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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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Side国王 執念

 ――その頃。


「何!?  サラを取り逃がして

しまっただと!?」


バルディア王の執務室に、

地を揺るがすような怒声が響き渡った。


机の上には鈍く光る魔道通信機が置かれ、

壁には遠方にいるグレイの顔が

立体的に映し出されている。


『……はい、申し訳ありません。

まさか、地中に深く沈む木の根を

錬金術で操るとは

思いもしませんでしたので……』


悔しげに下唇を噛み締めるグレイの表情が、

壁の向こうで揺れている。


「何? 木の根を錬金術で……?」


バルディア王の眉が、ピクリと

不自然に跳ね上がった。


『そうです。

地面に両手をついたかと思えば、

その途端、

巨大な木の根が地面から飛び出してきて

我々の行く手を阻んだのです。

まさか、あのようなことが……

――陛下?

どうなされたのですか? 』


映像の中のグレイが、

急に困惑の表情を浮かべる。


たった今まで激怒していたはずの

バルディア王が突然うつむき、

小刻みに肩を震わせ始めたからだ。


「クックック……アーッハハハハッ!!」


突如、王はおかしくてたまらないと

言わんばかりに

狂気すら孕んだ大きな声で笑い始めた。


『陛下……?』


不気味なものでも見るかのように、

グレイが眉をひそめる。


するとバルディア王はピタリと笑うの

をやめた。

その瞳には、ギラギラとした光が宿っている。


「なるほど……。ついにサラは

真の錬金術の力に目覚めたのか。

……確か、あの子は18歳を迎えた

ばかりだったしな。

それでか……」


ブツブツと、何事か独り言を呟く

バルディア王。


通信の向こうで、グレイはその異様な姿を

黙って見据えている。


やがて王は顔を上げると

壁のグレイに向かって鋭い視線を向けた。


「グレイ。

確かその先は外国への入り口になっている

港町が点在しているのであろう?」


『はい、さようにございます』


「どんな手を使ってでもいい。

サラを確保しろ。

近隣に配備している騎士たちにも

すでに連絡をつけている。

海を越えられれば厄介なことになるからな。

――必ず食い止めろ。

そして、傷一つつけずにサラを

私の元へ連れてくるのだ」


『どんな手を使ってでも……ですか?』


壁の向こうで、

グレイが念を押すように問いかける。


「ああ、そうだ。

そのためには、多少なりとの犠牲も厭わぬ。

じきに応援部隊が到着するだろう。

常に魔道具は携帯しておくのだ」


『御意』


グレイは深々と頭を下げ、

そこで壁の画像はプツリと切れた。


「フフフ……やはり血筋は争えぬようだな」


満足げに呟くバルディア王。


その時。

王が指にはめていた魔導の指輪から、

微かに女性の声が聞こえてきた。


『陛下、少々お時間よろしいでしょうか?

ララ様のメイド、エイダです』


「何事だ?」


『はい。実は、ララ様が……』


バルディア王はメイドの話を無言で

聞いていたが、聞き進めるうちに

徐々にその顔色が変わっていく。


そして――


「なんだと!?  

ララが、そのようなことを!?」


執務室に先ほどとは違う

驚愕の声が上がった。


『はい、さようにございます』


「なるほど……。

我が娘とはいえ、愚かな者だ。

自分に何の才能もないくせに、サラを……」


『陛下、いかがなさいますか?』


バルディア王は少しの間

考えこんでいたが、やがて口を開いた。


「とりあえず、今は様子見だ」


『様子見、と言いますと……?』


「泳がせておけ。

確固たる証拠もないしな。

今はそれに、我が直近の騎士たちが

サラを追っている。

もしララがサラに何か手出しを

しようものなら、

返り討ちにしてくれることだろう」


『……返り討ち……ですか?』


通信の向こうで、

エイダの声が僅かに恐怖で震える。


「あぁ、そうだ。

少々痛い目を見せなければ気付かないだろう。

自分がいかに愚かな存在で

あるかということが。

……引き続きララの監視を続けろ。

良いな?」


『かしこまりました、陛下』


そこで声がプツリと切れた。


静まり返った執務室で、

王は背もたれに深く身体を預ける。


「サラの目覚めとララの反逆か……。

フフフ……面白いことになってきたわ」


バルディア王は不敵な笑みを浮かべた――

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