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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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3-17 宿屋の説教と甘い特権

 私たちは宿屋の一階にある食堂に移動し、

向かい合わせで朝食をとっていた。


「いいか、食事を終えたらとっとと

この村を出ていくからな」


キースはまだ少し機嫌が悪そうな

顔で、皿の上の分厚いベーコンを

ナイフで切り分けて口に放り込んだ。


「あら、いきなり出ていけるはず

ないでしょ?

これからの長旅に備えて、

備蓄用の食料を買いだめしておかなくちゃ」


私は焼き立ての香ばしいパンに、

たっぷりとイチゴジャムを塗りながら返す。


「はぁ!?

お前、本気で言ってるのか?

この村で二回も俺たちは刺客に

襲われたんだぞ!?

そのせいでこの俺は小人にされてしまったし、

お前だって危ない目に遭っただろうが!」


キースは呆れたように、

今度はチーズをパンに挟んだ。


「でも、今はキースだって元の大きさだし、

あの悪党たちはゴーレムで綺麗に

追い払ったんだから結果オーライよ」


私は温かいミルクをコクンと飲み干す。

それにアレス様だって、自ら逃げて行った

わけだし。


「大体、お前は危機管理能力ってものが……」


キースが説教じみたトーンで、

そこまで口にしたとき。


「おや、ゴーレムがどうしたって?」


いつの間にか恰幅の良い宿屋のおじさんが

私たちのテーブルへと近づいていた。


そして、私の目の前に

黄金色のハチミツがこれでもかと

たっぷりかかった、

出来立てのパンケーキの皿を置く。


「わぁ、パンケーキ! 美味しそう!」


甘いものに目がない私にとって、

これは最高のご褒美デザートだ。


「い、いや。ゴーレムは、その……」


キースが慌てて言葉を濁すと、

宿屋のおじさんは腕を組んでキースを

ジロリと睨みつけた。


「兄ちゃん、

いつの間にか戻ってきてたんだな。

それにしても駄目だろう?

こんな可愛い妹を一人で置いて、

ふらふらとほっつき歩いちゃ。

女の子は、いつどこでどんな危ない目に遭うか

分からないんだぞ?

昨日だって、いきなり不気味な

緑のゴーレムが現れて、

村の裏手で大暴れしたんだからな!」


おじさんは、すっかり

「妹を放り出して遊び歩いていたダメな兄」

だと勘違いしたようで、

キースに向かって容赦のない

お説教をはじめ拳を握って

熱弁を振るっている。


(ごめんなさい、おじさん。

あのゴーレムを作ったのは、

実は目の前にいる私なんです。

……あ、でも暴れ回ったりはしてませんよ?

ちょっと悪党をポカスカ叩いただけですから)


おじさんにこっぴどく叱られている

キースの目の前で、

フォークを使ってふわふわのパンケーキを

パクリと美味しく頂いたのだった――



****



「全く、お前のせいで

えらい目に遭ったじゃないか」


ガラガラと走る荷馬車の上で、

キースが不平を口にする。


あの後――私たちは宿を引き払って

今は旅に向けての買い出しに来ているのだ。


「あら、そう?

とてもいい宿屋のおじさんだったじゃない。

何しろあのおじさんのお陰で、

青カビチーズという素晴らしい

グルメにも出会えたし。

だから絶対にカビチーズは

買っていくわよ!」


荷台の中から元気よく声をかける私。


「ハイハイ。青カビチーズね」


キースは肩をすくめて返事をする。


それにしても……。

キースの後姿をじっと見つめる。


今のキースは鎧を脱いだ、ただのボロイ身なりの青年。

とても騎士には見えない。


ポケットの中にはミニチュアサイズの鎧が

入っているけれども、

ララお姉さまの魔術が掛けられているので、

私の錬金術では変換することが出来ない。


よし、だったら……。


「ねぇ、キース!」


「あ? 何だよ?」


キースがめんどくさそうに振り向く。


「新しい鎧、欲しくない?」


「まぁ、それは欲しいけどな……

だけど、こんな農村じゃ、

鎧なんて売ってるはずないだろう。

とりあえず、次の町までは心もとないが、

鎧は無しだな。あ……」


突然キースが青ざめる。


「どうしたの? キース」


「た、大変だ……。鎧だけじゃない、

今の俺は剣がミニチュアサイズの

ままだから使えないじゃないか――!!」


キースの絶叫が村に響き渡った――

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