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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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3-15 決死のデコピンと、強制スリープの夜

「うわあああああ!!」


突然、耳元で鼓膜を震わすような

大声が響き渡り、

心地良い眠りから一気に

引きずり戻された。


「キャア! な、何!?」


ぱちりと目を開けた瞬間、

私は目の前の信じられない光景に

凍りついた。


何と、あろうことか、

元の等身大のサイズに戻ったキースが、

ベッドの上にいたのだ。


「いやああああ!! この痴漢! 変態!!」


「お、おい! 落ち着け!」


「何で元のキースがここにいるのよ!?」


ビュッ! と反射的に右手を振り下ろし……。


パァン!!


至近距離から

キースの頬を思い切りひっぱたく。


「いってー!!」


キースが悲鳴を上げた、その途端。


ボンッ!


突然、室内に白い煙が立ち込め、

一瞬でキースはお豆サイズに戻ってしまった。


「え……?」


戻った?


「こらー!! お前のせいでまた

元に戻っちまっただろ!!」


お豆キースは、

バッタのようにベッドの上を

ぴょんぴょんと跳ね回りながら、

猛抗議してくる。


そこで、私はようやく我に返った。


「そうだったわね。私が自分であなたを

ベッドに迎え入れたのよね?

あ~びっくりした」


「……あのなぁ、妙な言い方をするな!

周囲に聞かれたら確実に勘違いされるだろ!

いや、そんなことよりもだ!」


キースはシーツの上で地団駄を踏み、

ビシッと小さな人差し指を

私に突きつけてきた。


「どうしてくれるんだよ!

せっかく元の姿に戻れたってのに、

また小人になっちまったじゃないか!!」


「え? ちょっと待ってよ。

どうして私のせいになるのよ? 

それに、どうして急に元の大きさに

戻れたの?」


問い詰めると、

キースはそれまでの大騒ぎが嘘のように

真顔になった。


「……分からない。

だが、一つだけはっきり分かったことがある!」


「あら、随分と自信たっぷりね。

なら聞かせてちょうだい」


「あぁ、聞いて驚け。

それはずばり! 鎧を脱いだからだ!」


キースは枕元にちょこんと

脱ぎ捨てられている。

ミニチュアサイズの鎧を誇らしげに指さした。


「きっとあの鎧に、

何らかの奇妙な魔法が掛けられていたんだ。

だが、それを脱いだことにより、

束縛が消えて魔法が解けたに違いない!」


「なるほど……。でもそれなら、

どうして、また元のサイズに

戻っちゃったのかしら?」


「そんなのは決まってるだろ!

お前が俺をひっぱたいた衝撃のせいだ!」


「そうかしら……?」


どうにも信じがたい。

それよりも私の錬金術が少しは

甲を成したのかも。


けれど、キースは力説する。


「あぁ! だから、俺をもう一度ひっぱたけ!

特別に許そう!」


小さな胸を張り、

ふんぞり返って偉そうに命じてくる

豆粒騎士キース。


「え? でもいいの? ひっぱたいても」


というか、こんな豆粒騎士を

どうやってひっぱたけというのだろう。


「俺がいいって言うんだから遠慮するな。

思い切りやってくれ」


「わ、分かったわ」


思い切りなんてやったら、

きっとキースは昇天してしまう。


ここはうんと手加減をしてあげないと。


そこでデコピンをする要領で、

かる~くキースのおでこを指先で

ピンとはじいてみた。


すると――


「ギャン!」


まるで小型犬のような悲鳴を上げて、

キースの身体が吹っ飛んだ。


「危ない!」


危うく壁にぶつかるところを、

私は寸でのところで手のひらで

キャッチした。


「キース! 大丈夫!?」


慌てて手のひらを開くと、

そこには目をぐるぐると回して

完全に伸びているお豆騎士が横たわっていた。


「キース! キース!」


「う、うーん……」


するとキースは小さな頭を両手で抱えながら、

ヨロヨロと上半身を起こした。


「て、てめぇ……! 

思い切りやれとは言ったが、殺す気か!

脳震盪を起こすかと思ったぞ!」


「ごめんなさい。これでもかる~く

やったつもりなんだけど。

……でも、これで分かったでしょ?

さっき元に戻ったのは、たまたまよ。

たまたま。

とりあえず、もう寝ましょう」


私が再びキルトに潜り込むと案の定、

豆粒キースが耳元でけたたましく

騒ぎ立てる。


「お前なぁ!

こっちは元の大きさに戻れるかどうかの

瀬戸際なんだぞ!

それをたまたまだとか片付けるなよぉ!」


あぁ、もう。

本当にうるさいなぁ……。


「いい加減に寝なさいよ」


私は寝転んだまま、

パチンと親指と中指で音を鳴らした。


途端に部屋の空気が一瞬で凝縮され、

部屋の中に心地よい睡眠効果が優しく広がる。


「こ、このやろ……ぉ……」


抗おうとしたキースだったが、

抗えるはずもない。


キースはコテンと音を立ててピローの上に

倒れ込んだ。


「やっと寝たわね」


ふーっと息を吐き、

ピローの上で無防備に眠るキースを見つめる。


私はそっと手を伸ばし、

お気に入りのハンカチをキースの小さな身体に

掛けてあげた。


「……おやすみなさい、キース」


今度こそ静かになった寝室で、

私も再びそっと目を閉じる。


――パサパサ……。


意識が深い闇に沈んでいく境界線で、

どこか遠くから

鳥の羽音が聞こえた気がした――

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