1-18 全部あの男がやりました(※嘘です)
「ふ~」
日傘を下ろすと、
大きくため息をついた。
「は~……お腹空いたわ」
流石に今日は錬金術を
使い過ぎてしまったかもしれない。
「これからはクッキーでも持ち歩いて
いた方が良さそうね」
足元には、ぶすぶすと黒い煙を立てて
地面に転がっているハゲとザコ……
そしてついでに、
うつ伏せに倒れているキース。
え? キース?
「きゃああっ! キース!? しっかりして!」
地面にしゃがむと、必死になって揺すぶる。
「う……」
低い声で唸るキース。
良かった、生きてる!
「良かった! 意識があるのね?
でも……一体誰がこんなひどい真似を……!」
すると――
「……だ……」
「え? 何? 聞こえないわよ?」
低い唸り声に耳を傾ける。
「だ、誰のせいだ……と……」
キースが恨みがましい声を絞り出した
その時。
「何だ!」
「今すごい光が見えたぞ!」
「一体何事だ!」
「魔法攻撃か!?」
大通りにいた人々が一斉に駆けつけてきて、
あっという間に人だかりができる。
ブスブス煙を上げて倒れている男三人、
そしてピンピンしている私。
……ハッ! これは色々マズイかも。
咄嗟に私の脳裏に
素晴らしいアイデアが浮かんだ。
「き、聞いてください!
私たち、ただ歩いていただけなのに……
あそこに倒れている人たちが、
いちゃもんをつけてきたんです!
お金を寄こせと脅されて……!」
私は日傘をキースのマントの下に隠し、
これ以上ないほど悲劇のヒロイン風に叫んだ。
「そ、そして、あのマントの男が
魔法使いだったみたいで、
いきなり雷の魔法をぶっ放してきたんです!」
そして倒れているキースを指さす。
「この人は、身を挺して私を守って……ううっ。
で、でも、罰は下るものですね。
彼が剣で雷を弾き返して、
あの人たちにぶち当たったんです……!
私たち、被害者なんですっ!」
女優顔負けの演技。
すると、群衆からどよめきが起きた。
「なんと! そうだったのか!」
「とんでもない奴らだ、白昼堂々強盗とは!」
「このまま捕らえて、治安部隊に引き渡そう!」
町の人々が一致団結する。
そう!
バルディア王国の国民たちは、誰もが
正義感に満ちているのだから!
町の人たちが気絶しているハゲとザコに
気を取られているすきに、
キースの耳元で囁いた。
「意識があるのよね? 今のうちに逃げるわよ」
「に、逃げるって……?
くっ……む、無理言うな……」
どうやら電撃のダメージで、
指一本動かすのも辛いようだ。
「仕方ないわねぇ……勿体ないけど」
私はバッグから小さな小瓶を取り出した。
中に自作の丸薬が半分ほど入っている。
これは回復用に作っておいた秘蔵の錬金薬。
効果抜群だけど、
材料集めが大変で量産出来ないのがたまにキズ。
ポンッ、とコルク栓を抜くと1粒取り出し
無理やりキースの口をこじ開けた。
「ふぁ!? はにをふる……?」
「いいから、これを飲んで」
抵抗する口の中に、
丸薬を力いっぱい押し込む。
ゴクンとキースの喉が鳴り……
「……げぇ~~っ!! ま、まずいっ!!」
キースが跳ねるように起き上がった。
「元気になったわね?
なら、今のうちにずらかるわよ!」
町の人たちは、
いまだにハゲとザコを取り囲んで熱くなっている。
「ずらかるって……チッ!
分かりましたよ!」
苦虫を噛み潰したような顔をしながらも
すっかり元気になったキース。
私はキースの背中を押すようにして、
どさくさに紛れてその場を全力で逃げ出した――




