37 頭に小さなこぶが出来た程度でした
予定より遥に更新が遅くなり申し訳ございません。ゆっくりではありますが更新再開しようと思います。短いです。
私の言葉を受けたミズキは眉尻を下げ、口を開いて直ぐに閉じた。ほぼ同時に、私の左手が解放される。
「ありがとう」
微笑むと、ミズキはまるで自分が怪我でもしたかのような痛々しい表情になった。気にしないで、と声をかけようか迷っていると保健室まで私を運ぶ準備が出来たらしい先生方がミズキを宥め、道をあけるよう促した。ゲームでは描写されていなかったけど、怪我人などが出た場合、ストレッチャーらしきもので運ばれるらしい。
「……お力になれず、すみません……」
少し俯きながら目を閉じ、か細く庇護欲をそそる小さく儚い声で紡がれたこの言葉。
うん。今確実に例の『例え聖属性の癒やす魔法であっても完璧に制御できるまでは使っちゃ駄目なんだ……』っていうモノローグが入ったな。しょんぼりとした様子のミズキに対し、失礼とは思いつつ記憶の中のゲーム画面を重ねてしまう。
本来であれば最も好感度の高いキャラのルートに入った後、何かしらの理由で負傷した相手とのイベントの筈なのだけれど。何故ルートが確定する前日である今日、悪役令嬢である私に対して先程の言葉をかけたのか。
そもそも、ゲームでは今日は何のイベントも起きない筈。だからこそ、明日がバッドエンドルート確定日かもしれないと分かっていても、お昼ご飯をたべる時に魔法の実施訓練に思いを馳せたのだ。最初で最後の純粋に魔法を楽しめる機会になるかもしれなかったから。
今日の怪我は、この世界で地に足を着け生きる人間として、何でもかんでもゲームと同じだと思うことの危険性を身に染みて感じる出来事だった。




