4-3 二対二よ!!
「はぁ!? 誰が誘惑しただと!?
人聞きの悪いこと言うな!」
冤罪に対して猛反論するキースに、
馬上からブルーさんが視線を送る。
「ミスリルソードか……加勢するか?
グレイ」
「いや、それには及ばん。俺一人で十分だ」
そう言って静かに馬から下りるグレイさんを見て、
キースがカチンときたのか、叫んだ。
「ふざけるな!!
この俺を誰だと思ってる!
二人まとめてかかって来い!」
「駄目よ! キース! 彼らは危険よ!」
ララお姉さまの保護魔法が
防具に掛けられているということは、
武器や彼ら自身にも、
他にも何らかの戦闘魔法が
掛けられている可能性がある!
バルディアの騎士が無敵と謳われるのは、
お姉さまの付与魔法が組み合わされているからだ。
けれどキースは私が止めるのも聞かず、
今度はブルーさんに向かって切りかかっていく。
「くらえ!」
キースはミスリルソードを大きく振りかぶり、
ブルーさんの右腕を狙う。
しかし――
「脇ががら空きだ」
「ガハッ!?」
ブルーさんの電撃のような蹴りが、
キースのお腹を激しく捉えた。
ガッ!!
キースの体はそのまま大きく宙を舞い、
容赦なく激しい音を立てて
地面へと叩きつけられる。
「グアアアッ!」
「きゃあああ!! キース!!」
私は御者台から飛び降り、
キースへと駆け寄った。
「ウッ……く……っそ……」
キースは苦しそうに体を丸め、
地面に倒れ込んでいる。
「キース! しっかりして、キース!」
大変だ……!
私が「動きやすさ」を最優先して
ハーフプレートの鎧を錬金したせいだ。
だから腹部という無防備だった
場所を正確に攻撃されてしまったんだ……!
「キース……ごめんなさい、キース……」
思わず目に涙が浮かぶ。
「な、んで……泣くんだよ……?」
荒い息を吐くキース。
そこへザッ、ザッ……と
足音が近づいてくる。
「っ!」
気配を感じて振り返る。
するとそこには冷酷に私を、
そしてキースを見下ろす
グレイさんとブルーさんの姿が。
グレイさんは、
地面にうずくまるキースを見て
鼻で冷たく笑う。
「フン。たわいもない」
「口先だけだったな」
そして、ブルーさんが音を立てて
剣を抜いた。
そのギラリと光る白刃を見た瞬間、
私の全身から血の気が引いた。
ま、まさか……キースを殺す気なの……!?
「サラ姫、そこをどいて下さい」
ブルーさんが冷徹な目で見つめてくる。
「い、イヤよ! 絶対どかない!」
私は背中でキースを必死に守るように、
両手を大きく広げた。
「ばっかやろう……な、何やってるんだ……?」
「喋らないで!!」
途切れ途切れのキースの言葉に
私は涙目で激しく首を振る。
「姫、我らを困らせないでください」
グレイさんが、心底面倒そうに眉をひそめる。
「いやよ!! どうしてもキースを
傷つけると言うなら、
先にこの私を切りなさいよ!」
訴える声は震えていた。
だけど、私には一つの確信があった。
グレイさんとブルーさんはお父様の命令で
私を連れ戻しに来たのだ。
絶対に、王女である私自身を
傷つけることは出来ないはず。
「サラ姫、
我々は手荒な真似はしたくないのです」
淡々と語るブルーさん。
その背後では、
キースが苦し気に呻き声を上げている。
「くっそ……」
「御覧になりましたよね?
その騎士と我らでは、
どれほど実力の差があるか。
二対一で、我らに敵うはずがないでしょう?」
グレイさんが呆れたように肩をすくめた。
余裕に満ちた二人の態度を見上げた瞬間、
私の中でバチンと何かが弾けた。
「……違う」
「「え?」」
驚く二人を睨みつけると地面に強く手をついた。
「――二対二よ!!」
私の錬金術がさく裂した――!




