの?」
「⋯⋯食器を運ぶとか、かな?」
「気にしなくていいわよ。慣れたら手伝ってもらうから今は座っていて」
「わかった。⋯⋯なぁ、聞いていいか?」
「本当のことを答えるとは限らないけどそれでもいいならどうぞ」
「⋯⋯君達三人の関係は? きょうだいには見えないし」
「そうね。きょうだいじゃないわ。誘拐犯とその被害者よ」
私はくすくす笑ってそう答えた。
「えっ?! ⋯⋯一瞬本気にしたよ。本当のことは言いたくないってことか?」
「違うわよ。本当のことよ」
「⋯⋯君たちは誘拐された被害者なのか?」
カールとリッテが首を横に振る。
「ちがう。助けてもらったんだ。ヴェンと一緒だ」
「⋯⋯そうか」
なんだか妙にヴェンに納得されてしまってこの話は追及されることなく終わった。
夕飯の用意ができたので食卓に並べる。
「口に合うかわからないけどお腹いっぱい食べてね」
ホワイトシチューとポンズ酵母のロールパン、後はサラダと冬の残りのピクルス。
ヴェンはよほどお腹が空いていたのかパンをシチューに浸けてかぶりついた。
「あちっ!!」
カールとリッテが笑うので私は嬉しくなる。
最近は感情豊かになってきたのでほんとうに嬉しい。
夕食も終わり子供たちをお風呂に入れてヴェンと二人になってから聞いてみた。
「ヴェンはこの先どうしたいのかな?」
「その前に聞きたいんだがここはどこなんだろう?」
「ハピネイス国の立ち入らずの森の中よ」
「立ち入らずの森?! 俺、そんなところに入り込んでたのか! ⋯⋯人は入れないって聞いていたんだが?!」
「そうね。入れないのではなく、入ると帰れない。の方が正しい⋯⋯かな? 魔物がうじゃうじゃいるのよ。倒しても倒しても湧き出てくるの。きっと帝国が戦争を続けているせいじゃないかなと思っているんだけどね。
この屋敷の敷地から出るとすぐに魔物と遭遇すると思うわ」
「どうしてここは大丈夫なんだ?!」
「ここは元々は立ち入らずの森ではなかったらしいの。多分ね。
人が住んでいたのだけれど帝国の戦争が激しくなって森が大きくなっていき、この場所も少しずつ森に侵食されて人が追い出されてしまったっていう場所らしいのよ。
そこを私が開拓? でいいのかしら? したのよ。
私にもいろいろあって一人になりたかったからここで一人で暮らしていたんだけど。
まぁ⋯⋯子供たちにもいろいろあって⋯⋯」
「開拓⋯⋯いろいろ⋯⋯」
「そう。開拓。魔法で根こそぎ木を抜いて整地して建物を転移で移築させてきて⋯⋯」
「えっ? えっ? なんか頭が追いつかないんだけど?」
「ですよね〜⋯⋯。私、色素薄いでしょう? 魔法の力が強くって」
「強くって、って⋯⋯それでどうにかなるものなのか?」
「なっちゃったので、なっちゃうみたいですよ。まぁ、そういうものだと思っていてください」
「そう、そうだな。魔獣に囲まれた時も一撃で倒していたし⋯⋯」
納得したのか納得しようとしているのかはわからないけど、私が話したことを受け入れることにしたようだった。
話を聞いていたリッテが「私も習いたい」と言うのでカールが使っていた木剣をリッテに譲り、カールには以前に買っておいた子供向けの重みがある剣の刃を潰して渡した。
「カール。これは刃は潰してあるけれど重みのある本物の剣よ。決して軽い気持ちで振り回したり、人に向けたりしてはいけない。約束できる?」
「約束するよ」
剣の教師役をしてもらったのが良かったのか、二人のヴェンへの緊張は数日で和らいだ。
ヴェンも子供が嫌いではないようで優しく接してくれている。
カールとリッテが言うには剣を習っている時は物凄く怖いのだそうだ。
それは危険なことだから当たり前のことなのだと二人は理解していた。
三人は私の心配を|他所≪よそ≫に仲良くしてくれていて、三人で留守番を任せても心配はいらなくなった。
ヴェンにも|本当のこと≪神様のお願い≫は言えないので仕事に出かけると言って毎回外出している。
困るのは夜中に突然出掛けることがあるのだけれど、こどもたちは寝ていて知らないままだったけど、ヴェンにはバレバレになってしまっていた。けれどヴェンは知らないふりをしてくれている。
私がヴェンを信じられるようになるまでは神様に三人の様子を見ていて欲しいと頼んだ。
心配ないとは思うけれどヴェンを完全に信用できるかと言われるとまだ無理としか言えなかった。
神様が屋敷に入れたのだから何も心配はいらないと頭ではわかっているのだけど、それとこれは別だった。
カールとリッテを二人だけで留守番させていた私の罪悪感が無くなったことだけはホッとした。
この世界では子供一人で留守番させるなんて当たり前のことだけど、晴夏の記憶がある私には子供だけで留守番させることは心配でたまらなかったのだ。
家を出れば他の誰かがいる場所ではないので、本当に子供二人っきりなのだ。誰にも頼れない、助けてもらえない。そんな環境は許容しがたかった。
そろそろ書き溜めていたものがなくなりそうです。
マジでヤバイです。
(;^_^A




