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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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5-2 港町アール、とりあえず陸地が最高です

 ――トンッ


お気に入りの編み上げブーツを履いた私は、

軽やかに港の地面へと降り立った。


ここは西部大陸で一番大きな港町『アール』。


他国への海の玄関口として使われており、

大きな船が何隻も停泊している。


「う~ん! 

やっぱり陸地は最高ね!」


ぐっと両手を上に伸ばして伸びをすると、

私は心地よい陸の空気を大きく胸に吸い込んだ。


空は雲一つない鮮やかな青空。


エメラルドグリーンの海は太陽の光を浴びて、

海面がキラキラと眩しく反射している。


するとガラガラと音を立てて、

船から荷馬車を降ろしてきたキースが

こちらへ向かってやってきた。


「あ、ご苦労様! キース!」


満面の笑顔で大きく手を振る。


「全く……人騒がせな。

あんだけ船の上では気分悪そうにしてたのによ」


キースはブツブツと文句を言いながら

私の前で荷馬車を止めると、

御者台からひらりと降り立った。


「ええ。確かにそうだったわね。

でも今はもうこの通り。

ばっちり良くなったわよ」


私はキースに向かって、親指をぐっと立ててみせる。


「あの錬金薬を飲んだ途端、

コロッと治るんだからな。

それにしても、あんなマズイ薬飲んで

よく平気でいられたな?

俺は二回飲んだことあるが、

二回とも昇天しそうになったぞ?」


「あぁ、あれね。

この間ねぇ錬金し直して飲みやすい味に

変えたのよ。

甘ーいチョコ味にね」


「何? チョコ味だと……?」


キースがピクリと反応する。


「ええ、そうよ。それがどうかしたの?」


「もしかして……薬を錬金し直すって、

たやすいことなのか?」


「そうね、簡単よ。

一から錬金薬を作るよりもね」


するとキースは今度は俯き、

肩をプルプルと震わせ始めた。


「キース? どうしたのよ」


「ふ……ふざけるなーっ!!」


顔を上げると同時に、

キースが大きな声を上げた。


「なによ! 

突然大きな声を出さないでよ!

大体何でそんなに怒っているわけ!?」


私も負けじと大きな声を上げる。


港を行き交う人々は何事かと、

私たちを振り返っていく。


「怒るのは当然だ!

さっき言っただろう? 

俺は錬金薬のせいで二回とも

危うく死にかけたんだぞ!?」


「死にかけたなんて、大げさねぇキースは。

ちょっと白目剥いて失神しただけでしょ?」


「お前なぁ! 他人事だと思って……!」


「しっ! キース!」


私は口元に人差し指を一本立てて

キースを止めた。


「な、なんだよ?」


「私たち、お尋ね者だったでしょ?

こんな大きな声で騒いだら目立ちまくりじゃない。

人相書きだって、まだ出回ってるかもしれないでしょ。

まぁ一応変装はしているけどね」


そう。

私もキースも黒髪のかつらをかぶっているし、

キースは口髭。

私は黒縁眼鏡をしている。


当初、キースは

「こんな口髭つけていられるか」

と文句を言っていた。


けれど私がお世辞でべた褒めしたのを

真に受けたのか、

今では顔の一部になりかかっている。


「う……た、確かにそうだな。

よし、目立たないようにここを立ち去るぞ。

東の大陸へ行く船を手配するんだ」


「ええ、そうね。それがいいわ」


二人で互いに頷き合うと、

あ・うんの呼吸でキースは御者台。

私は荷台へと乗り込む。


「よし! 行くぞ!」


「ええ!」


キースは手綱を握りしめると、

ガラガラと荷馬車を走らせ始めた。


……この時の私たちは、

まだ何も気づいていなかった。


大きな嵐が私たちに近づいてきているということを――

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