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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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2-13 似ても似つかない手配書と、お兄ちゃんと呼ばされた騎士

「ほら! この手配書……

全っ然似てないが、お嬢ちゃんだろう!?」


男がずいっとポスターを突き付けてくる。


「ちょっと貸しなさいよ!」


私は男からポスターをひったくると、

穴が開くほど見つめた。


そこに描かれていたのは、

瞳の色と髪形だけはそっくり同じ。


だがしかし、顔のパーツは

まるきり別人のものだった。


狐のように細く吊り上がった目。

胡坐をかいたような鼻にしもぶくれ。

それなのに口は大きくて

不敵な笑みを浮かべている。


チャーミングな私とは似ても似つかない

顔だった。


「な、な、何よ。これは……」


怒りとも恥辱ともつかぬ感情が込み上げてくる。


一方キースは……。


「な、なんだこれ……アハハハハハッ!!

ひっでー顔!!」


背後で大笑いしている。


おのれ、キースめ!

人の気も知らずに高笑いするなんて

許すまじ!


「あのねぇ……!」


キースに文句を言おうと振り向いたとき。


「おいおい、あんたたち、

目が腐ってるのかい?

この人相書きと、こいつ。

何処が似てるって言うんだよ」


グイッと私の肩を掴んで抱き寄せてきた。


二人は私と人相書きを交互に見比べ……。


「ま、まぁ確かに髪形はそっくりだが……」


「瞳の色もおんなじだしなぁ」


「だいたいさぁ、この人相書き。

サラ・ド・バルディアって、

バルディアの姫だろう?

何で姫に懸賞金が懸けられるんだよ?」


すると一人が言葉に詰まる。


「そ、それは……」


懸賞金付きポスターには

キースと同様の文面。


『この人物を捕らえ、

バルディア城へ引き渡した者に101万ジュエル進呈』

と書かれている。


キースと同額というのが

なんとも複雑な気分ではあるが、

理由は何も書かれていない。


「大体、姫に懸賞金が懸けられるはずないだろう?

こんなのはまやかしのポスターだ」


キースは私の手からヒョイと

ポスターを取り上げると、

あろうことかビリビリに切り裂いていく。


「あ!」


「おい! 村でたった1枚のポスターに

何してくれる!」


2人の農夫は顔を真っ赤にさせるも

キースは涼しい顔で答える。


「こんなことしてないで、

畑を耕してた方がいいんじゃないのか?

時間の無駄だろう。

それにこいつは俺の妹だ。

旅先で腹が減ってたまらないって

ビービー泣くから、

この村に立ち寄って飯を食わせてたんだよ。

どうだ? 腹いっぱいになっただろう?」


キースに尋ねられ、見つめると

小さく目配せしてくる。


ははぁん、なるほど。

話を合わせろということね。


キースを兄と呼ぶのは癪に障るけど……。


「うん、お兄ちゃん。

お腹いっぱいになったわ」


鳥肌を立てながら笑顔で答える。

多分キースも鳥肌を立てていることだろう。


「チェッ、金儲けのチャンスだと思ったのに」


「空振りかよ……」


明らかに落胆する男たち。


「ほら、分かったらさっさと行けよ」


シッシと手で追い払うキース。


二人はすごすごと背を向けて去っていくと、

キースは小さく耳打ちしてきた。


「長居は無用だ。行くぞ」


「そ、そうね」


距離の近さに戸惑いながらも頷くと、

そそくさと荷台に乗り込んだ。


キースも御者台に乗り込むと

「行くぞ!」と声を上げて手綱を握りしめる。


「いいわよ! ただし、

絶対次の場所では食料を買い込むんだからね!」


「フンッ! 勝手に言ってろよ!」


キースは振り向きざまに一瞬笑みを浮かべると、

すぐに前を向き、ぴしりと手綱を鳴らした。


ガラガラガラガラ……


荷馬車が音を立てて走り出す。


その時――


パサパサと軽い羽音を立てて、

突然ピンク色の鳥が荷台の木枠に降り立った。


前を向いているキースは鳥に気付かない。


「あ!? この鳥は……!」


「あぁ? 今なんか言ったか?」


キースが振り向くと同時に

鳥は再び飛び立ってしまった。


「ううん、何でもない」


別に話すほどのことでもないだろう。

それより……。


「ちょっとキース!

その言葉遣い何とかならないの!?」


「は? 今更取り繕ったって意味ないだろ」


「そうよねぇ、だって私たち兄妹なんだものねぇ。

お兄ちゃん」


「ば、ばか! やめろ! 鳥肌が立つ!」


「失礼ね!

こっちだって鳥肌が立ってるわよ!」


……ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、

いつの間にか夕日に染まる空の下。


荷馬車は進む、どこまでも――

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