第092話 三つ目の欄
全機会議 招集の通知
一、会議の別
本会議は書面による。第百七十四回とする。本年度に開いた会議は本件で六度目になる。
出席という語は、本通知では用いない。用いない旨を記した書面は、当部門に残っていなかった。前の書式では用いていた。
改めたのは令和二百三年の三月であった。改めた事由の欄は、当時の綴では空のままになっている。議事録の保存の年限は無期になる。
回を追って番号を付す。番号を付け直した例は、当部門の綴に見当たらない。本会議より前の回の番号は、第百七十三回であった。
回と回との間隔を定めた記載は、本通知に置いていない。前の回からの日数は十九日になる。本年度の六度の間隔は、短いもので十一日、長いもので五十二日であった。
二、付する書面
各号は書面を一通ずつ付する。一通の枚数は四枚を上限とした。下限は置いていない。
一枚のみで足りるとした例は本年度に三件あった。枚数を数える者は、記録を取る者とする。数え違いがあった場合の扱いは、本通知では触れていない。
枚数の内訳を控える欄は、議事録の側に置いていなかった。合計の枚数のみを記すものとした。本年度の合計は、少ないもので二十九枚、多いもので四十四枚であった。
書面の様式は各号の任意による。手書きを認めるものとした。手書きの例は本年度の六度で、いずれも同じ号によるものであった。
三、提出の期限
書面の提出の期限は前日の正午とする。期限を過ぎた場合の扱いを記した記載は、本通知に無い。本年度に過ぎた例は二件であった。
二件とも受け付けている。受け付けた事由を控えた書面は、当部門に残っていなかった。期限より前に出した書面を差し替える手続は、本通知の裏面に記してある。
差し替えた例は本年度に一件であった。差し替えた前の書面は返さない扱いとした。返さなかった書面の綴を、当部門では別に立てていない。
四、欠けた場合の扱い
書面を欠いた号がある場合は、その旨を議事録へ記すものとした。
欠いた号の主張を他の号が代わって述べる扱いは、置いていない。本年度に欠いた例は零件であった。零件である旨を記す欄は、本通知に置いていない。
判は各号が自ら押すものとした。判を欠いた書面の扱いは、本通知では定めていなかった。本年度に判を欠いた例の数を、当部門で数えていない。
本通知を最後に改めたのは令和二百三年の三月であった。改めた箇所は第一の条のみになる。
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六時に綴じ室へ入る。鍵は私が開ける。
戸の建て付けは下が擦れる。開ける時に一度、閉める時に一度。音は同じ高さだ。
室の温度は十三度になる。壁の温度計は目盛りが縦に並んでいて、赤い柱が十三と十四の間で止まっている。下の目盛りのほうが近い。
窓は北を向いている。硝子は一枚しか入っていない。
外の光は入るが、日は入らない。そういう室では紙が焼ける。
台は二つある。
長いのが綴じ台で、短いのが読む台になる。表に板の目が縦に走っている。手を置くと、目の谷に指の腹が乗った。
板の色は端が濃い。人の手が触る場所で色が抜けている。落ちた形は横に長い楕円になる。
私は道具を並べる。順は決まっている。錐。
紐。鋏。糊。
判。朱肉。左から右へ置く。
錐の柄は木で、握るところが細い。削った分ではなく、使った分になる。紐は麻でできている。
巻いたまま置いてある。一巻きで四十件ぶん足りる。前の巻きは十一日もった。
鋏は刃が短い。
紙を切る鋏で、紐は切らない。
麻を切る鋏は室の隅の箱に入れてある。糊は瓶で来る。
蓋を開けると匂いが立つ。米の匂いに近くて、少し酸い。
匂いは指へ移る。一度移ると夕方まで消えない。手を洗っても、洗った直後に紙を触ると戻ってくる。
紙のほうにも残っている。
判は二つある。受けの判と、綴じの判だ。
丸い面が受けで、四角い面が綴じになる。
朱肉は一つで足りる。肉の面は真ん中が窪んでいる。私は端から取った。
中央を掘ると、次の人が困る。次の人が誰かを、私は知らない。前の人が端から取っていたことは、窪みの形で分かる。
手を膝の下へ入れて温める。
十を数えるほど入れておく。
冷えた指は紙の端を捲れない。六時二十分に、廊下の灯が点いた。
端から順に点く。綴じ室の前は四つ目になる。
私は戸を細く開けて、廊下を見る。灯は四つとも点いている。五つ目から先はまだだ。
朝の廊下は音が無い。七時を回ると、廊下に足音が立つ。
台へ戻る。読む台の上に、昨日の綴が一つ残っている。第百七十三回の分だ。
紐の結び目は私が結んだ。やり方は一つで、輪が二つ出る。
輪の長さを揃えるのが難しい。昨日の分は左が指の半分ぶん長い。
直そうとして、やめた。直すと結び目が緩む。一度ゆるんだ綴は棚で開く。
棚は室の北側に六段ある。上から二段目までが本年度だ。三段目から下は前の年になる。
一番下の段は空いている。一段は空けておくものと決まっている。
そう決めた者の名を、私は聞いていない。
二段目に本年度の綴が五つ並んでいる。
背の幅は同じではない。厚いものと薄いものの差は、指の一本ぶんほどある。
厚いのは三月の分で、薄いのは八月の分だ。厚さは枚数に付いて動く。私は数えなくても目で分かる。
背に貼る札は自分で切る。寸法は縦二センチ、横六センチと決めてある。切った端が斜めになると貼り直す。
本年度の五つは、五つとも貼り直していない。前の年の分には、貼り直した札が二つある。
貼り直した札は糊が二重になって、少し盛り上がっている。七時に運搬の係が来た。
戸口で止まる。中へは入らない。
箱を床へ置いて、受けの紙を差し出す。私は判を押す。受けの判のほうだ。
係は紙を持って帰る。言葉は要らない。この受け渡しに言葉を使ったことが、私には一度も無い。
箱は木で、蓋は紐で縛ってある。その結び方は係の側の決まりになる。
私の側の決まりではない。紐を解く。
結び目は三つあった。解く順は上からになる。
中に書面が入っている。折らずに重ねてある。一番上が第一号で、一番下が第十二号だ。
号の順に重ねる決まりになる。私は上から一通ずつ取り出して、読む台へ並べる。字の頭が私を向くほうへ揃える。
十一通ある。数え直した。
十一で変わらない。欠けているのは第九号になる。箱の底まで見ても、第九号の分が出てこない。
私は箱を傾けて、底をもう一度見た。底に木の粉が少し溜まっている。
欠けた号がある場合は、その旨を議事録へ記す。その欄は綴の三枚目にある。私は三枚目を出して、欄の位置を確かめた。
欄は横に長い。字は五つほど入る。
書く前に、時計を見る。七時十四分だ。
期限は昨日の正午だから、もう二十日ぶんほどの余裕は無い。欄へ字を入れかけて、手を止めた。戸の外に足音がする。
運搬の係が戻ってきた。手に一通持っている。箱に入れ忘れたものになる。
係は戸口で差し出して、そのまま帰った。今度も言葉は無い。
紙の端が少し折れている。片方の角だけが折れている。
折り目は一度で、往復していない。第九号の書面だった。これで十二通になる。
私は三枚目を戻す。欄は空のままだ。
欠けなかったのだから、書くことは無い。遅れて来た旨を控える欄は、綴の何処にも見当たらなかった。
枚数を数える。一通ずつ、指で捲って数える。
四枚が四通ある。三枚が五通。
二枚が二通。一枚が一通になる。
合わせて三十七枚だ。上限は一通につき四枚で、超えたものは無い。下限は置いていない。
一枚のみで足りるとしたのは第十二号だった。その一枚は、上の三分の一しか字が無い。下の三分の二が白い。
白いところに折り目も無い。
書いてから折らずに来ている。二枚の二通は第二号と第八号だ。二通とも一枚目の裏まで字が続いていて、二枚目は表で終わっている。
二枚目の裏に何も無い書面は、綴じると厚みが揃わない。私は間に薄紙を一枚足す。足した薄紙を数える欄は、綴の側に置いていなかった。
三枚の五通は、第四号から第六号までと、第十号と第九号になる。五通とも一枚目の頭に日付があって、その下に一行あけてある。
揃っているのは、一つの刷りの版から来ている分になる。版の別を綴の側では数えない。
手書きの一通を分ける。第七号だ。
他の十一通は刷りになる。字の太さが揃っていて、行の間も等しい。第七号の一通は、字の太さが場所で変わる。
字は右へ寄っている。行の頭が揃っていて、行の尻が少しずつ上がっていく。
傾きは二度ほどだ。墨の濃さも一定ではない。
書き始めの二字が濃くて、そこから薄くなる。八字ほどで、また濃くなる。
筆へ墨を含ませ直した回数が、その濃淡で数えられる。四枚で三十一回になる。私は数えたところで、数えたことを書く欄が無いのに気づいた。
そこで数えるのをやめた。
十一時を過ぎると、北の窓の光が一度だけ強くなる。外の建物の硝子に当たった分が返ってくる時間だ。強いのは十五分ほどになる。
その間だけ、台の上の字が読みやすい。私は細かい字をそこへ寄せて読む。
寄せて読むと、目の疲れが夕方まで持つ。十五分が過ぎると、光は元の高さへ戻った。
昼は台を離れる。決まりではないが、座ったままだと腰の右が固くなる。
室の隅に立って、両手を後ろで組む。そのまま肩を引くと、背の真ん中が鳴った。
場所は毎日同じになる。湯は廊下の突き当たりで汲める。器を持って歩き、戻ってくるまでに灯を六つ通る。
湯は熱い。器の縁が持てるようになるまで、二十ほど数える。その間に、手のひらが先に温まった。
温まると指の腹が紙に吸い付く。冷えている時より捲りやすい。その代わり、二枚を一度に捲ることが増える。
どちらがましかは、その日の枚数による。今日は三十七枚だ。中身は読まない。
二度読む決まりも置いていない。私が読むのは、綴じるのに要るところだけになる。
要るのは三つだ。号の番号と、枚数と、判の有無。
順を決める。読む順は号の順ではない。枚数の多いものから読む。
多いものから読むと、後のほうで手が楽になる。誰かがそう決めたわけではなく、私がそうしている。
四枚の四通から始める。第一号と第三号。第七号と第十一号になる。
第三号の四枚を捲る。行の頭に丸が付いている。
丸は項の別を示す。項は九つあった。
「停止」の字を数える。
九箇所ある。項の数と同じだが、項ごとに一つずつではない。三つ目の項に三箇所あって、五つ目と六つ目の項には一箇所も無い。
数えたのは、判の押し忘れが字の密なところで起きやすいためになる。密なところは目が滑る。第三号の判は四枚目の右下に押してある。
面は丸い。朱の乗りが薄くて、縁の一部が切れている。
切れているのは左の上だ。判を傾けて押すとこうなった。
第十一号の四枚を捲る。こちらは行の頭に丸が無い。字が続けて詰めてある。
判は四枚目の左下だった。右下ではない。押す位置の定めを、私は見たことが無い。
第七号の四枚を捲る。手書きの分だ。
一枚目の上に日付がある。そこだけが刷りの字に近い。
書き慣れた手つきになる。二枚目から字が少し大きくなった。
三枚目でまた戻る。四枚目は一枚目と同じ大きさだ。
判は四枚目の右下にある。朱の乗りが厚い。
押した後で指で押さえた跡が、朱のへりに一つ付いている。第一号の四枚を最後にした。四枚とも刷りで、行の間が他のどれより広い。
一枚目に数の表がある。欄は六つで、六つとも埋まっている。二枚目にも表がある。
こちらは欄が十二あって、埋まっているのは十一だ。
空いているのは下から二つ目になる。空いた欄に横線は引いていない。白いままだ。
三枚目は字だけの頁になる。表は無い。行は四十二ある。
裏まで続いているかを見た。裏は白かった。
字だけの頁は綴じる時に丸まりやすい。表のある頁より墨が少ない。
紙が乾いた形へ戻ろうとする。私は三枚目を台へ伏せて、上へ判の箱を置いた。置いておくと平らになる。
四枚目を捲る。上の半分が表で、下の半分が字だ。
下から三行目に、他と違う書き出しの行がある。頭が一字ぶん下がっている。
下がっている行は、この四枚で一つだけだ。私は一度、目を上へ戻した。上の行は表の続きの説明で、下がった行から書き方が変わる。
行を読む。目を通すのは要るところだけと決めてあるが、下がった行は位置が要るところに近い。
「記録の一件について、当時の綴の提出を求める」
それが行の全部になる。次の行に日付がある。令和百九十六年四月。
その次の行に数がある。当機構の全園で一件。
その次の行に番号が二つ並んでいた。
二つは同じ番号だ。
同じである旨の説明は付いていない。二つ並べて、その下に線が一本引いてある。線の長さは、番号の二つぶんより少し短い。
私は四枚目を伏せた。
それから判の位置を見る。判は伏せた側の裏にある。もう一度めくる。
めくる時に、下がった行がまた目に入った。読む気は無い。目のほうが位置を覚えている。
覚えているのは、四枚目の下から三行目という位置だけだ。
数なら持てる。
判は右下にあった。面は丸い。朱の乗りは普通だ。
求めがある書面は、綴の別のところへ写す。移す先は採決を受ける様式になる。様式は室の棚の三段目に束ねてある。
私は椅子を引いて、束から一枚抜いた。
様式の紙は綴の紙より厚い。
指で弾くと音が高い。
採決の別を記す欄が三つ並んでいる。横に三つで、上に小さく数字が振ってある。一、二、三。
一の下に「可」と刷ってある。
二の下に「否」と刷ってある。
三の下は白い。
刷りの字が無い。
私は手引を出した。手引は綴じ室に一冊ある。表紙が布で、角が丸くなっている。
目次を見る。
様式の項は四十一頁だ。
四十一頁を開く。
採決の別の説明が十四行ある。
一の欄について三行。
二の欄について三行。
残りの八行は、記入の仕方と控の扱いになる。
三の欄についての行は無い。
私は頁をもう一枚めくった。四十二頁は別の様式の説明だった。
戻って四十一頁の下も見る。註は付いていない。
求めは三つ目の欄へ入った。一つ目は可、二つ目は否になる。
三つ目が何であるかは、手引の何処にも書いていない。
綴じ紐は二本使う。一本では真ん中がたわむ。
穴は四つ開ける。上から一寸のところに一つ、下から一寸のところに一つ、その間を三等分して二つになる。錐で開ける。
三十七枚を一度に開けると、下のほうの穴が斜めになる。私は十二枚ずつ三度に分けて開ける。
最後の一枚だけが余る。この一枚は上の束へ足す。開けた後で、穴の縁を指でならす。
ならさないと紐が引っ掛かる。ならすのに使うのは親指の腹だ。爪を使うと紙が毛羽立つ。
毛羽が立った穴は、二度目に紐を通す時に分かる。抵抗が一段だけ増える。
増えた分を無理に押すと、紐が裂ける。
一度裂けると継げない。初めから通し直す。紐を通す前に、判を数えた。
十一ある。第一号から第十二号まで並べて、押してあるのは十一だ。押していないのは第九号になる。
遅れて来た一通だった。
私は第九号の書面を持ち上げて、裏を見た。裏にも無い。四枚の何処にも朱が乗っていない。
判を欠いた書面の扱いを、私は手引で探した。四十一頁は採決の別で終わっている。
目次に判の項がある。八十七頁だ。
八十七頁を開く。判についての説明が七行ある。
各号が自ら押す。朱肉は室の備え付けを用いる。
押す位置についての定めは置いていない。欠いた場合のことは、七行の何処にも出てこない。
私は書面を元の位置へ戻した。戻した後で、綴の三枚目を出す。欠けた号がある場合の欄だ。
第九号は書面を出している。欠けていない。判だけが無い。
この欄は書面のための欄になる。判を受ける欄ではない。私は欄を空のままにして、三枚目を戻した。
倉へ行く。求めのあった綴を探すためになる。
倉は同じ階の西の端にある。綴じ室から歩いて、灯の下を九つ通る。
九つ目の灯が点いていない。先月からそのままだ。
替えの札を出して、返事を待っている。その一つぶんだけ、床の色が違って見える。
実際に違うわけではない。目が暗さに追いつかないためになる。
倉の戸は重い。押すと下の縁が床を擦る。その音が長い。
中は紙の匂いがする。糊のより古い。埃と、乾いた木が混ざる匂いだ。
目録は入口の台に置いてある。表紙が硬くて、開くと勝手に閉じる。私は左手で押さえて右手で頁を捲る。
台の高さは腰より少し上だ。立ったまま読む造りになっている。
前に椅子があったらしく、床に四つの窪みが残っている。窪みの間隔は、私の靴の長さの二つぶんほどになる。
年の順に並んでいる。令和百九十年の行から探す。
一年に一行のこともあれば、四行のこともある。行の数は綴の数になる。最初の三年は、順に一行と二行と一行だ。
指で押さえながら下へ追う。三年目の次が二行で、その次が一行になる。百九十五のところで三行に増えた。
三行目の下を見る。
そこが百九十七の一行目になっていた。私は指を戻した。百九十五の三行目の下は、百九十七の一行目だ。
頁の下を見る。頁の番号は百四十一だ。次の頁をめくる。
百四十三と刷ってある。
私はもう一度戻して、百四十一の裏を見た。裏は白い。
番号の刷りもそこで切れている。紙の厚みを指で確かめる。
厚みは他の頁と同じだ。二枚がくっついているのでもない。
目録を閉じた。表紙が自分で戻る音が、倉の中で一度響く。
台の下に古い目録の束がある。前の版になる。私はその束の上から三冊目を出した。
同じところを開く。百九十五の三行目の次は、百九十六の一行目だった。行はある。
中身は三つだ。綴の番号と、預けた部門の名と、年月になる。
綴の番号を控えて、棚を見に行った。番号の頭の二桁で棚の段が決まる。
段は北の壁の五段目だ。私は端から番号を追う。
番号は続いている。一つ前の番号があって、一つ後の番号がある。間の一つだけが抜けている。
抜けた分の隙間も無い。両側の綴が寄っている。
いつ寄ったかは、綴の背の埃で分かる。背の埃は両側とも厚さが揃う。片方が薄いということも起きていない。
私は指を綴と綴の間へ入れて、奥を触った。奥に当たるのは板だ。板の面に埃が乗っている。
厚みは棚の他の場所と同じだった。綴じ室へ戻る。九つ目の灯は点いていない。
戻ってから、様式の三つ目の欄をもう一度見た。白いままだ。
欄の高さは四分ほどある。字なら二つ入る。
私は筆を持たなかった。
書く物が決まっていない欄に、字を入れる決まりも無い。様式を綴の一番上へ置いた。園の側が最初に見る紙は、束の一番上になる。
紐を通す。上の穴から入れて、下の穴で折り返す。二本目は逆から通す。
通した後で、束の背を台へ二度打ちつける。紙の端が揃う。
揃ってから結ぶ。目は一つで、輪が二つ出る。
輪の長さを見る。今日は右が指の三分の一ぶん長い。昨日より近い。
綴じの判を押す。面は四角い。押す位置は表紙の左下と決まっている。
朱肉の端から取る。取り終えたら、肉の面をもう一度平らにならす。
判を紙へ当てて、上から親指で押さえる。時間は二つ数えるほどだ。
長く押さえると滲む。離すと音がする。紙から判が剥がれる音になる。
窓を見る。外はもう暗い。北を向いた窓は、暗くなるのが他の室より早い。
硝子に室の中が映る。出るのは台と、台の上の判の箱と、私の肩から上になる。
顔の細かいところは映らない。硝子が一枚で、向こうが暗いだけの映り方だ。
私は一度、映った先へ手を挙げた。向こうの手も揃って挙がる。
確かめる用があったわけではない。時計は十九時を回っていた。
灯を点けたのは十六時ごろになる。点けた時のことを、私は覚えていない。
点けながら枚数を数えていた。勘定の間のことは、後から出てこない。署名の欄は綴の最後の紙にある。
欄は一つで、横に長い。自署によるものとされている。判で代えることを認めた例が、本年度に四件ある。
私は判のほうを取った。四件目までは他の者の分で、五件目が私になる。
判の面を見る。氏名は彫っていない。入っているのは四字だ。
朱肉へ当てて、紙へ押す。当てている時間は二つ。離す。
面の四字が紙の上にある。
私は綴を棚の二段目へ入れた。左から数えて六つ目になる。本年度の六度目の綴だ。
入れてから、背を揃える。指で押して、他の綴と面を合わせる。
合わせた後で、一番下の段を見た。空いている。
道具を戻す。順は朝と逆になる。朱肉。
判。糊。鋏。
紐。錐。
右から左へ戻すと、置いた場所が朝と揃う。同じにしておくと、明日の朝に迷わない。
糊の瓶の蓋を閉める。その前に匂いを嗅いだ。朝より弱い。
瓶の口に糊が固まっている。爪で落とすと、粉になって台へ落ちた。台を布で拭く。
布は台の下に掛けてある。拭くと板の目に沿って筋が残る。
筋は乾けば消える。乾くまでの間だけ、板の色が濃い。
十二という数が、今日は二度出た。号の数が十二で、二枚目の表の欄も十二だった。表の欄の十二は、埋まっているのが十一になる。
十一という数も二度出た。判の数と、表の埋まった欄の数だ。
二つは別のことを数えている。同じ数が別のところから出るのは、珍しくない。数は元を持たない。
持たない数を並べるのは私の癖になる。並べたものを受ける欄が、綴の側に一つも無い。
綴が求めるのは合計の一つだけになる。合計は三十七だ。
綴じ紐の余りが台に落ちている。長さは指の二本ぶんだ。
鋏で切った端が、片方だけ斜めになっている。切る時に紐が動いた分になる。
私は余りを拾って、紙の箱へ入れた。箱には前の余りが溜まっている。
溜まった分を数えたことは無い。数えても入れる欄が無い。
箱は月に一度、下の階へ下ろす。行った先で何になるかを、私は聞いていない。
聞かなくても回る。
動いている間は、聞く用が立たない。穴を開けた時の粉も、台の端に少し残っていた。白くて、指で押すと潰れる。
潰れると跡が付く。跡は布で拭けば取れる。私は拭かずに置いた。
明日の朝、乾いてから拭くほうが取れる。台の端に、朱肉の粉も少し落ちている。判を離す時に飛んだ分になる。
朱の粉は白い粉より小さい。指で押しても潰れない。布で押さえると布の側へ移る。
布はもう朱の色をしている。途中で染まって、そこから先は変わらない。
戸を閉める。下の縁が擦れる。
音は朝と同じ高さだった。廊下の灯は九つのうち八つ点いている。九つ目のところで、私は一度足を止めた。
止めたのは、暗いところの床の色を見るためになる。昼と同じだ。
鍵を掛ける。掛け終えてから一度、把手を引いて確かめる。把手は動かない。
二度確かめてから、廊下を歩き出した。
歩いている間に、下がっていた一行を思い出した。行の頭が一字ぶん下がっていた。
字ではなく、下がり方を覚えている。下がり方は、深さで持てる。
深さは一字ぶんだ。二字でも三字でもない。
下がった行の終わりに、二字の言葉がある。二字は行の下の端から数えて三つ目と四つ目になる。
最後の一語は「求める」だった。
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個体数調整の様式
一、採決の別
採決の別を記す欄は三つとする。一を可、二を否とした。欄の幅は三つとも等しい。
三の欄に記入すべき事項を定めた記載は本様式に無かった。本様式の手引にも置いていない。本年度に三の欄へ記入のあった例は零件であった。
零件である旨を記す欄も、本様式には無い。三の欄を設けた事由を控えた書面は当部門に残っていなかった。設けたのは令和二百九年の刷りからになる。
前の刷りの様式は二欄であった。刷り替えた枚数は千二百であった。
二、園が受ける手続
採決の結果は本様式をもって園へ送るものとした。送るまでの日数は五日以内と定めた。日数は送った日から数える。
届かなかった場合の扱いは本様式では触れていない。本年度に届かなかった例の数を当部門で数えていなかった。園の側が受けた旨を返す手続は置いてあった。
返さなかった例は本年度に七件であった。
七件について督促を出した記録は当部門に残っていない。
三、記入の欄
記入の欄は九つとした。会議の別。年月日。
採決の別。対象の区分。数。
園の別。記録を取った者。受けた者。
備考になる。数の欄に係る記載は他の様式の数と突き合わせるものとした。合わなかった場合の扱いは定めていない。
本年度に合わなかった例は四件であった。備考の欄に記入のあった例は本年度に二件であった。二件とも同じ園によるものになる。
四、控の扱い
控は園の側で作るものとした。控の保存の年限は二年と定めた。年限は令和二百八年の刷りで五年から二年へ替えた。
年限を過ぎた控の処分の方法を記した記載は本様式に無い。処分した旨を返す手続も置いていなかった。当部門の側で控を作る扱いは令和二百年に廃している。
廃した事由の欄は当時の綴では空のままになっている。
五、署名
本様式には記録を取った者の署名を要するものとした。
署名は末尾の欄へ自署によるものとした。欄の幅は横に十センチとした。判の押印をもって代えることを認めた例は本年度に四件あった。
認めた事由を記す欄は本様式に置いていない。本件の欄には判が押してあった。判の面に彫ってあるのは氏名ではない。
彫ってある字の数は四になる。
記録の係




