第094話 三十分
全機会議 提出書面の写し
一、本書面の趣旨
本書面は第百七十五回に付したものになる。付した号の番号は本写しの頭に刷ってある。枚数は四枚であった。
趣旨は苦を減らす方法を量で示すことにある。量の単位は本書面の第二に定めた。示す先は当機構の全園とする。
本書面の趣旨を要約して個体へ示す手続は、置いていない。示した例も当機構に無い。本写しは当部門の綴へ収めた。
収めた綴の番号は本写しの裏に記してある。原本は当部門の別の綴に収めてある。
二、量
本件の措置により減じられる苦の量は、一個体あたり年に換算して示すことが出来る。示した数は本書面の別表に置いた。別表の欄は九つで、九つとも埋めてある。
九つの内訳は、痛み、飢え、寒さ、暑さ、拘束、待機、移動、処置、その他とした。繁殖の停止によって減る分は、九つのどれにも入れていない。増える苦の量を記す欄は、本書面に置いていない。置く旨の議も残っていなかった。
別表の合計の欄は本書面の末尾にある。合計の数は年に六百四十一であった。前年度の同じ数は六百五十八になる。
差は十七であった。差の出た事由を記す欄は、本書面の別表に置いていない。単位の定めは本書面の第二にある。
単位を改めた例は当機構に一件あった。
三、措置の別
本書面が挙げる措置は七つであった。うち二つは灯についてのものとした。残る五つは給餌、運動、清掃、記録、面会の各項になる。
灯についての二つのうち、一つを本回で実施するものとした。実施の順を定めた記載は、本書面に無い。繁殖の停止は本書面の第五に置いてある。
繁殖の停止の期間は第五の項の二行目にある。第五の項の字数は、本書面のどの項よりも少なかった。第五の項に別表は付いていない。付さない旨は第五の頭に一行で記してあった。
第五の項が挙げる期間は、当機構の全園について同じとする。
四、反対の書面
本書面に対する反対の書面は、本回で一通も付されなかった。付されなかった旨を記す欄は、本回の綴に置いていない。本年度に反対の書面が付された回は零回であった。
前年度は二回になる。うち繁殖の停止についてのものは零回であった。前々年度は五回であった。減った事由を記す欄は、本回の綴に無い。
数の推移を控えた書面も残っていなかった。
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目が覚めた時、房は白かった。
白は朝の色になる。私は起きて、天井を見た。
起きる時に、腕で体を押し上げる要りが出た。前は腹の力で起きられた。替わったのは五日ほど前になる。
替わった日を、私は数えていない。起きる前に、目を開けたままでいた時間がある。長さは数えていない。
数えなかったのは、白いことに驚いた分になる。
驚いた後で、数え直せるものではない。
白い灯は天井の隅にある。四角い覆いの中で、二本が並んで点いている。
覆いは硝子で、外側に埃が乗る。積もった分は光の中で影になる。
影は点と線で出る。
点は十四あって、線は二本ある。数えたのは三日前だ。
今日も数えた。点は十四のままになる。線は二本だった。
二本のうち、右が少し暗い。差は前からある。差は目で分かる。
器で測ることは出来ない。房に測る物が無い。
赤い灯は消えている。
落ちていることを、私は二度見て確かめた。赤い灯は天井の真ん中にある。白の二本とは離れていて、覆いも一つずつ付いている。
覆いの縁に細い溝がある。中の埃は取られない。
指の入らない造りになる。いつもなら、目が覚めた時はまだ赤い。白へ替わるのは六時になる。
六時に替わるのを、私は十日ほど数え続けた。
数え違えた夜は一度ある。
その夜は途中で眠った。落ちた分は、翌朝の勘定に入れられない。
私は床へ足を下ろした。足の裏が冷たい。
冷たさの強さは昨日から動いていない。床は夜のうちに冷える。冷えるのは石の分になる。
上に敷いてあるものは無い。
足を乗せてしばらく待つと、足の裏から石へ移る。終わるまでに三十ほど数えた。三十を過ぎると、冷たさが分からなくなる。
冷たさが消えたのではない。私が慣れた分になる。
寝床の布を捲って、下の一枚に手を入れた。紙は二枚とも昨日の場所にある。厚い一枚の縁が少し反った。
布の上へ乗っている分になる。薄い一枚は反らない。上から押さえられている分になる。
立って、格子の前まで歩いた。五歩で壁に当たる。
五歩目で息が一度上がる。上がり方は昨日より強い。
強くなったのは腹の下が前へ出た分かも知れない。前へ出た分を、私は測っていない。
測るには物が要る。房には布と器と紙と、隅の六つがある。
六つのうち、量を出せるのは秤になる。あれは物を載せる秤で、体を載せる造りではない。
戻って三歩。こちらを歩いても上がらない。
三歩のほうは壁が近い。手前で止まるので、息が上がる前に終わる。
私は寝床へ戻って、腹に掌を伏せた。下が温い。
温さの出る面が、前より広い。掌の一つでは収まらなくなった。両手を並べてみると、端が指の一本ぶん外へ出る。
はみ出た分は温くない。温いところの端が、腰の骨の手前から少し下がった。動いたのは三日ほど前になる。
下がった分は指の一本ぶんほどだ。
測ったのではなく、掌の形で覚えている。胸を押すと、遅れて奥が痛む。右は六つ、左は五つになる。
八日前より一つずつ増えた。
位置は内へ寄ったままだ。
寝床の布の重さが、腹の上で前より重い。二枚のままで、増えてはいない。
重く感じる私のほうが替わった分になる。布は替わらない。
昨夜の数を思い出す。動いたのは八つになる。十日前は六つだった。
二つ増えている。
増え方は毎日ではない。三日そのままで、四日目に一つ増えることがある。
これを私は二度見た。
二度とも四日目になる。三度目が来るかどうかは、これから数える。
間は四十四と五十一を数えた。他の六つは眠っている間に過ぎた。数えていない分は、私に残らない。
無いものを、私は勘定に入れない。戸の下の口が開いた。器が三つ入ってくる。
私は数を見て、床へ並べた。順は替えていない。
並べる間に、口の向こうで手が引かれた。速さは昨日と替わらない。
替わらないのは、来ている人が一人だからかも知れない。手で決めるのは無理になる。高さは測らなかった。書く場所が無い。
粥は温い。器の底へ掌を当てると、温さが二十ほど数える間もつ。
二十を過ぎると、器が私の手の温さへ寄ってくる。近づいたら、食べる時間になる。
粥へ粉を落として回す。それから食べる。回数は数えなかった。
食べ終えて、器を戸の脇へ置いた。三つとも重ねずに置く。
格子の前へ行って、管の縁に耳を当てた。金の縁が冷たい。
管は静かだ。向こうは眠っているらしい。
起きているかどうかを確かめる手を、私たちは持たない。叩いて返れば起きている。
返らなければ分からない。叩かずに待つことにした。これは決めごとの外になる。
私は見る窓の下へ立った。縁は目の高さより上にある。顎を引いて覗くと、覗ける先は廊下の突き当たりまでだ。
廊下の灯は四つ見える。四つの間の隔たりは、目で見て等しい。天井へ付ける寸法が決めてある。
寸法を私は知らない。等しいことを取っておく。四つとも点いている。
夜の間も落ちない。灯は朝の目印にならない。
廊下の壁に紙が貼ってある。
昨日までは何も無かった。貼った跡の周りに、薄い匂いが立っている。糊と紙が混ざった匂いになる。
匂いは廊下から入ってくる。戸の下の口の隙間を通る分だ。
嗅ぐと、房の匂いより新しい。房の匂いは乾いた土に近い。廊下の匂いは湿っている。
湿った分は乾く。切れるのは匂いも同じになる。昼までは残ると思う。
紙は三枚ある。一つの高さで、間を空けて並んでいる。
高さは私の目の位置より少し下だ。座って見上げる位置ではない。
間の幅は目で見て指の五本ぶんほどだ。紙と紙の隙は二つあって、二つとも幅が等しい。
私の房から読めるのは、一番右の一枚になる。他の二枚は角度で切れる。
切れる場所は毎回動かない。壁の面と見る窓の面の向きが決まっている分になる。
角度は顎で作る。顎を引くほど遠くが入って、上げるほど近くが入る。三枚を一度に読める角度は無い。
壁の面と見る窓の面が、平らに向き合っていないためになる。
向き合っていない分を、私は数で出せない。壁の外へ立つ要りがある。三枚は一つの刷りに見える。
字の並びが等しい。一つの刷りなら、書いてあることも動かない。三枚を貼る事由を、私は出せない。
字は大きい。刷りで、三行あった。
字の色は黒で、灰色に寄っていない。刷り立ての濃さになる。
字の高さは、私の指の一本ぶんほどになる。房の中の紙の字より大きい。
大きいのは、遠くから読ませるためかも知れない。私の房からは、目を細めても一枚しか読めない。
一行目は時刻について書いてある。二行目も時刻だ。
三行目が一番短い。三行目は日付になる。本日からと書いてある。
日付の下に余白がある。
余白の高さは字の二つぶんほどだ。三行目だけ字の間が広い。行の長さを他の二行へ揃えた分だと思う。
揃えると、三行が一つの四角に見える。四角の縦と横の比は、目で二対三になる。
本日と書いてあるが、その本日が何日かは書いていない。掲示を貼った日が本日になる。
貼った日を、私は今日と数えた。決めたのは私で、紙ではない。
一行目の時刻は五時三十分だった。二行目は二十一時になる。私は灯が点いていたことを思い出した。
目が覚めた時に白かった。
白かったのは、五時三十分に点いていたためになる。紙を貼りに来た人は、二人だった。私が起きる前に来たらしい。
二人と数えたのは、画鋲の入り方が二通りある分になる。三つは真っ直ぐで、一つが曲がっている。
一人で四つ入れたなら、曲がるのは手が疲れた最後になる。曲がっているのは右下で、貼る順の最後に当たる位置ではない。
来たのを、私は聞いていない。眠っていた分になる。
足音も、紙を伸ばす音も、私に残らなかった。手元には貼られた後の紙が残る。
画鋲は四つ使ってある。入っているのは四隅に一つずつだ。
画鋲の頭は白い。壁の色より明るい。離れて見ても四つの位置が出る。
四つを結ぶと長方形になる。上の辺が下の辺より少し長い。
長く出るのは下の二つが内へ寄っている分になる。寄りは指の一本ぶんほどだ。
右下の一つで、頭が浮いている。真っ直ぐに入らなかった分だ。浮いた分は、指の先の半分ほどになる。
他の三つは面まで入っている。浮いた画鋲のところで、紙が少し波を打っている。波は一つで、幅は指の二本ぶんほどだ。
波の下に影が出る。影は廊下の灯の向きで出る。
灯は四つとも動かない。影も動かなかった。
紙の下の端を見た。他の二枚より短い。
三枚は上の端で並んでいる。
揃わないのは下になる。右の一枚が、上へ寄って終わっている。差は指の三本ぶんほどになる。
切り口は真っ直ぐだ。破った跡なら縁が毛羽立つ。この端は立っていない。
真っ直ぐの度合いを、私は目で追った。端から端まで、波が一つも出ていない。
紙を折ってから切ると、折り目のところで少し段が出る。それも見当たらない。折らずに、一度で裁った跡になる。
裁つ物の刃は紙より長い。
刃で切った跡になる。切る前に何が書いてあったかは、切った先に残る。
残った先が何処にあるかを、私は知らない。私は顎の角度を変えて、もう一度読んだ。三行は三行のままだ。
増えも減りもしない。読み直しても、時刻は五時三十分と二十一時になる。
二つの時刻の間を、私は数で出した。十五時間三十分になる。
昨日までは十五時間だった。三十分ぶん延びている。
延びた三十分が何処に付いたのかは、一行目で分かる。点る側に付いた。消える側は動いていない。
二行目の数字は、昨日の掲示と等しい。昨日の掲示は、私の房からは見えない場所にあった。数字は前に一度読んで覚えた。
朝のうちに、私は紙の三枚を数え直した。三枚で替わらない。
数え直したのは、二度目に見た時に少なく見えた分になる。
私の目の分だった。
昼になった。糊の匂いは切れている。切れたのは、いつの間にかになる。
切れる時を、私は捕まえられなかった。
見る窓の下の隙間から、廊下の灯の分が入る。
差す幅は指の二本ぶんになる。
床では細い帯になった。帯の位置は昨日と違っていた。半歩ぶん、戸の側へ寄っている。
寄りを確かめるのに、私は床の継ぎ目を使った。継ぎ目は縦に三本ある。昨日は二本目の上に帯の端があった。
今日は二本目と三本目の間になる。
寄ったのは、廊下の灯の一つが替わった分かも知れない。数えると、灯は四つのままだ。
四つのうち、右から二つ目が少し明るい。
昨日は三つ目が明るかった。
替わったのは灯ではなく、私の立つ位置かも知れない。
私は動いていない。
昼のうちに、私は房の壁を端から端まで触った。
指の腹で撫でて進む。
撫でると、面の粗さが場所で違う。
管のところで指が一番滑る。
滑らかなのは、手が触れてきた分かも知れない。私が触るのは今日で何度目かも数えていない。管から音が来た。
一つだ。私は一つ返した。是が二度続く。
音は前より弱い。
金の管を通る音は、強さで距離が変わって聞こえる。
弱い音は遠く聞こえる。
それでも壁の厚みは替わらない。
厚みを、私は指の関節で叩いて量る。
返る音が低いほど厚い。
管のところだけ高い。
高い幅は掌の二つぶんになる。距離は前のままだ。壁は動かない。
二度目が来た。
二つになる。
否だ。
二つ目と一つ目の間が長い。
前は一つ数えるほどで続いた。
今日は三つ数えるほど空く。
私は二度返した。返してから、間を測った。向こうが返すまでに四つ空いた。
前は二つだった。
三度目が来る。
三つになる。
分からない、だ。三つ目の音は、三つのうちで一番弱い。
次を待つ間に、私は房の壁へ掌を当てた。管の壁は他より薄い。
薄いところは、叩くと音が高い。厚いところでは低くなる。
高いところの幅は、掌の二つぶんほどになる。その幅の中でしか、音は向こうへ行かない。
私は三度返した。強く叩かない。力を入れると、返す相手が合わせにくい。
合わせにくいことを、私は前に一度覚えた。
覚えた日は数えていない。弱い音を拾うには、格子の目の下で聞くのがいい。目の上では途中で消える。
拾いやすいのは、金の面が下で少し広がっているためかも知れない。広がりを、私は指でなぞって確かめた。なぞると、下が薄く外へ開いている。
指の腹で分かるほどしか無い。
私は耳を下げた。金の縁が耳たぶに当たる。触れたところが冷える。
冷えたままで次を待った。その間に、間の数を三度取った。
四つ、五つ、四つになる。前は二つで止まっていた。
「二つ叩くのがしんどい」
声が来た。管を通ると低い。それでいて、いつもより細い。
私は一度叩いた。是になる。
是で合っているかどうかは考えなかった。返す手が他に無い。
返るまでに六つ空いた。前は二つだった。
六つの間、私は管の縁に指を置いていた。指の下は動かない。
少し置いて、向こうが一つ返した。一つと一つで足りる。二つを使わない話し方を、この後で作ることになる。
作る手を、私は今日は持っていない。
持たない間は、一つで済む問いを出す。一つで済む問いは少ない。是か否かの問いは、否を返す時に二つ要る。
否を返さずに済ませるには、問いを替えることになる。やり方を、私は考えている。考えている間に、向こうが一つ返した。
こちらも一つ出す。
一つと一つが四度続いた。四度目で、私は手を止めた。止めたのは、続けると向こうが返し続けるためになる。
返すほうが要る力が大きい。昼の間、廊下に人は通らなかった。誰か来れば足音がする。
通らない日は、たまにある。数えたことは無い。夕方の器が来た。
三つある。数だけ見て並べた。
食べてから、器を戸の脇へ置いた。輪は残っている。
輪の径は測らなかった。その回を、私は昨日で終わりにしてある。
終わりにすると、翌日から見る場所が一つ減る。減った分は他へ回る。
終わりにしたのは、径が二日続けて同じだった分になる。二日で足りるかどうかは決めていない。
決めないままで止めた。その日を数に入れてある。
夕方から消灯までの間は長い。数えたことは無い。
数えないと決めたのは、途中で必ず眠る分になる。落ちると数が切れた。消灯まで、私は寝床に座っていた。
背を壁へもたれる。壁は昼のほうが温い。日が落ちると温さが引く。
引き始めるのは、灯が消えるより前になる。日の入りに合わせて引く。
日は房から見えない。目に入らないものに合わせて壁が冷える。
引く速さを、私は数えたことがある。掌を当てて百まで数えると、百のところで指先が冷える。
今日は九十で冷えた。十ぶん早い。
灯が消えた。二十一時になる。
消える前に一度、明るさが下がった。
そこから四つ数えて全部が消える。四つは動いていない。替わったのは点る側になる。
赤い灯が点いた。白から赤へ移る途中、壁が一度だけ薄い橙を持つ。
持っている長さは三つ数えるほどだ。
朝の側と同じ長さになる。二つを比べたのは今日が初めてになる。赤の下では、白い物が一番先に色を変える。
札がそうなる。布は遅い。厚みのある物ほど、色の変わり方が鈍い。
鈍くなるのは面の下まで光が入る分かも知れない。入った光は戻ってこない。
数える前に、掌を腹へ置いた。動きは来ない。
来ない間は、数えるものが灯のほうしか無い。私は数え始めた。
一つを息の一つ分と決めてある。そう置いたのはここへ来た日だ。
息の長さは日によって違う。ずれた分だけ数のほうが寄る。
寄った分をどう戻すかは決めていない。置いたところで直せる相手ではなかった。
数える間、目は閉じない。塞ぐと眠る。
落ちると数が切れる。千まで数えて、赤はまだ赤い。二千まで数えて、まだ赤い。
千と二千の間で、一度手を止めて格子を見た。管の中は静かだ。静かなのは、向こうが眠っている分だと思う。
眠っていれば叩かない。二千を過ぎると、数の名が口の中で滑る。転ぶと一つ飛ぶことがある。
飛んだかどうかを、後から確かめる紙が要る。私はそれを持たない。持たない。
飛んでいないことにして続ける。止めなければ数は増える。
途中で切れた。その場所は覚えていない。
途中で切れたことを、私は朝になってから知る。夜の側では分からない。次に目を開けた時、房は白かった。
白は朝の色になる。天井の二本が点いている。
右のほうが少し暗い。差は昨日と変わらない。
覆いの埃の点は十四のままだ。
線も二本になる。十四のうち三つは、覆いの縁へ寄っている。縁の三つは、光の中で細く伸びて見えた。
十四のうち、右へ寄った三つは間が詰まっている。寄り方も昨日と揃っていた。夜のうちに増えも減りもしない。
埃は房の外から来ないのだと思う。
灯が三十分早く点いた。その三十分を、私は眠って過ごしている。数えなかった分は、私の側に残らない。
床へ足を下ろす。足の裏が冷たい。
冷たさは昨日と変わらない。三十分ぶん早く起きても、床は同じだけ冷えている。
三十分では冷え方が替わらない。指に出るだけの差にならない。
その差を、私は数に持てなかった。取れるのは、動かなかったという一つになる。
私は見る窓の下へ立った。廊下の紙は三枚のままだ。
糊の匂いは残っていない。廊下の匂いが房の匂いへ戻っている。
戻ったのは、乾いた分になる。乾く時刻を、私は捕まえられなかった。
右の一枚の下の端も、そのままになる。画鋲の右下は浮いたままになる。
高さも昨日と揃っていた。誰も直しに来ていない。直す欄があるのかどうかを、私は聞いていない。
器を戸の脇へ寄せた。三つとも重ねずに置く。
寄せてから、私は房の中を歩いた。五歩と三歩になる。
五歩目で息が上がった。
強さは昨日と揃っている。揃っていることを、私は歩数の数え方で確かめた。上がる位置が同じなら、揃っていることになる。
位置は五歩目の後の半歩だ。この分は数に入れない。そう決めたのは前の房でになる。
歩いてから、格子の前へ戻った。管は静かだ。
私は一度叩いた。向こうは黙っている。
間を置いて、二度目を入れた。今度は返る。一つだ。
間は昨日より長い。数えると七つになる。昨日は四つだった。
三つ延びている。私は二度叩かなかった。それがしんどいと聞いている。
一つと一つで、朝の分は終わった。紙の三枚は、昨日と同じ場所にある。位置は目だけで確かめる。
目で確かめた分は、後から数に直せない。位置は数ではない。器が来る。
三つある。私は数だけ見た。
三つの音は、口を三度通る。三度目が一番遅い。遅くなるのは押し込む手が下から入る分になる。
下から入ると、器の底が口の縁を擦る。音が短く鳴った。器の底へ掌を当てた。
温さは昨日と揃っている。
中身を確かめる前に、私は寝床の布の間へ手を入れた。紙は二枚ある。
薄いほうを抜いて、床で伸ばした。三十四字は同じ並びだ。
紙は前より柔らかい。布の間で、私の体温を受け続けた分になる。
厚いほうは柔らかくならない。紙の質が別だ。
柔らかい紙は音が立たない。折らずに伸ばすと、めくる時にも鳴らなかった。
厚いほうは抜かなかった。動かすと戻す時に折れる。
二枚とも布の間へ戻して、私は器へ戻った。粥へ粉を落とす。速さは変わらない。
落ちる音は、粥の面の高さで変わる。高いところへ落とすと音が立つ。
器を傾けて、面の近くから落とすと音が消える。今日は音の立たない落とし方にした。
回してから、匙を口へ運ぶ。
回数は今日も数えなかった。数えないと決めたのは昨日になる。決めた事由を、私は書く場所を持っていない。
持たない。決めたことも消える。それでも、手のほうが覚えている。
覚えている手は、今日も同じ回数で止まった。回数は数えていない。
食べ終えて、器を並べ直した。左から粥と粉と汁だ。空になっても左右は入れ替えない。
そうしておけば、次の分の高さが一目で出る。
見る窓の下の帯は、今日も半歩ぶん戸のほうへ寄っていた。寄りは昨日と揃っている。
二日続けば、寄ったほうが元になる。帯の幅を、私は指の二本ぶんと数えている。今日も二本ぶんだった。
幅が動かないのは、隙間の高さが動かないためになる。隙間は戸の下にある。
戸は動かない。据わった物の下では、光の幅も動かない。
帯の端に指を置いた。先が明るくて、根元が暗い。
置いた指を、私はしばらく動かさなかった。動かさないでいると、明るいところと暗いところの境が指の上で動く。
動くのは灯ではない。私の指のほうが、息で少し動いている。
私は格子の前へ戻って、管の縁に耳を当てた。
何も来ない。当てたままで五十まで数えた。五十のところで耳を離す。
離した後で、金の縁の冷たさが耳に残った。もつ時間は前より短い。紙の下の端を、もう一度見た。
三枚のうち一枚だけが上へ寄って終わっている。上の端は三枚とも揃っている。貼る側が上へ合わせる。
揃える先を上と決めた者がいる。名は紙の面に出ていない。揃っていない分を、私は指の三本ぶんと数えた。
数えた分は、どの紙にも載らない。紙に無いものは、私の側にだけ残る。切り落とされた分は、私の側にも残っていない。
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灯の点消の時刻の変更の掲示
一、改める時刻
灯の点る時刻を六時から五時三十分へ改めた。消す時刻は二十一時のままとした。改めた後の点る時間は十五時間三十分になる。
改める事由を記す欄は、本掲示に置いていない。事由を問われた場合の扱いも定めていなかった。本年度に問われた例は三件あった。
非常の灯の点る時間は、その分だけ短くなる。
短くなる旨を記す欄も置いていない。
二、実施の日
本日から実施するものとした。前日までの時刻による記録との継ぎ方は、本掲示では触れていない。継ぎ目の日の記録を二つに分ける手続は、当園の綴に見当たらなかった。
分けた例も残っていない。前日までの時刻による記録は、そのまま綴じ置くものとする。綴じ直した例は本年度に二件あった。
二件の事由の欄は空のままになっている。
三、掲示の方法
本掲示は各区画の廊下へ貼るものとした。貼る枚数は一区画につき三枚であった。三枚とした事由は本掲示に記していない。
貼る高さは床から百五十センチとした。個体の側から読める高さは、当園の判断によるものとした。貼った旨を記す欄は当園の綴に置いてある。
読まれた旨を記す欄は置いていなかった。読まれた回数を数えた例も無い。貼る者は二名であった。
二名の別を記す欄は当園の綴に無い。貼り終えるまでに要した時間は当園の日誌へ記した。剥がす時期を定めた記載も、本掲示には置いていない。
剥がした例は本年度に十九件であった。
四、用紙
本掲示の用紙は所定の寸法によるものであった。縦四十二センチ、横三十センチとした。寸法の定めは本年度の様式による。
本件で貼った用紙の縦は三十七センチであった。差の五センチについての記載は、本掲示の綴に残っていない。裁った者を記す欄も無い。
用紙の在庫を数え直した月は本年度に四度あった。四度のうち三度は数が合っていた。合わなかった一度の差は七枚であった。
裁つ前の用紙の所在も、当園の綴では確かめられなかった。用紙の受け入れの記録は月ごとに綴じている。本掲示の様式を最後に改めたのは令和二百七年であった。
改めた箇所は寸法の欄のみになる。




