2-12 失恋騎士と、まさかの私も手配中!?
「嘘だ……そんな、
ララ様が……あの野郎と恋人だったなんて……」
キースは道端にしゃがみ込み、
ブチブチとその辺の草を引っこ抜いている。
「あ~ヤダヤダ。
男のくせに女々しいわね~。
たかが2週間の恋で、そんなに悩んで。
私を見なさい!
5年前からアレス様に恋をしていて、
最近婚約決定。
それなのにララお姉さまと恋仲、
その様子を目の当たりにしてるのよ?」
「お花畑能天気と、
ガラスのように繊細な俺を
一緒にするなよ。
俺がどれだけララ様を崇拝していたと
思ってるんだ?」
ジト目で私を睨みつけるキース。
「お前は知らないだろう?
ララ様の親衛隊になるのに、
どれだけ倍率が高かったか……。
最近は人気がありすぎて、
抽選で当たった者しか
親衛隊に入れないんだぞ?」
キースの足元は
引っこ抜かれた雑草だらけになっている。
もうこの男は、私を姫扱いする気持ちさえ
失恋のショックで吹き飛んでしまったようだ。
「あー! もう! いい加減にしなさいよ!
私だって十分傷ついているのよ!?
だってアレス様が私にプレゼントして
くれたのは、その辺の道端に咲いていた
パンジーの押し花!
けれどララお姉さまには
1本1本棘を抜いた赤いバラの花束!
どう? 参ったでしょう!」
本当は参ってるのは私なのだが、
わざと胸をそらしてみせる。
「……パンジーの押し花を貰えるだけましだ……
俺なんか、挨拶してもらえるだけの
存在なのに……はぁ~……」
大きくため息をつくキース。
本当になんて男だろう。
たかが2週間の一方的な片思いで
こんなにヤサグレてしまうなんて。
「だったら今すぐ城に帰りなさいよ!
そして無理やりアレス様から
お姉さまを奪って見せればいいでしょう!?
でも言っておきますけどね、
私は絶対城には帰らない!
1人で旅を続けるから!」
するとガバッとキースが立ち上がった。
「冗談じゃない!
そんなことできるはずないだろ!?
大体俺がお尋ね者になっているのを
見たじゃないか!」
「あのね!
さっきからその口の利き方は何!?
少しは敬意を払ったらどうなの!?」
「敬意なんかもう払ってられるか!」
その言葉の後、一瞬だけ押し黙る。
自分が何を言ったか気づいたのかもしれない。
「……っ」
動揺した様子を見せるも、すぐに目を逸らした。
「ララ様の妹だから大目に見てやってた
だけだ!
だが今となってはもうどうでもいい!
このじゃじゃ馬め!」
「じゃじゃ馬とは何さ!」
再び私とキースの口論が白熱した、その時。
「おい! そこのお前ら!」
突然声をかけられて、
私とキースは同時に振り向く。
「何よ!」
「何だよ!」
そこには麦わら帽子をかぶった
ガラの悪そうな二人の男が
ニヤニヤしながらこちらを見ていた。
若くも無ければ年寄りでもない。
そこそこの年齢の男たちだ。
一人は鍬、
もう一人は巨大なフォークのような桑を
手にしている。
「何だよ、農夫かよ。
見ての通り、俺たちは忙しいんだよ!」
「そうですよ!
畑仕事に戻ったらどうです!?」
私もキースも苛立ちがピークに達していた。
「はぁ!?
何だてめえら!
そんなでかい口叩いていいのかよ!?」
「ほら! これでも見やがれ!」
1人の男が突然、
私たちにポスターを突き付けてきた。
そこには先ほどルディアの町に
貼られていたものとは別の
極悪面した女性の手配書。
名前はサラ・ド・バルディアと
書かれていた――!




