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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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4-5 完璧な変装です!

 夕暮れ――


私とキースは小さな港町を

荷馬車で進んでいた。


荷台にいるキースは

マント姿にフードを目深にかぶり、

顔を隠している。


そして一方の私は黒い髪のかつらを

かぶり、眼鏡をかけた姿に変装していた。


フフ……これならきっと、

私だとバレないはずよ!


もし万が一「サラ姫ですよね?」と

声をかけられても、知らぬ存ぜぬで

しらを切り通そう。


心の準備はバッチリだ。


それよりも今はキースの方が心配だった。


今は元の姿をしているけれど、

またいつあの『エンドウ豆サイズ』に

なってしまうか分からない。


もし、またブルーさんとグレイさんが

襲ってきたときに、

キースがエンドウ豆サイズに戻っていたら?


そのときは……。


「あ……」


そうだ。


その時はキースをポケットに入れて

隠せばいい。


すきを見て、私の錬金術を使って

キースを逃がしてあげればいい。


例えばこの間みたいにゴーレムを

錬金してあげたりして。


そして私は……バルディア王国へ戻って、

お父様に命じられるままに

アレス様……自分の命を狙う相手と、結婚する。


キースとはさよならして……。


そこまで考えて、私はふと疑問に思った。


そういえば、どうして私は

命を狙われているのだろう?


「ねぇ、キース」


私は荷台から這い出て、

御者台に座るキースに近づいた。


「ば、ばか! 

刺客に姿を見られたらどうする!?

おとなしく荷台の奥に居ろ!」


小声で鋭く文句を言われてしまった。


「は〜い」


ぎりぎり幌で姿が隠れる場所まで下がると、

キースが前を向いたまま尋ねてきた。


「それで、何だよ。腹でも空いたのか?」


「違うわよ! 

何でもかんでも私と食欲を

結び付けないでちょうだい!」


「ハハッ。そうか」


すると何故かキースが笑う。


「何? 何がおかしいの?」


「やっといつものお前らしくなったな。

さっきまでずーっとベソベソしてたのに」


「し、失礼ね! 

誰がベソベソしてたのよ! 

泣いてなんかなかったでしょ!」


そう、私は泣いてなんかいない。


むしろ泣いてる暇なんか無かった。

だって、これからの考え事で頭が

一杯だったから。


「分かったよ、ならどうしたんだよ」


そこで私は真顔で尋ねた。


「……ねぇ、キース。

私、どうしてアレス様に命を

狙われているのかしら? 

ううん。それ以前に、悪党たちにも命を

狙われているし」


「それは……」


言葉に詰まるキース。


「絶対おかしいわよ! 

どうしてこんなにもチャーミングで

善良な私が命を狙われてるのかしら? 

キースならともかく」


「あのなぁ! 

それはどういう意味だよ! 

それにお前が命を狙われているのは……っと」


そこでなぜかキースは口を閉ざす。


「何? 何故途中でやめるの?」


「いや、別にやめてねーし」


「嘘! やめた! 絶対何か言いかけた!

言いなさいよ!」


「はぁ!? 

だから何も言ってねーだろが!」


「ごまかさないでよ! 

正直に言いなさい!」


「うわ! 

お前! 何、荷台から顔出してるんだよ! 

ばれたらどうする! 

奥に引っ込んでろよ!」


キースがしっしと追い払う素振りをする。


「バレっこないわよ! 

こんなに完ぺきな変装してるんだから!」


「はぁ!? 

お前、マジで言ってるのか!? 

バレバレに決まってるだろうが! 

気休めにもなってないだろ!」


「そんなことないわよ!」


再び荷馬車の上で私とキースの

口論が勃発する。


その時。


パサパサ……。


頭上で鳥が羽ばたく音が聞こえた。


「!」


キースが素早く真上を見あげ、

眉を顰める。


「キース?」


私も幌から顔を出して上を見た。


けれど見えるのは夕暮れに染まる、

美しい夕焼け空だった――

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