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29 質問

 ルドア王子の座る席まで辿り着くと、隣に座るよう促された。もしかして長話になるのだろうか。柔らかいクッションのような座面に腰を下ろす。心なしか私が普段座っている場所より座り心地が良い気がした。気持ち的には全く良くないのに。


「おはよう、突然の呼び出しすまない。時間もないから、早速で悪いが質問させてもらうよ」


「ご機嫌よう。何なりとお聞き下さい、ルドア様」


 挨拶もそこそこに、早速質問タイムが始まるらしい。周りに座る茶髪のゲームでは背景だったクラスメイトが、横目でチラチラとこちらを気にしている。何となく前の席に座るご令嬢2人に目線を送ると即座に逸らされた。それでも席を立たないところを見ると、好奇心が抑えられないのだろうか。はたまた、エリエルとルドア王子が婚約破棄すれば自分達にもチャンスがあると思っているのか。

 夢があるよね、王子様との結婚。私には無いけど。


「ではまず、朝の騒ぎは何だったのか手短に訊かせてほしい」


 何となく既にことのあらましを知っていそうだけれど。きっと当事者から話を聞き、情報の確実性を高めたいのだろう。でも、昼休みにでも呼び出せば詳しく話せるというのに、何故今訊くのか。

 ルドア王子とは別の視線を感じ、目線を少しルドア王子の後ろに向ける。カイルと目が合った。早く答えろとでも言いたげな目は、形だけで笑っている。なにこれ怖い。

 圧力をかけてくる、ように私には感じるカイルから視線を外し、ルドア王子に向き直る。折角なのでヒロインであるミズキの好感度が上がりそうなことを言っておこう。


「そうですね、まず、教室内に少なくとも入学式の日から、花が生けてある花瓶があそこに置いてあることはご存知でしたか?」


 手の平を使い花瓶のある場所を示す。ルドア王子は頷いた。周りのクラスメイト達から少しざわめきが起こる。ご存知なかったらしい。


「ああ。あのカーテンに隠れるようにして置かれている物だな」


「はい。その花瓶の中の水を、毎朝ミズキさんが替えていることはご存知ですか?」


「いや、それは初耳だ。学園の者がしているものだと思っていた」


 普通はそうだよね。ミズキの毎日の水替えは私が教室に着いたすぐ後ぐらいに終わる。それより遅く来るルドア王子が知る訳もない。


「学園の方もしているでしょうが、毎朝ミズキさんは水を替えているようですよ。今日は偶然、水を替えあの場所に花瓶を戻しに行く途中でミズキさんが転けてしまい、私の制服に花瓶の中の水がかかってしまったのです。それについてミズキさんから謝罪を受けている時にクラスの方々が集まってしまったのですわ。少し騒ぎが大きくなってしまい、どうしようかと思っていた所にアデル……カムベルト様が入って下さり、事なきを得ましたの」


 ざっくり説明するとこうなる筈だ。花が入れ替わったことは省いたが、特に問題は無いだろう。


 「そうか……内容に虚偽は無いんだろうね」


 「ありませんわ」


 王族に虚偽の申告をするなんて、バレた時にどんな罰があるのか分からない。そんな怖いことしないし、したくも無いんだけれど。

 堂々と胸を張り、自信を持って答えていると態度で表す。


 「…………そうか、感謝する」


 ルドア王子の言葉が終わるのを待っていたかのように、授業開始の鐘が鳴る。特にこれ以上訊きたいことも無いようなので、私はいつもの席に戻った。

 心配そうに眉を下げるサリアとタリアに笑顔を返し、始まった数学の授業を、中学時代の復習のつもりで眺める。











 昼休みに、カーテンを開けて日の光に照らした花の色はどうしても白色以外、確証を持つことは出来なかった。

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