表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/68

Side ララ

 午後の日差しが差し込む研究所に、

ララの姿があった。


テーブルには丸い水晶玉が置かれており、

そこには激しい炎に包まれている

森が映し出されている。


「……まさかグレイとブルーが

出てくるなんて。

お父様は本気でサラを連れ戻そうと

しているのだわ」


ララは水晶を見つめながら呟いた。


「……それにしても、相変わらず彼らは

手加減というものを知らないようね。

まさか森を焼き払うとは思わなかった……

オキアが巻き込まれなくて良かったわ」


今、水晶に映し出されているのは

オキアが見ている景色そのもの。


ララの高度な魔術によって

「魔眼」の力を持つオキアの視界を、

この水晶で映し出しているのだ。


「このままだと海を越えてしまうわね。

これ以上距離が離れると、

サラを追えなくなってしまうわ……」


その時。


――ガタッ


背後で音が鳴り、ララは振り向いた。


そこには顔から完全に血の気が引いた、

青ざめた顔のアレスが立っていた。


「……ララ様……」


「あら、アレスじゃない」


ララは表情を変えず、平然とアレスを見つめる。


「ララ様……私は……」


アレスが縋るように一歩近づいたそのとき。

ララの鋭い言葉が、彼の足を止めた。


「アレス、どうして戻って来たのかしら?」


「そ、それは……」


気まずそうに、アレスは視線を泳がせる。


「忘れてしまったのかしら?

サラの命を奪ってきてと、あれほど

お願いしたことを。

それをまさか、剣を振り下ろすことも出来ず、

逃げ帰って来るなんて。

……それでもバルディアの騎士なの?」


「!」


アレスの肩が、ビクリと大きく跳ねた。


ララはアレスに背を向けると、

再び水晶に視線を移す。


「ララ様……っ!」


アレスはララに駆け寄ると、

ひざまずいた。


「お許しください……ララ様。

私には……どうしてもサラ姫を

殺めることは出来ません……

わたしを兄の様に慕って下さる姫を、

この手で葬るなんて……無理です……っ!」


声を振り絞るアレス。


「いいわけは結構。本当に使えない人ね。

私の見込み違いだったかしら」


ララはアレスを見ることなく冷たい

言葉を浴びせる。


「そんな……っ!」


アレスは勢いよく立ち上がると、

背後からララを強く抱きしめた。


「ララ様……お願いです。

どうか私を見限らないでください。

あなたに捨てられたら……私はもう、

生きる希望も見いだせなくなります……」


その声は、今にも崩れ落ちそうなほど、

涙声だった。


「それは全て、あなた次第よ。アレス」


「私……次第……?」


「ええ、そうよ」


ララはアレスの方へと身体を向けると、

その美しい瞳で彼の目をじっと覗き込む。


「アレス、よく聞きなさい。

ついに国王直属の騎士が動き出したわ。

グレイとブルーよ」


「え……? あ、あの二人が……ですか?」


「今のところ動きを見せたのは

グレイとブルーだけよ。

サラを城に連れ帰るために、

あの子の前に現れたのよ。

――でも逃がしてしまったけれどね」


「まさか……彼らが……」


「彼らがどれほどの力を持っているかは、

あなたも知っているでしょう?」


「……はい」


神妙な顔つきでアレスが頷く。


「今、サラは小さな港町にいるわ。

そこから船を乗り継いで、

外国へ向かうつもりよ。

……その前に、手を打たないと」


「ララ様……」


「今もあの子の後をオキアがつけているわ。

暗殺集団も差し向けているけれど、

グレイとブルーが行く手を阻むかもしれない」


ララは淡々と、まるで他人ごとのように

冷酷に言葉を続ける。


「アレス、私たちもサラの後を追うわよ」


「! ララ様……!」


「あなたがサラを始末出来ないと言うなら、

私が直接あの子に手をかけるわ。

その代わり、アレス。

あなたは、あの護衛の騎士を狙いなさい。

いい?

確実に、息の根を止めるのよ」


ララは、愛おしげにアレスの頬を

そっと撫でた。


「ララ様……。サラ姫は、

ララ様の妹ですよね?  

な、何故そこまで……?」


その問いに、ララの指先がぴたりと止まる。


「妹……? サラが?」


「まさか、違うので……んっ」


言いかけたアレスの言葉は、

強引に塞がれた。


ララが自分の唇を重ね、そればかりか

その妖艶な身体のすべてを委ねるようにして、

アレスの理性を甘美に侵食していく。


「……っ」


アレスの瞳から徐々に光が消え、

焦点が失われてとろんとしていく。


ララという魅力に心を奪われ、

その顔が恍惚とした表情へと変化する。


「フフッ......」


それらを見届けると、

ララは唇を放して冷たく告げた。


「いい? あなたの役目は、

あの護衛騎士を抹殺すること。

……分かったわね?」


「……はい、ララ様。

必ず、あの護衛騎士を殺してみせます」


返事をするアレスの顔には、

一切の感情が宿っていなかった。


ただ主の命に従うだけの、人形のように――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ