31 羽ペンとノート
決めた日が吉日とばかりに、昼休みにミズキを昼食に誘うことにした。
授業終了の鐘は、体感的に後5分もすれば鳴る筈だ。
黒板に書かれた問題を難なく解き、両隣に座るサリアとタリアに目を向ける。どうやら2人も優秀なようで、既に私と同じ数字がノートに記されていた。
私達が座る席が教室内では1番後ろの窓際だからと言って、ノートに羽ペンで書く音以外静かな教室では、どれだけ声を潜めても先生の元まで届いてしまいそう。仕方が無く、ノートに“今日はミズキさんを昼食に誘うつもりなのだけれど”と書き、サリアとタリアの視界に入るように置いた。すぐに意図を察してくれたのであろうサリアとタリアが、私と同じように“エリエル様のご意志に従いますが、突然、何故でしょうか”とノートの端の方、私が見えやすい位置に返事を書いてくれた。そういえば、何故と言われたら2人には答えられない。ミズキにも答えられない。ゲームとしてのバッドエンドはほぼ確実だとは思うので、その原因を調べる為に必要、等と言える筈が無いからだ。
考えながら、何の気なしに教室を見回す。ルドア王子の席がある方にも目を向けると、まさかのルドア王子とがっつりと目が合ってしまった。何故私の方を見ているのだルドア王子。ここはヒロインであるミズキを見るべきだろう。親愛度が全くと言って良い程上がっていないから仕方が無いとは言え、私にとっておいしいシチュエーションになり得る場面だったのに!
まさかそんなこど直接言いに行ける訳も無く、軽く微笑み会釈をしてルドア王子が私から目線を外してくれるのを待つ。向こうもまさか目が合うとは思っていなかったのか、少し目を開き、すぐにイケメン王子スマイルを向けてから黒板へと向き直った。
私の一見すると奇行となる行いの間も根気よく待ってくれていたサリアとタリアに、少し悩んでから“もう入学して1月経つので学園に慣れたか確認しようと思ったの”と書いたノートを見せた。王妃様にも頼まれたし、ルドア王子にも頼まれたし、その場面に一緒に居たから納得してくれるだろう。
返事を書こうとしたのか、羽ペンを持つ手に少し力を入れたサリアとタリアを笑うかのように授業の終了を告げる鐘が鳴った。数学の先生の挨拶が終わり、皆が食堂等に向かう為席を立つ。
「先程のことですが、かしこまりました。私がミズキさんを呼んでまいりますのでお待ち下さい」
通路側に座っていたタリアはそう言うと、ざわつく教室内の決して広くはない通路を速やかに降りていく。あれだけの人が居てぶつからないのは凄い。
しばらくして、ミズキを連れたタリアが私の元に戻ってきたのだった。




