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サンズの花が咲き始めた頃、私が街に行くとき一緒に行くかと聞くと二人して「行きたくない」と言った。
留守番も嫌らしいけど「人前に出るのが怖い」とポツリとカールが言った。
「分かったわ。けれど私は仕事もしなきゃならないしこれからは二人だけで待っててもらわないといけない日が増えるわよ」
「それでも、いい⋯⋯。留守番してる」
と二人して言うのでランガの木に阻まれて出られないとは思うけど「外で遊んでもいいけど川にだけは絶対近づいてはいけない」ということと「空から来る魔物が出たらすぐに屋敷に逃げるのよ」と教えた。
そして屋敷には強化結界を五重に掛けた。
ちょっとやりすぎで過保護かな? とは思ったけど、かなり不安だったので出かける時は川側も外壁で囲んだ。
海と川へ行き、ガンガン魚を取っていく。
リッテは殊の外海の魚が好きなようなので私達の分もガンガン捕る。
魚がいない地域へ行き、ぼったくりだと思う値段で売りまくった。
荒稼ぎをして、山三つ分の薪を取り、去年の冬に援助した所にもう一度薪と食料を渡しに行った。
外壁を作った村も気になったので見に行った。
前に来た時は村人全員がやせ細っていたが、いくらかましになっていた。
外壁も問題はなさそうだ。
堀に川魚を新たに追加しておくのも忘れない。
暖かくなってきたのでカールとリッテの衣類を買い込む。
リッテの服には可愛らしさを意識してちょっと頬が緩んでしまった。
生前は息子しかいなかったので、女の子の買い物は花があって良いなぁ〜と思いながら髪留めなんかも買った。
カールには髪留めの代わりに木剣を買った。
そうだ、靴を買わないと。
買ってきたものを渡すと二人は嬉しそうに受け取ってくれたけど受け取るまでに一悶着あった。
「こんなにしてもらっても僕はハルカに何も返せない⋯⋯」
ということだった。
「今は子供なんだもの。私に世話されていなさい。成人したら色々助けてもらうわよ」
そう言ってとりあえず納得してもらった。
カールは十歳になっているらしく仕事に行くべきかと悩んでいるのだとリッテが教えてくれた。
二人は外の世界に出ていくことを不安に思っているみたいで出て行きたがらない。
カールの髪も瞳の色も濃いままだ。
神様に相談してもやりたいようにやらせればいいとしか言ってくれないし、どうすればいいものかと悩む羽目になった。
リッテには魔法の使い方を教え始めた。
カールは少し離れたところでリッテが使う魔法を見ているだけで、カール自身は魔法を使おうとはしなかった。
やっぱり髪と瞳を黒く染めてしまったために魔法が使えないのかもしれない。
そんな風に思っていると、ふと気がついた時にはカールは生活魔法を使いこなしていた。
驚いたことにカールは魔法を使えば使うほど黒かった髪が薄い茶色に変化し、瞳の色も薄い茶色になりつつあった。
カールの髪と瞳の色素が抜けていくのに驚いたということを神様に話した。
『カールは日に日に色素が薄くなっていくかもしれないわね。
生まれた時は銀髪、銀眼だったから⋯⋯。元に戻るのかもしれないわ。普通ではありえないんだけど⋯⋯』
それならカールにも魔法を教えたほうが良いですか?
『カールが魔法を使いたいというなら教えてあげればいいんじゃない? 無理はしなくていいわよ』
分かりました。カールに聞いてみますね。
「カール、魔法が使えるようになりたい?」
「使いたくない! でも、⋯⋯ハルカのように使えるなら⋯⋯使えるようになりたいとも思うこともある⋯⋯」
「そう。じゃぁ、とりあえずリッテと一緒に使えるようになってみない? 使えて損はないし使いたくないのなら使わなければいいんだから」
カールは逡巡した後小さく頷いた。
魔力量は個人差があってどうにもならないけど、魔法の使い方はイメージ次第で使える幅が増えると二人に教える。
無から有へはとても難しいが、有る物を加工していくのは意外と簡単で、そうなって欲しいと願えば良いのだから。
すると神様から苦情が来た。
『そんなふうに使えるのはナンシーの体でハルカの意識だからよ』
あれ? それじゃぁ私⋯⋯。魔法の教師には向いていないんじゃないでしょうか?
『向いてないわね』
心の中でハンカチを咥えながら「ひどい」と恨めしく神様を詰っておいた。
向いていない私の教えでも生徒が賢いとなんとかなるもので、カールもリッテも魔法の扱いが上手になった。




