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コレが私のフライトプラン。Good Day‼【第2部 見送る人】  作者: ちとせ鶫
第4章 函館ダイバート

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10/17

第10話 新千歳が閉まった

予定通りに飛ばない日があります。

でも蒼空にとって、それもまた「飛ぶ」ということでした。

今回は、予定外の函館に降り立つ話です。

 その日、蒼空は羽田から新千歳へ向かうJSN便に乗っていた。


 修行ではなかった。

 種子島の修行は先週終わっていた。

 今日は、次の修行の下見を兼ねた、ただの移動だった。


 北海道に用があったわけではない。

 新千歳に降りて、空港のラウンジで次のプランを確認して、折り返す予定だった。

 それだけだった。


 羽田を離陸したのは、午前十時過ぎだった。

 空は曇っていた。

 でも飛ぶ。曇りでも飛ぶ。


 蒼空はいつも通り、窓側の席に座っていた。


     * * *


 巡航高度に達した頃、機内アナウンスが流れた。


「お客様にお知らせいたします。現在、新千歳空港周辺で吹雪が発生しており、着陸が困難な状況となっております。現在、状況を確認中です」


 蒼空はスマートフォンを開いた。

 新千歳空港の運航情報を確認する。


 欠航、遅延の情報が並んでいた。

 吹雪。視界不良。着陸禁止。


 蒼空は画面を見ながら、頭の中で計算した。


 このまま新千歳に向かっても、着陸できない可能性がある。

 ダイバートになるかもしれない。

 ダイバート先は、函館か仙台か。

 距離的には、函館が近い。


 たぶん、函館だ。


     * * *


 しばらくして、機内アナウンスが流れた。


「お客様にお知らせいたします。新千歳空港の状況が改善されないため、函館空港へ目的地を変更いたします。函館空港への到着予定時刻は、現地時間十二時十五分頃を予定しております。お客様にはご不便をおかけし、誠に申し訳ございません」


 やっぱり函館だ、と蒼空は思った。


 周りの乗客がざわめいた。

 「函館って、どこ?」という声が聞こえた。

 「新千歳じゃないの?」という声も聞こえた。

 スマートフォンで何かを調べている人もいた。


 蒼空は窓の外を見た。

 雲の下に、北海道の地形が見えてきた。

 白い。

 一面、白かった。


     * * *


 函館空港に着陸した。


 ボーディングブリッジを歩きながら、蒼空はスマートフォンを開いた。

 函館空港の運航情報を確認する。


 他社の便も、次々とダイバートしてきていた。

 NALの便。AOAの便。

 みんな、新千歳が閉まったから函館に来ていた。


 蒼空はターミナルに入った。


 すでに、他の航空会社の乗客が集まっていた。

 カウンターには列ができている。

 アナウンスが何度も流れている。


 蒼空は人の流れを確認しながら、JSNのカウンターに向かった。


     * * *


 カウンターに並んだ。


 スタッフが説明していた。

 「現在、新千歳空港の状況を確認中です。改善次第、順次出発する予定です」


 蒼空は列に並びながら、頭の中で計算した。


 他社の便が先に飛ぶ。

 NALが最初に飛ぶだろう。

 次にAOAが飛ぶだろう。

 JSNは最後だ。


 空港での扱いは、そういう順番だ。

 蒼空はそれを知っていた。

 知っていたから、覚悟していた。


 一番長く待つことになる。

 でも、それでいい。


 JSNで来たから。


     * * *


 折り返し便の確認をした。


 新千歳から羽田への便は、今日の夕方以降に設定されている。

 函館から新千歳に移動して、新千歳から羽田に帰る。

 そのためには、函館から新千歳に飛ばなければならない。


 函館→新千歳の便。

 JSNは、夕方に一便ある。

 でも、それより前にNALとAOAの便が飛ぶ。


 蒼空はターミナルのシートに座って、スマートフォンを閉じた。


 待つしかない。


 空港の窓の外に、函館の街が広がっていた。

 雪は降っていなかった。

 函館は晴れていた。


 新千歳は吹雪で、函館は晴れている。

 同じ北海道なのに、空気が違う。


 それが、少し面白かった。


     * * *


 ターミナルの売店を覗いた。


 函館土産が並んでいた。

 イカの塩辛。昆布。函館の洋菓子。


 蒼空は函館に来たつもりはなかった。

 でも、来た。

 予定にない場所に降り立った。


 函館の洋菓子を一つ買った。

 予定になかった土産だ。

 でも、来たから買える。


 飛んだから、ここにいる。


 それだけで、今日ここに来た意味がある。


 シートに戻って、洋菓子を食べた。

 美味しかった。


 蒼空はスマートフォンを開いた。

 陸にLINEを送った。


「今日、函館にいる」


 それだけ送った。


 しばらくして、既読がついた。


「え、なんで」


 返信が来た。


「新千歳が吹雪で閉まった」


 また返信が来た。


「大丈夫?」


 蒼空は少し考えた。


「大丈夫。待ってる」


 そう返した。


 窓の外に、函館の晴れた空が広がっていた。

 NALの機体が、滑走路に向かっていくのが見えた。


 最初に飛ぶのは、NALだ。

 蒼空はそれを見ながら、静かに待った。

吹雪で閉じた新千歳と、晴れている函館。

蒼空はトラブルの中でも、ちゃんと「来た意味」を見つけています。

そして陸は、少しずつ空港の世界を知っていきます。

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