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13 料理は話が終わった絶妙なタイミングで出されるらしい

 ルドア王子のお母様、つまりはこの国の王妃様が、学園の夜会にお忍びで来るらしい。


 それは確か、ゲームのシナリオにあったものだ。

 聖の魔力を持つヒロインがどのような人間か見極める為、そして、この国の未来を担うであろう貴族の若者達をちらっと見にくるんだったかな。


「そのお忍びの際、母上はミズキ嬢と秘密裏に挨拶がしたいらしい。他の生徒には、母上がいらっしゃることを知られないようにするため、協力していただけないだろうか」


 それ、実質拒否不可能な命令だよね。はい、かyesしか求めてないだろ。別に私が断る理由なんてないけれどね。

 でも、先に秘密を話すだなんて、もし断られて悪意の元周囲に言いふらされたらどうするつもりなのだろうか。まあ、王族の頼みを断る人なんてここには居ないのだろうけれど。


「勿論、私でよろしければ喜んで協力致しますわ。ですが……ルドア様、大変失礼であると存じますが、1つご意見させて下さい。協力関係になる前の人間に秘匿の情報を伝えることは、あまり褒められたものではございません。相手の信頼を得るため、時には有効な手段になり得るかもしれませんが、今後お気をつけいただければと思います」


「……確かに、エリエルの言う通りだ。肝に銘じておこう」


 よくよく考えると、王子様に対して意見して良いか尋ねるのではなく、意見すると断言した後ルドア王子の言動を否定したのだ。中世のヨーロッパのような世界を元にすることが多い乙女ゲームでは、不敬罪になってもおかしくはない。


 けれども、私がこのことで罰されることはない。ゲームの通りの設定ならば大丈夫。いや、これがゲームの世界ではなく、現実世界だと分かってはいるのだけれど。知っている世界、知っているストーリーに見慣れた……いや、聞き慣れた? 会話。どうしてもゲームを前提として考えてしまうのだ。

 実際に不敬罪にもならなかったしね。理由を話そうとすれば、少し長くなる。


 これは、ルドア王子のルートに入りバッドエンドになることで明かされることなのだが、ラフテンシア王国の王は、自身の過ちを認め次に生かし、国民達と助け助けられ共に歩んでいこう精神の持ち主である。

 王族は謝ってはいけない! 正しくあらねばならない! という考え方ではなく、人は過ちを犯すもの。それを認め、謝罪し、より良い未来の為に尽力するべきだ。その為にも助け合いの精神も大事だよね、という考え方を元に国の頂点に君臨しているらしい。だから、国王だろうと貴族だろうと平民だろうと、間違っているのでは? と思ったら相手に伝え、それについて、一緒に考えようとするのだ。


 何故この考え方が、ルドア王子ルートのバッドエンドで明かされるかというと、エリエルが死刑に処されるからだ。

 日本人が作った乙女ゲームだからか、ラフテンシア王国は死刑に対して否定的である。

 悪者に罰を与えるのは被害者の為だが、基本は自分の行いを見つめ直し、反省を促すことで己の間違いに気付くことで、より良い未来の為に力を尽くしてくれるのではないか、という考えが根底にあるらしい。

 しかし、その考えがあっても尚、エリエルがヒロインに行ったことは許されざるものだとして、バッドエンドルートで死刑にされるのだ。


 それはルドア王子ルートで、エリエルがヒロインを殺してしまうからなのだが……今は別に関係ないな。


「いえ、私も出過ぎだ真似を致しました。申し訳ございません」


 そんな、中世ヨーロッパのような環境で日本寄りの意識を持っていたとしても、王族であるルドア王子意見したことには変わりないのだ。ここはもう一度謝っておいた。

 すると、本当に気にすることはないと言いながら、ルドア王子は苦笑いを浮かべる。うん。やっぱりイケメン。可憐なヒロインと並ぶと絵になるのに。何故ルドア王子の隣には、カイルが座っているのだろう。いや、別にカイルが悪いわけではないんだけれどね。

 何となく気まずくなったので、カイルとは目を合わせないようにしよう。


「さて、そろそろ話を本題に戻そうか。エリエルに今一度問うが、協力をしていただけるという認識で間違いはないか」


「はい。私に出来ることでしたら、協力を惜しみません」


 ルドア王子を真っ直ぐ見据えて応える。結局は、そう言うしかないしね。


「感謝する。協力と言っても簡単なことだ。エリエルは私と会場の中心で踊るだけで良い。君と私ならば、一時の間、皆の注目を集められる筈だ。その時間で母上は、ミズキ嬢と話が出来るだろう」


 その話を聞いて、ゲームにあったとある話の裏事情がこれなのか、と気が付いた。



 私はやっていないが、本来のゲームであれば既にエリエルからの嫌がらせを受けているヒロイン。

 学園で初めての夜会を経験するのだが、エスコートが居る筈もなくダンスもろくに踊れない。

 エリエルがヒロインに見せ付けるかのように、ルドア王子と完璧なダンスを踊り、周りから注目されているのを見ているしか出来ずに、壁の花と化していた所で、どこか見覚えのあるような女性に話しかけられる。

 学園での生活や他愛もない話をし、エリエル徒ルドア王子のダンスが終わる頃に、女性はヒロインの元を去る。後日、歴史の授業で出てきた現王妃様の写真が、夜会で出会った女性と同一人物だと気付く。といった内容だ。


 ヒロインが、ルドア王子以外の王族と初めて会うシーンでもある。

 ルドア王子ルートに進むのであれば、王妃様はそのままお義母様という立ち位置になり、他の攻略対象のルートに進むのであれば、婚約をする為に国王の承認を得なければならない為、協力してくれるお助けキャラのような立ち位置になるのだ。


 今になって気付いたが、王妃様をお助けキャラとして登場させるって、〈ドキラブ♡魔法学園〉は割と凄い設定を盛り込んでいるな。いや、割とメジャーか。所詮はファンタジー。その目線で居られる間は、何ら問題も疑問も感じないものなのだ。



「それではエリエル、夜会では母上の為にも、私の相手を頼む」


 ゲームに思いを馳せている間に、現実世界の時間が進んでいたらしい。当然か。

 ルドア王子がイケメン王道スマイルを私に向けた後、いつの間にか運ばれてきていた昼食を食べ始める。


 サリアとタリアは私が食べ始めるまで食べないつもりらしく、様子を窺うような、ちらちらとした視線を感じた。


「いただきます」


 礼儀作法は日本と同じ。いただきますと言った後、私は料理を口に運んだのだった。

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