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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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Side 国王 影の庭師

 ララの魔術研究室を後にしたバルディア王は、

怒りの表情で廊下を歩いていた。


「全く! なんという不出来な娘だ!

いまだにサラを見つけることが出来ぬとは……!」


王が焦っているのは単に、

「娘」がいなくなったからではない。


錬金術を操ることが出来る「宝」を

失ったことへの苛立ちでもあった。


(おまけにアレスの奴め。

せっかく貴重な「魔道精力剤」まで渡し、

夜這いをかけてでも、サラの心を

繋ぎ留めろと命じたものを、拒絶しおって!

挙句に、あの不出来なララに

うつつを抜かしおって……!)


国王の脳裏に、あの日サラを

肩に担ぎ上げて連れ去っていく

キースの顔が蘇る。


(くそっ! あの目つきの悪い騎士め!

恐らく奴はサラの価値に気付いたに違いない。

何処の出自かも分からぬ男に、

この国の宝をかっさらわれるとは……!

万一サラの力が外に漏れたら……)


「破滅だ……! もうなりふり構ってなど

いられるものか! 一刻も早くサラを

連れ戻さねば!」


バルディア王は足早に、ある場所へと向かった――


****


 バルディア王がやって来たのは、

美しく整えられた城の中庭。


赤いバラが咲く花壇の前で足を止めると、

目深に麦わら帽子をかぶった庭師の男が

音もなく近づいてくる。


庭師は王のそばにくると剪定ばさみを手にしたまま、

深く頭を下げた。


バルディア王は庭師を見ることもなく告げた。


「……サラが城からいなくなり、半月以上になる」


「はい、さようでございますね」


抑揚のない声で返事をする庭師。


「今までララの追跡魔法で

サラの行方を追わせていたが、

一向に見つからん。埒が明かない。

……全く使えない娘だ」


「……」


庭師は無言のままだ。


「あの娘に捜索させたのが、

そもそも間違いだった。

今後はお前たちにサラの捜索を命ずる」


「確か、サラ姫様は騎士と

一緒だということですが……?」


「あぁ、そうだ。

忌々しいことに出自もはっきりしない若造が、

わが国の大切な宝を奪ったのだ。

よりにもよって、サラを!」


バルディア王は目の前のバラの花を

乱暴にむしりとると手の中で握りしめる。


「良いか? 必ずサラを無傷で連れて帰るのだ。

護衛騎士はどうなっても構わん。

いっそ殺してしまってもいいだろう」


「……承知いたしました」


「それと、手配書のサラの似顔絵は

わざとひどく描かせてある。

王女が家出したなどという醜聞、

広まっては困るからな。

あくまで行方不明の娘を探している

という体裁を保て」


「御意にございます」


「それと、サラの手掛かりを掴んだら

都度報告せよ」


バルディア王はポケットから

小さな魔道具を取り出すと

庭師の手のひらに押しつけた。


「これは通信用の魔道具だ。

どこにいても私に直接繋がる」


「はっ。では早速仲間にも伝えます」


庭師は敬礼すると、

足早にその場を去って行った。


一方、バルディア王はその場にとどまり、

じっとバラを見つめていた。


「何としてもサラを見つけ出さなければ……

あの力は絶対、誰にも渡すものか……」


****



魔術研究室の窓から、

ララは中庭に佇む父親の姿を

じっと見つめていた。


庭師とのやり取りも、

すべて魔術を使って聞こえていた。


「……サラ」


小さく呟いたとき、

背後からアレスが近づいてくる。


「ララ様。どうなさいましたか?」


「いいえ、何でもないわ。アレス」


ララは笑顔で振り向き、そっと

アレスの胸に身を預けた。


「ねぇ……アレス。

あなたは私の味方なのよね?」


「もちろんです、ララ様。

私が忠誠を誓うのは陛下では、ありません。

ララ様です」


アレスがララをそっと抱きしめる。


「そう、だったら……

私のお願い、聞いてくれるかしら?」


「はい、ララ様のお願いなら

どんなことでも聞きましょう」


どこかうっとりした目つきで返事をする

アレス。


いつしか部屋には香炉が炊かれ、

甘い香りが漂っていた。


「ありがとう、アレス」


ララは笑みを浮かべ……

アレスの首にそっと腕を回すと、

静かに耳打ちした――



****


――夜が更けた魔術研究室。


ベッドの上では、アレスが静かな寝息を

立てて深い眠りに就いている。


ララはそっとアレスの頬に唇を寄せた。


「可愛い人ね。本当に……

こんなに簡単に、言いなりになるなんて」


冷めた目でアレスを見つめる。


音を立てないようにベッドから静かに離れ、

作業台へと戻るララ。


台の上には水晶が置かれ、淡く光っている。


その水晶には、

上空から荷馬車が進む様子が映し出されていた。


「フフ……お利口ね、オキア。

『魔眼』の魔法をかけておいてよかったわ」


しかし時折、水晶の映像に乱れが

生じる。


ララは眉根を寄せた。


「距離が遠ざかっていく……

本当にサラは国を出ていくつもりなのかしら?」


ララはそっと、叩かれた頬に手を添えた。


「……サラ。許せない……」


ギリッと唇を噛む。


「絶対にお父様には渡すものですか……。

サラ、あなたは私が殺してあげる」


ララは優雅に微笑むと

マントを羽織り、魔術研究室を後にした――



****


――その頃。


ガラガラと走る荷馬車の中、

ブランケットにくるまってサラは眠りに

就いている。


手綱を握るキースが、恨み言を

呟いた。


「……ったく、なんて姫だ。

俺たち二人お尋ね者になってるって言うのに

呑気に寝てられるんだから。

はぁ~……。俺が賞金首になったことが

親父の耳に入ってたら、まずいな……」


溜息をついたそのとき。


パサパサ


羽音に気付き、キースは空を見上げた。


すると頭上に、まるでこちらに追従するように

空を飛ぶ鳥を見つける。


「鳥……? こんな真夜中に?」


キースが少しの間見つめていると、

鳥は更に高度を上げて遠ざかって行った――




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