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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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3-9 闇に消えた背中

「ア、アレス……様……?」


足がすくんで一歩も動けない。


恐怖というよりも

ショックの方が上回っていた。


まさか、あのアレス様から

剣を向けられる日が来るなんて――!


アレス様は剣を構えたまま、

ゆっくりと近づいてくる。


いつもならここで錬金術をぶっ放すところなのに、

心が追い付かなくて、動けなかった。


ギシッ……。


床板を踏み鳴らしながら、一歩一歩

着実にこちらへやって来る。


アレス様の金色の瞳は怪しく光り、

私を見ているはずなのに、

どこか遠くを見つめているように見える。


ついにアレス様は眼前に迫り、

剣を大きく振りかざした。


「そ、そんな……アレス様……」


あぁ、私……もう、

ここで死んでしまうのかな?

でも、アレス様に殺されるなら本望かも……


なんて、そんなの嘘!


好きな人に殺されるのが本望のはずない!

こんなの、あまりに悲しすぎる!


「……っ、う……」


思わず目尻に涙が浮かんだ、その時。


「!」


突然、アレス様が動きを止めた。

そして、握りしめていた剣をその場に放したのだ。


カラーンッ!


乾いた音が静まり返る宿屋に響き渡り、

アレス様が両手で顔を覆って苦しげに唸り始めた。


「……う、うぅ……」


突然のことに、私は震えながら声をかける。


「あ、あの……? アレス様……?」


すると……。


「ひ、姫……」


「アレス様!?」


アレス様が苦しげに声を発した。


「わ、私から……は、離れ……

お、逃げ下さ……」


それは聞いているこちらも苦しくなるほどの

悲痛な声だった。


「アレス様!」


思わず近づこうとした、その時。


「くっ……!」


アレス様は弾かれたように足元の剣を

拾い上げると、

まるで逃げるように扉から外へ

走り去っていった。


「アレス様!」


慌てて戸口へ向かったが、

もう闇夜に隠されたかのごとく

彼の気配は完全に消えていた。


「アレス様……すごく苦しんでた……。

もしかして、私を殺したくなくて……?」


でも一体、誰が私の命を狙っているのだろう?


確かに私は食い意地が張っているかも

しれないけれど、錬金術で金塊を作った。

すごくマズいかもしれないけれど万能薬だって作った。


「少しは、国の為に貢献してたと思ってたのに……」


だけど、相手は私だけを狙っていた。

真の悪役……ではないのかも。


その証拠に宿屋のおじさんもお客さんたちも、

みんな気持ちよさそうに眠っている。


そう。

最初は驚きと恐怖で、床に倒れている人たちは

全員天に召されたのだと思っていた。


けれどよく見れば、全員が安らかな寝息を立てている。


そして――


「あ! いけない!  キース!」


大変だ! キースを引き出しに

放り込んだままだった!


今のキースは、

エンドウ豆みたいに小さい身体なのだ。


もし引き出しの隙間に挟まっていたら?

ネズミや猫、

それに、あのピンク色の鳥に

攫われていたらどうしよう――!


そう思った瞬間、

全身から血の気が引いた。


私は床に倒れている人たちを

器用によけながら、

慌てて二階へ駆け上がった――



****


「キース!」


部屋に飛び込み、ガラッと引き出しを開けた。

すると、そこには豆粒サイズのキースがいる。


「あ! やっと開けたな!?  

一体なんだったんだよ! 

何があったって言うんだ!?」


いつもと変わらない……

いや、それ以上に小うるさくキースが喚く。


良かった……無事だったんだ……。


「キース……」


その姿、その声を聞いた瞬間。

何だか無性に泣きたくなってきた。


「ど、どうしたんだ……?」


急に黙り込んだ私に

キースが戸惑いの声を出す。


「う……うわああああーん!!」


私はキースが入った引き出しに両手をかけ、

訳のわからない涙を流し続けた――

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