表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/31

2-3 「お願いします! どうかベッドで寝かせてください!」 媚びるキースと拒否する王女

 私たちは、スパイシーな香りが

充満する食堂で肉料理を囲んでいた。


「う~ん、美味しい!

やっぱりパリッパリな鶏皮は最高ね!」


至福の表情で頬張る私の向かい側で、

キースが眉をひそめてこちらを見ている。


「……一体、何皿目ですか?

見ているこっちが胸焼けしてくる……」


「う~ん、そうねぇ……七皿目?

それとも八皿目だったかしら?」


「うげぇ……」


コーヒーを飲みながら、

キースは苦々しい表情を浮かべた。


「そういうキースはもう食べないの?」


「当然でしょう。

こちらだって三皿で十分ですよ。

それにしてもよく食べますね。

今に子豚になりますよ?」


「はぁ!? 子豚ですって!?

私のどこが子豚なのよ!」


「今になりますよ、と言っただけでしょう?

それより今夜の宿はどうするんです。

そろそろ決めておかないと」


キースが店内の時計をチラリと見る。


「あら、別に決めなくていいじゃない。

今夜は野宿するのだから」


「……冗談ですよね?」


カチャリ、とキースがコーヒーカップを

置いた。


「冗談なんかじゃないわよ。

今夜は野宿。そう決めてるから」


私はフォークに刺した肉を口に運ぶ。

う~ん、美味!


するとキースが喚きだした。


「冗談じゃありません!

なぜ野宿しなくちゃならないんです!

こっちは昨夜から一睡もしてないんですよ!

ベッドの上で寝たいんですよ!」


「宿泊代がもったいないじゃない。

荷馬車で寝ればいいのだから。

その分、食費に回せるでしょ?」


「嫌ですよ! 頼みます!

この通り! どうかベッドで寝かせてください!

お願いします!」


テーブルに頭を擦り付けるキース。

すると、周囲の客たちがコソコソと話し始めた。


「……おい、見てみろよ。

あの男、ベッドに入れろって頼んでるぞ」


「あの女の子、まだ未成年じゃないのか?

よく堂々と頼めるなぁ……」


「しかも騎士みたいだし……

恥ずかしくないのか?」


その言葉にキースの耳がピクリと動き、

ガバッと顔を上げた。


「あ~あ……どうする? キース。

紛らわしいこと言うから、

周囲に誤解されてるみたいよ?」


「な、な……じょ、冗談じゃない!

早く出ましょう! 今すぐ!」


キースは立ち上がると、

私の腕をむんずと掴んだ。


「え? 嫌よ!

まだお肉が残ってるのに!」


「もう十分食べたでしょう!

ほら、出ますよ!」


「ああ! 私のお肉が――!」


こうして私たちは周囲の注目を浴びながら、

嵐のように店内を後にした。


……私たちを監視する人物が、

すぐ近くに潜んでいることにも気づかずに――



****


――二十三時。


「あ~、気持ちよかった」


入浴を終え、寝間着に着替えた私は、

部屋の明かりを消すとベッドに潜り込んだ。


いつも使っていた天蓋付きの

ゴージャスなベッドではないけれど、

私は十分に満足していた。


「……全く、あんなに泣きつかれるとは

思わなかったわ」


先ほどの光景を思い出す。

あの後、食堂を出るなりキースは土下座までして

「どうか今夜は宿屋のベッドで眠らせてください」

と半泣きで頼んできたのだ。


私だって、そこまで鬼じゃない。


そこでキースの要求を呑んであげることに

したのだが……。


「まぁ、ベッドで寝るのも悪くないわね。

ふわぁ~……眠い……」


今日は一日で色々な出来事があったのだから

無理もない。


「……おやすみなさい、アレス様」


もう婚約者ではいられないけれど。


せめて、愛しいアレス様の夢を

見ることができますように……。


祈りながら私はそっと目を閉じた。


自分たちのせいで、

あの店が襲われたことを知らないまま――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ