29
森林伐採をしていると必ず獣や魔物に出会うことになる。
最初の頃は魔物は全て狩って強い獣だけを素材と食用の備蓄としていたんだけど、最近では備蓄が飽和状態になってしまったので獣を完全放置していたら神様に怒られてしまった。
魔物は騎士団や冒険者が数人のグループでないと倒せないので騎士団や冒険者も魔物は敬遠してしまっていて、増加しているらしいので、私が素材と食料だと諦めて狩り尽くすようにしている。
いつか魔物が居なくなればいいと思っているのだけど、魔物が居なくなることはないのだそうだ。
『魔物は交配で生まれ出るのではなく、突然生まれるものなの』だと神様が教えてくれた。
突然生まれるとはどういうこと? と尋ねた。
『人の淀んだ感情が地に染み込み、地表に種が生まれる。
その種がまた淀んだモノを吸収して、ある日突然発芽して魔物になるのよ』とのこと。
戦争や諍いの多い所では顕著で魔物の量がぐっと増えるのだそうだ。
一番の大国であるアリスタント帝国では今はもう人の数より魔物の数の方が多くなってしまっているのだそうだ。
助けに行きましょうか? と聞くと『無駄よ』という答えが返ってきた。
『貴族すべてを殺したら何とかなるかもしれないけど、あの国は平民ですら戦うことが好きだから弱者しか残っていないというところまでいかないときっと戦争を続けると思うわ。それにハルカに人を殺してとは言えないもの』
そんな風に言われて私も、恨んでも憎んでもいない人を簡単に殺しますよとは言えなかった。
さすがに人はちょっとやそっとの理由では殺せない。
神様もそれを理解してくれているのか戦争地への援助は言い出すことはなかった。
なので、私が手が届く範囲を助けるべくせっせと薪作りをしていた。
薪作りは手間と時間が掛かるので、私にとってはいい稼ぎとは言えなかったけれど、お世話になっている神様の頼みだし、私に助けられる余裕があるなら助けるべきだとも思っているので頑張っている。
今日は街に本を捜しに行くと決めた。
と言っても行き帰りの道中にまだ木を抜いたことのない山があると木を抜いて枝を刺し成長させ、魔物を狩り尽くす。
そして忘れずに御神木の数も増やしていく。
あまり増やしすぎるのもよくないらしいので加減が大事。
木を乾燥室の収納に放り込んで、乾燥済みを取り出して時間停止の収納に入れる。
ということをやりながら進むので目的地にたどり着く頃には夕方になっていたりすることもしょっちゅうあって、そういう時は転移で自宅には戻らず宿に泊まって街や村を堪能することにしている。
今日は今までで一番遠い街に転移し、そこから飛行魔法で更にその先の村、フルハールというところに来ていた。
ここは今までにない程貧しい土地らしく、助けてやってくれと神様に頼まれたので足を延ばした。
フルハール村には外壁すら無かった。
魔物に襲われたりしないの?
『襲われているわよ。領主がね凄くいい人なんだけど外壁を作るだけの力とお金を持たないのよ』
そう、なんですか。
どの辺りに外壁作ればいいですか?
『作ってくれるの?』
はい。いいですよ。
『じゃぁ、この辺りからぐるっと一周お願いできる?』
神様に言われたところを土魔法で外壁を作っていく。
三mの高さで厚さ一.五m位の外壁を作ると同時に五m幅の堀も作る。水深は結構深いものにした。
落ちた時危ないので外周側に階段を五箇所付けることにした。
ワラワラと村人たちが家から出てきて、領主の館からも人が出てくる。
それに構わずどんどん外壁と堀を作る。
誰かが話しかけてくるが相手していると時間を取られるので取り敢えず無視して外壁の完成を優先させる。
神様が領主に話をつけてくれたみたいだ。
ここの神様って本当に誰とでも話すのね⋯⋯。
日本の神様。主義主張より柔軟性が大事だと思います。
漸く村と畑をぐるりと一周して、馬車が二台すれ違える幅を残して外壁が出来上がった。
外壁の内側にも階段をつける。
厚みが一.五m位あるので物見台になるように。
身を隠す部分も必要だと思い至って、胸壁を作っていく。
外壁や堀が崩れないようにカチカチに固める。
魔法で水をガンガン作り、堀に注いでいく。
生け捕りにしてある川魚やエビを放す。
最悪、死ぬ前に釣りでもして生きながらえてくれたらいいと思う。
後は巻き上げ式の門を取り付けて完成した。
個々の家と領主の館の前に一冬越せる薪を出して置いていく。
領主に一冬越せるだけの小麦と塩、燻製肉を渡す。皆で分けるように伝えた。
『井戸が枯れかかっているの』と神様に言われたので新しい場所に数カ所井戸も掘った。
領主の館の井戸はもう枯れていた。ここにも別の新しい水脈の井戸を掘った。
屋敷からちょっと遠いけど屋敷を移動させるか聞くと「お願いします!!」と言うので屋敷を井戸のそばに転移させた。
畑の土には腐葉土と石灰を混ぜ込んで耕した。
春に植えられる野菜の種を数種類ずつ渡し、報酬に本を持っていれば一冬の間、貸してくれと頼んだ。
感謝の涙に濡れた領主が五冊の本を貸してくれて、私は帰途についた。
その帰り道にもまた神様に頼まれた山を四つを裸にして枝を刺し、成長させ、御神木を増やし、魔物は全て狩った。




