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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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4-4 お願い! 出てきて!

 地面に両手をつくと、心の中で強く念じた。


――ズズズズズズッ!!!


すると突然、

足元の地面が激しく揺れ始めた。


「な、何だ!?」


「サラ姫! 一体何を……!」


グレイさんとブルーさんの顔に、

初めて動揺した表情が浮かぶ。


二人は当然、私が『錬金術師』であることを

知っている。


けれど、実際に私が錬金術を戦闘に

使っている姿なんて、見たことがない。


ボコッ! ボコボコッ!


次に起きたのは、異常な光景だった。


地面がまるで水面が粟立つかのように

ボコボコと不気味に膨れ始める。


そして――


――メキメキメキッ!!!


「何!?」


「これがサラ姫の力……っ!」


地面に深く根付いていた大樹の根が

土を豪快に突き破り、

まるで生きているかのように激しく

うねりながら這い出てきたのだ。


シュッ!!


空気を切り裂く鋭い音。


しなる木の根が、ブルーさんとグレイさんを

目指して一斉に伸びていく。


「ぐっ!」


「何っ!?」


あっという間に、二人はグルグル巻きにされてしまった。


「クソッ!」


「は、離せ……!」


空中でもがく二人。


お姉さまの保護魔法で『物理攻撃』は

効かなくても拘束してしまえば関係ない!


今のうちに……!


「キース! 逃げるわよ!」


私は地面に倒れているキースを激しく

揺さぶった。


「バ、バッカやろ……

に、逃げるって……」


「いいから、これを飲んで!」


まだお腹を押さえて苦しむキースの口に、

私は構わず錬金薬を強引に押し込んだ。


「うっげぇぇ~~~!

 クソマズイ……ッ!!」


一瞬、キースが白目を剥いて

そのまま魂が天に昇天しかける。


「キース! 戻ってきて!」


パーン! パーン!


「ぶふっ!?」


私が往復ビンタを叩き込むと、

キースがハッと我に返って飛び起きた。


「お、お前なぁっ!」


「文句は後よ!! あれを見て!」


ビシッと背後を指さす。


そこには、木の根にグルグル巻きにされた

グレイさんとブルーさんが、

自力で木の根をブチブチと力任せに

ちぎり始めている姿があった。


けれど、私の膨大な魔力は止まらない。


ちぎられても、ちぎられても

次から次へと新しい木の根が二人を

執拗に巻き付けていく。


「クソッ!」


「きりがない!」


国家最高戦力の二人が悪戦苦闘している

姿を見て、キースが茫然と口を開いた。


「あ、あれは一体、何が起きてるんだ……?」


「いいから! そんなことより逃げるのよ!」


キースを急かす。


「分かった!」


二人で力強く頷き合うと、

私たちは全速力で荷馬車へと駆け寄った。


キースが素早く御者台に乗り込み、

私も荷台へ乗り込む。


キースが手綱を強く握りしめた。


「行くぞ! サラッ!」


「ええっ!」


「ハイヨーッ!!」


キースが手綱を激しく打ち鳴らすと、

馬は勢いよく走りだした。


「サラ姫!! お待ちください!!」


「くそ! 離せ!」


背後から、グレイさんとブルーさんの叫び声。


「誰が待つかよ! あばよーっ!!」


「ごめんなさい! 

ブルーさん! グレイさん!」


私とキースを乗せた荷馬車は、

凄まじいスピードで森の奥へと駆け抜けて

あっという間に二人を引き離していった――


****


ガラガラガラガラ……!


森を抜け、開けた平野に出ても

馬は速度を落とさずに疾走を続けている。


やがて、完全に追っ手の気配が消えた頃、

御者台のキースが振り返った。


「ふぅ……ここまで来れば、

さすがに平気だろう?」


だけど私は激しく首を振った。


「いいえ! 駄目よ!! 

もっと遠くに逃げなけいと!」


「サラ? 

いつも能天気なお前がどうしたんだ?」


キースが不思議そうに首をかしげる。


「キースは何も知らないのよ……!」


私は、お父様直属の騎士がどれ程の力を

持っているかを知っている。


今回追ってきたのは二人だけれど、

まだ他にも騎士がいることも。

お父様が食事の時に、

何度も自慢げに話を聞かせてくれたからだ。


『彼らはたった数名で、

数十人の盗賊のアジトを壊滅させたのだ』と。


その時。


――ドンッ!!!


大地が激しく揺れ、

凄まじい衝撃波が背後から吹き付けてきた。


「な、何だ!?」


「!」


二人で同時に背後を振り返り、

息を呑む。


ついさっきまで私たちがいた

遠くの森が、激しく真っ赤に燃え上がり

天に向かって巨大な黒煙を噴き上げているのだ。


「あ、あれは……?」


キースの声が、震えている。


「多分……私の錬金術を破るために……」


「馬鹿な!? だからと言って、

森を丸ごと焼き払うか? 普通!?」


「……彼らは、そういう冷酷なことを

平気でする人たちだから……」


胸が苦しくなる。


私があんな錬金術を使って抵抗したせいで……。

あの森には、たくさんの生き物だって

住んでいるのに……!


思わず俯き、唇を噛みしめた。


「サラ……」


「……いつか、必ず私の錬金術で

あの森を再生させてみせる。

でも、そのためには……今は逃げなくちゃ!」


顔を上げた私の目は、

いつしか涙で潤んでいた。


「ごめんなさい……キース。

あなたを、こんな危険なことに

巻き込んじゃって……」


今になって激しく後悔している。

安易に家出なんかするんじゃなかった。


あのまま黙ってお父様の言う通りに……

だけど、駄目だ!


だってアレス様は私の命を狙っているのだから!


「サラ……」


馬車を猛スピードで走らせながら、

キースは横目で私を見た。


そして、その顔にいつもの不敵な笑みを

浮かべる。


「話は後だ! 

とりあえず奴らに見つかる前に、

この大陸を離れるぞ!」


それはとても頼もしい言葉だった。


「キース……うん!」


私は涙を拭い、大きく頷いた――

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