絶滅
「あんなに透き通った海が、死の海なの!」
「殆ど魚もいないよ。
要はプランクトンも、魚の餌になる小さな生き物たちも、まるでいないから透明な訳さ」
なんとも絶望的な、美しさだ。
「あのサボテンは生きてるんでしょ?
あれのDNAを操作したら…」
「駄目々々」
いずなが言う。
「アフェリアを見ただろ。
軽々にDNAを弄って、それが、どこにどう影響するのか、百年、千年単位でみないと何も言えないんだ。
そうしていくうちに、正解の無いパズルゲームに陥って、世界から緑は消えて行った。
雑草だけを殺す、とか、収穫をニ倍にする、とか言っているうちに、誰にも、どうしようもなくなってしまったんだ。
一つの生物が消えると、それで培われていた、沢山の生物も同時に消えていった。
滅んでから慌てたって、再生なんて魔法でも出来ない。
消滅は掛け算で、凄い早さで累積していくんだぜ。
一つが滅ぶと五つが滅ぶ。
最初は無数の生態系の一であり、五だが、五の五乗は三一ニ五の種が滅ぶ事になり、それは、すぐ万を越えて兆になり、京となる。
今は、そんな世界なんだよ」
「じゃあ、あのモンスターたちは?」
「今となっては判らないのさ。
誰かが作ったのかもしれないし、自然発生したのかもしれない。
でも、エビマンゲツは、ほとんど食用だから、それ目的で作ったものが野生化した、と思うぜ」
と、いずな。
魔法では、どうにもならない事が多過ぎる…。
僕は、暗澹と思った。
海岸線は、白い波が本当に美しい。
海はあくまで透き通り、波音は穏やかだ。
ただ…
生物はいないのだ。
やがて山が終わり、僕らは内陸に向かって南西に飛んだ。




