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『ハルカ!! 外壁の向こうに人が居るわ。悪いけど助けてあげて』
なにを、どう、助ければいいのかちゃんとした説明してもらえますかね?
なんとなく方向の見当をつけ、行ってみると二十歳位の男の人が狼系の魔物に追われていた。
こんな処に人が来るなんて⋯⋯ありえないと思うのは私だけ?!
風魔法で狼系の魔物の首を落として声を掛ける。
「あなた! 大丈夫?!」
「はい⋯⋯。だいじょうぶ、です」
と言いながら私を見た途端、なんとか立っていた男の人は気力が切れてしまったのかどすんと座り込んでしまった。
はぁはぁと肩で息をしながら「水、持ってない、か?」と聞いてきた。
魔法で水道から流れてくる水をイメージして出した。
その男性は驚きながらも流れ落ちる水を掌で受け止めてゴクゴクと飲んでいる。
「あなたこそこんな処に一人でどうしたんですか? 人がちょっとやそっとで入ってこれるようなところじゃないでしょう?」
とのんきに話しているように見えるけど私は襲ってくる狼系の魔物を次から次へと狩っている。
ここはかなり深い森で、人がおいそれと近づけるような場所ではないんだけど⋯⋯。
「⋯⋯逃げてきたんだ」
「逃げて?」
「アリスタント帝国から」
「あぁ、戦争ですか?」
「ああ⋯⋯」
「従軍兵ですか?」
「⋯⋯そうだ」
この後どうすればいいのかわからなくて神様を呼ぶことにした。
神様! とりあえず助けましたけどこの後どうすればいいんですか?!
『家の中に入れてあげてほしいの』
えぇ⋯⋯。それは⋯⋯⋯⋯。ぃやだな⋯⋯。
『その人は従軍兵と言っているけどアリスタント帝国での身分は近衛騎士だったのよ。だけれどその人は悪い人じゃないわ。
⋯⋯子供たちのためにもなると思うのよ。ハルカがいないときの留守番にもなるし⋯⋯。
ハルカ、お願い』
留守番⋯⋯。子供たちとですか⋯⋯?
それを言われると⋯⋯。
成人した人を入れるのはこれっきりにしてもらえます?
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
約束はできないということですね。
ため息を一つ吐いて神様のお願いじゃ仕方ないと諦めて目の前にいるこの男を受け入れる覚悟を決めた。
「助けて欲しいですか?」
「うわぁっ!!」
突然目の前に魔物が現れたせいか目の前にいる男の人は驚いて三歩下がった。
「ランガに刺さっちゃいますよ。それ以上下がると」
「助けてくれるのか?!」
人の話を聞いてない⋯⋯。
そう話している間にも沢山の魔物が寄ってくる。
「今は戦争より魔物の方が恐ろしいよ!! 助けてくれ!!」
「何処か目的地でもあるんですか?」
「⋯⋯ない」
「とりあえず我が家に来ますか?」
「いいのか?」
「いいですよ。ただし、訳アリの子供が二人いるんです。その子達と上手く付き合えないようなら放り出しますからね」
「分かった」
「名前を聞いても?」
「ヴェンと呼んでくれ」
「私はハルカです」
魔物を全て片付けて、ヴェンと名乗った人に癒やしと洗浄、服が酷かったので修復を掛けると襤褸布だった切れ端はアリスタント帝国の騎士服に戻った。
神様が言った通り近衛騎士なのね。
今はくたびれてるけど、とてもじゃないけれどこの威圧感たっぷりのヴェンにカールとリッテに会わせられない。
「あの、威圧感をどうにかしてもらえますか? 子供たちが怯えると思うので」
「そ、それより魔物!! 囲まれてるって!!」
カールとリッテは男の人を受け入れられるかしら?
とりあえず寄ってきた魔物を衝撃波で全て刈り取るとヴェンはあんぐりと口を開いていた。
ヴェンを連れて街に転移する。
うわぁー!! とか、うぉー!! とか騒いでいたが「静かにしてください」とお願いした。
「その格好で騒いだら目立ちすぎますよ」
「そ、そうだな。すまん。だが転移だよな? 見たのも体験したのも初めてなんだよ!! この世に存在しない魔法だと言われてるんだぞ!!」
「転移魔法は知ってるんですね? ってことは普通にあるものなんですか?」
「いや、使えるのは君だけ? ⋯⋯使えても君のように色素の薄いごく一部の人だけだと思う」
なるほど。と納得した。
「体に合う衣類を買いましょう」
「すまん。俺は金を持っていない」
「いいですよ。私が払いますから」
ならばと一着の衣類を選んだヴェンはそれ以上の服を選ぼうとしなかった。
露天のおじさんに「この人の体に合う服を五着分用意してもらえる? 下着もお願いね」と頼んだ。
「こんなに⋯⋯すまん。今は返せる当てもないんだが、少しずつでも返せるようにする」
「はい。期待して待っていますね。とりあえず着替えてもらえますか?」
「わかった」
着替えて出てきたヴェンのお腹が鳴ったので、露店で二人前の食べ物と飲み物を渡した。
「ここでちょっと待っててください。子供たちにヴェンを家に招くことを話してきます。食事の量が足りないようならこれで追加のものを買って食べていてください」
そう言って銅貨をひと握り渡した。
「ありがとう。恩に着る」
ヴェンをこの場に残してカールとリッテの下に戻った。
困っている男の人が居て助けてあげたい事を伝えて連れてきてもいいか尋ねた。
二人共嫌そうにしていたけれど「困っている人は助けてあげて」と渋々ながらも受け入れることに頷いてくれた。
ヴェンの元に戻るとお腹が膨らんだのと安全な場所にいることで気が緩んだのか、頭がゆらゆらと揺れていて今にも寝落ちしてしまいそうになっていた。
「ヴェン。眠いでしょうけど目を覚まして。行きましょう」
人の目の届かないところまで歩いて玄関の前へと転移した。




