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婚約破棄を目指した逃亡王女、気づけば毒舌騎士を巻き込んで二人ともお尋ね者になりました  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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1-17 手綱を握る夢

「さぁ! 

旅の軍資金も手に入れたことだし、

これから馬車を調達に行くわよ!」


店を出た私は、

元気よくキースを振り返った。


しかし、

肝心のキースには全く覇気がない。


顔は青ざめ、

足元は幽霊のようにふらついている。


「どうしたの? 

もしかして夜勤明けで疲れが出ちゃった?

でも安心してちょうだい。

馬車を調達したら、

私が手綱を握ってあげるわ。

その間、キースは荷台で寝てればいいわよ」


「は? 確かに夜勤明けで今にも

ぶっ倒れそうなくらい疲弊してますけど、

問題はそこじゃありませんよ。

姫は先ほどのオーナーの話、

気にならないんですか? 

……だいたい、手綱を握った経験は?」


疲れていると言いつつ、

キースは一気にまくし立ててくる。


「そうねぇ、ドラゴ……なんとか?

おかしなことを言ってたわね。

もとをただせば、その辺の石ころなのに。

あと、手綱は握ったことないわ。

でもまぁ、なんとかなるでしょう!

だから早く荷馬車を買いに行くわよ」


私の脳内には、青空の下で

大草原を荷馬車で突き進む爽快な

光景が既に浮かんでいた。


「え!? ちょ、ちょっと待ってください! 

経験もないのに荷馬車を調達!?

だったら辻馬車を拾えばいいでしょう!」


キースが慌てて私を追い越そうとする。


「あのねぇ。

私は命を狙われてること、

もう忘れたの? 

辻馬車なんか利用して

悪党たちが襲ってきたら、

無関係な人たちまで巻き込むでしょう?」


……というのは建前で、

本当は荷馬車に乗って自分で手綱を握り、

いかにも『家出の旅』という雰囲気を

楽しみたいだけなんだけど


「む……。確かに、

言われてみればその通りかも……」


妙に生真面目に考え込むキース。


目つきも性格も悪いくせに、

こういうところは意外と常識人というか、

お人好しなのかもしれない


「なら、早く行きましょう。

お姉様がくれた髪飾りを手放して

手に入れたお金だもの。

有効活用しなくちゃ」


「え? あれはララ様からの

プレゼントだったのですか!?

それをあんな怪しげな店に置いてくるなんて……

馬鹿なんですか!?

いや、大馬鹿でしょう!」


ララお姉様の名前が出た途端、

キースの目の色が変わった。

本当に分かりやすい男ね。


「仕方ないでしょう? だって、

あの石を買い取ってくれなかったのだから」


私とキースは、

買い物客でごった返す通りを歩きながら、

大声で論争を繰り広げていた。


「そうだ! 忘れていた!

姫はあの赤い石のことを何も

知らないんですか!?

いいですか、あの石は……」


キースが言いかけた、その時。


「ちょっと待ちな! そこのお二人さん!」


背後からいきなり大きな声で呼び止められ、

私とキースは同時に振り向いた。


見るとそこには、いかにもガラが悪そうな

二人の男が立っている。


一人は頭がつるっぱげのマッチョ男。

もう一人は貧相な体つきのマント男。


よし、ハゲとザコと命名しよう。


「何だ? 俺たちに何の用だ?」


キースが私の前に立ちふさがった。

おや? もしかして私を守るつもりかしら。


「ああ、用があるから声をかけたんだ。

お前ら、さっきギルドの店にいただろう? 

俺たちも偶然、あの店にいたのさ」


「……そうか。何が言いたい?」


「決まってるだろう。

あの石を俺たちが買い取ってやるよ。

金に困ってるんだろう?

そうだなぁ……五千ジュエルでどうだ?」


「五千ジュエルだと?」


キースの声に凄みが増す。


五千ジュエル……。

それでは一人分の宿代にしかならない。


私の錬金術は空腹と引き換えに

生み出されるのだ。

五千ジュエルでは到底、割に合わないわ。


「断……」


「お断りよ!」


キースが言い切る前に、

私がぴしゃりと言ってのけた。


「いいこと? 

あの石が五千ジュエルで手に入るなんて

思わないことね!

せいぜい、一万……いえ、

二万ジュエルは頂かないと!」


「「「二万ジュエルだと!?」」」


なぜかハゲとザコだけでなく、

キースまで声を揃えた。


「ええ、そうよ。

それくらい払ってもらえれば……」


「こ、このバカ! 

何も話すんじゃない!!」


キースが私を羽交い締めにし、

口を塞いできた。


「ムゴーッ!」


(ちょっと、何するのよ!)


「へぇ、嬢ちゃんは二万ジュエルで

石を譲ってくれるのか。

……だがな、俺たちはあいにく

一ジュエルも払う気はないんだよ!

さっさとその石を寄こせ!」


ハゲが凄みながら私たちに向かってきた。


「くっ」


キースが私から離れ、剣を抜こうとする。


……よりも早く、

私は手にしていた日傘をハゲに向けて

グッと力を込めた。


「お、おい! 姫!?」


キースが私の肩に触れる。


「雷よ!」


叫ぶと日傘の先から眩いばかりの

光が放たれた。


「「「ギャアアアアッ!!」」」


ハゲと、近くにいたザコ。


ついでに私の肩に触れていたキースの絶叫が、

通りに響き渡った――



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