第081話 点の位置
登録の番号の様式に係る規程(抄)
桁と点 六桁・端から三つ目と四つ目の間
二つの番号の別 次項による
分ける必要が生じた場合 当該の部門の判断による
一、桁と点
登録の番号は六桁とする。点は端から三つ目と四つ目の間に置くものとした。この様式を定めたのは令和百六十二年である。
以後、点の位置を改めた例は零件であった。
桁を改めるための起案も、当機構では扱っていない。
一の二、字体
番号に用いる字体は一種とした。刷りと手書きとで別の字体を用いる扱いは置いていない。手書きで記した番号を刷りへ移す際の手順は、別の書面によることとしていた。
二、二つの番号の別
登録の番号のほかに、施設の側で用いる個体の番号がある。
二つは桁も点の位置も同じであった。二つを分ける記号を付す扱いは置いていない。付すよう起案した記載も残っていなかった。
二つのいずれであるかは、番号を載せた簿冊の側で判る扱いとしていた。
二の二、簿冊の側で判る扱い
前項の扱いは、簿冊の表紙の題によるものとする。
表紙の題を欠いた簿冊の扱いは定めていなかった。題を欠いた簿冊の数は、本年度に三冊であった。三冊はいずれも現場の部門が備えたものになる。
三、照会を受けた場合
番号の様式について照会を受けた場合は、桁と点の位置のみを答えることとした。それ以上を答えた例は本年度に零件であった。答えなかった旨は照会の受付簿の欄へ記した。
当該の欄に記入のあった照会は本年度に二十九件になる。
三の二、照会の相手方
照会の相手方の別を記す欄も置いてある。
二十九件のうち、施設の側からのものは十一件であった。
残る十八件は施設の外からになる。外からの十八件について、相手方の区の名を記した例は本年度に零件であった。
四、分ける必要が生じた場合
二つの番号を分ける必要が生じた場合の扱いは、当該の部門の判断によるものとする。
判断の基準を定めた書面は、本規程のほかに置いていなかった。
四の二、生じた例の数
必要が生じた例の数は、当機構では数えていない。
数える欄を設けた記載も無かった。施設の側で数えた例があるかどうかは、当機構では確かめていない。
五、番号の写
番号の写を求められた場合は、区の当番の備える控によることとした。
当機構の窓口で写を交付する扱いは置いていない。控の様式は各区の側で定めるものとする。様式を揃えるよう求めた記載は、本規程に無かった。
五の二、控に載せる範囲
控に載せるのは、当該の区に住まう者の分とした。区の外にある者を載せた例は本年度に四件になる。四件はいずれも婚姻による転入の前の分であった。
転入の前の分を載せる扱いを定めた記載は、本規程に置いていない。
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朝のうちに、私は紙の位置を確かめる。
通知は板の上にある。板は寝るところの脇で、床から手のひら一つぶん高い。
紙は角を四つとも合わせて、板の上へ置いてある。上に石を一つ載せた。石は小屋の外で拾ったものだ。
平たくて、片面がざらついている。石の厚みは、指の一本ぶんに足りない。重さは掌に載せて分かるほどある。
色は灰で、日に当てると縁が白く見える。
濡らすと縁の白さが消えた。
乾くと、また出てくる。私は二度濡らして、二度とも戻るのを見た。
ざらついた面を下にすると、紙が動かない。試したのは九日前になる。
九日の間に、風で二度ずれた。
二度とも右の下の角が浮いている。もとから折れていた一つになる。
角の内側に、細かい皺が寄っていた。私はその角を、指で押さえて戻す。押さえた形はそのまま残る。
通知の字は六の項まである。私は下から二行を読む。朝に一度で、夜には開かない。
下から二行の字は、上の項より小さい。
刷った版が違う。
一の項から五の項までは字の高さが揃っている。六の項だけ低い。
低い分、行と行の空きが広く取ってある。広さは指の腹ほどになる。
私はそこへ爪を当てて、幅を覚えた。覚えた幅は、女の人の紙の折り目の幅と近い。近いだけで、揃ってはいない。
板の下には桶が入れてある。前に空けたのは昨日になる。屋根の漏りは八月に入ってから減った。
雨が降っていない。日を数えると、今日で十一になる。
水そのものは、減っていない。
減らないのは、下の川から入りがあるためになる。小屋の下は水の際で、面は板の隙間から見える。面の高さは、七月の終わりから指二本ぶん下がった。
下がり方は毎日違う。四日かかって一本ぶん下がる日もある。一日で半分ほど落ちる日もあった。
下がる日は前の晩が暑い。
私は板の節の穴から、水の面を見る。穴は小さく、目を寄せないと入らない。穴の縁に印を付けてはいない。印が無くても、岸の石の並びで分かる。
下がると、岸の石が並んで出てくる。並んだ石には白い縁が付いている。
縁は水の跡だ。触ると粉が指に移る。
出ている石を数えると、今朝は十九になった。
七月の終わりは七つだった。増えた十二のうちの四つは大きい。ほかは掌に載る。
大きい四つは、並びの真ん中に寄っている。端に並ぶのは小さい石ばかりだ。端の石は水が動くと転がる。
大きい四つは動かない。
天井の草の束は十一のままにしてある。八月に足していない。弾くと、十一とも音が高くなった。七月に生だった四つも乾いている。
私は起きる。体を右へ回してから、肘で押す。
肘を突く場所は板の目に沿わせる。逆らうと掌の付け根が痛い。
起きてから、天井の低いところへ頭が当たらないように屈む。低いところの高さは肩の幅ほどになる。戸のところまで来ると立てる。
腰の後ろの重さは、落ちきるまでに七を数えた。
八月の初めは八だった。数が減ったのは、起き方を変えたためになる。膝を先に立てる。
胸の脇の張りは、左のほうが強いままだ。服の上から当てると、指の当たる面が固い。固さの縁は前より外へ寄っている。
幅は指の一本ぶんほどだ。
腰の骨の上のあたりが、服の内で当たるようになった。当たるのは坐った時になる。立つと離れる。
坐り方を変えると当たらない。私は片方の膝を少し外へ開いて坐る。開く幅は掌の半分ほどになる。開きすぎると腰の後ろへ来た。
朝の吐き気は八月に入ってから一度も来ていない。無くなった日から数えると、七月二十九日で十八日になる。
五月二十八日から数えると、今日で八十日だ。八十という数は割り切れる。
二でも四でも五でも十でも割れる。
三では割れない。七でも割れない。
私は割れる数と割れない数を、指で分けておく。置く手は決まっている。右手が割れるほうで、左手が割れないほうだ。
顔を洗う。桶の水は温い。夜のうちに冷えていない。
洗う手は二度掬う。一度目で目のまわり、二度目で口のまわりを洗う。
口のところは、洗ってから手の甲で拭く。掌では拭かない。
掌で拭くと、水が袖まで入る。袖が濡れると乾くのに昼までかかった。
髪を括ってから、服の帯を締める。帯の位置は腰の骨の下に落としたままにする。
結び目は前ではなく、少し横へ回す。寄せる先は右になる。
右へ回すと、坐った時に膝へ当たらない。左だと当たった。
寝る時にも、そこへ来る。私は右で通している。
小屋を出る。外は明るい。日の当たる幅が、七月より狭くなっていた。
道を登る。
歩幅は狭いままで、広げていない。登り切ると家が見える。数は十四で、変わらない。
途中に曲がりが二つある。一つ目は右へ、二つ目は左へ折れる。二つ目の角が急になる。
角のところは土が削れて、石が出ていた。
出た石は三つある。三つとも上の面が平らになっている。
足で均されたものになる。踏む足の数は数えられない。
曲がりの外側には草が伸びていた。丈は膝の上まである。
刈った跡は無い。内側は踏まれて、丈が足の甲までになる。
広場は乾いている。土の色が薄い。踏まれた場所に、まだ濃さが残る。
濃い場所は真ん中に寄っていた。
幅は八月の初めより狭い。雨が降らない日が続いている。乾いた土は、踏んだ跡が浅く残る。
広場の隅の台は、脚を畳んで壁へ立てかけてあった。畳んだ脚の角は浅い。倒れないところで止めてある。
三軒目の家の戸は開いていた。中から煮炊きの匂いが出てくる。匂いは麦が強い。
漬けたものは弱い。
女の人は土間に立っていた。手には布巾がある。絞ってある。
水は落ちない。皺が縦に寄っていた。
寄り方は片側だけ強い。片手で絞る癖になる。
「あんた、来たね。今日は当番の家へ行くから、支度をしておくんだよ」
私は戸口で待つ。土間の内は外より暗い。
窓が一つしか無く、その一つも高いところにある。目が慣れるまでに、二十ほど数えた。
数えるのは息の長さで測る。息を吐ききるまでを五とする。四度吐くと二十になった。
慣れる速さは日によって違う。外の日が強い日ほど遅い。今日は四度で足りた。
慣れると、棚の上のものが見えてくる。鍋が二つ、笊が三つ、あとは瓶だ。五つ並んでいて、背の高さが二種になる。
高いのが三つで、低いのが二つある。並べ方は高い低いの順ではない。
左から高い低いと来て、次に高いが二つ続く。一番右がまた低い。
瓶の口には布が被せてあった。
布の色は五つとも違う。留めてある紐は五つとも同じ色になる。結び目はどれも右へ寄っている。
結んだ手が一人だと分かる。結び目の高さは、口の縁から指一本ぶん下がっていた。
鍋の一つは底に煤が付いている。もう一つは新しい。
そちらの縁に、まだ削りの跡が残っていた。跡は細かい横の筋になる。
笊は三つとも編みの目が違う。細かいものが一つ、粗いものが二つある。粗いものは、目の大きさが揃っていた。
同じ手で編んだものになる。
「三つ目の紙はね、うちらのは当番のところにあるよ。あんたのは無いけどね」
女の人は懐から紙を出した。懐から抜く時、一度裏返している。その面には何も書いていない。
裏返した理由をこの人は言わなかった。私も訊いていない。
裏返す手つきは速い。手の速さは布巾を絞る時と揃っていた。
紙は二つに折ってあった。目は真ん中にある。
端が少し破れていた。下の側に入っている。上の側は切ったままの縁だ。
破れの長さは爪の幅ほどある。破れた口は毛羽立っていた。
向きは表から裏へになる。破いたのは表の側からだ。
紙の厚みは通知より厚い。持つと、折り目のところで自分から立つ。通知は折らずに置いてあるので、比べるのは指の腹の感じになる。
紙の色は白ではない。
少し黄に寄っている。縁のところで強くなる。真ん中はまだ白に近かった。
「これがうちのだよ。去年、当番のところで写してもらった。判は当番が押すのさ」
紙の上のほうに字が並んでいる。並びは横で、縦には入っていない。私はそこを見る。
字は刷りではない。手で書いてある。書いた者は一人だ。
線が太い。線の終わりが丸く止まっている。
止まり方は、はねを付けていない止め方になる。全部の字がそうだ。筆ではなく、太い鉛筆で書いたものになる。
紙の下のところに判が一つ押してあった。判は丸い。中の字は三つで、外の輪には切れているところが一箇所あった。
切れは右の下だ。押した時に浮いた分になる。
この紙の上に、押し直した跡は無い。一度で済ませてある。
女の人は紙を私の手前へ寄せた。置いてから、指を離す。
私は数の並びを見る。点が一つ入っていた。
点は真ん中より左だ。左と右で、数の数は釣り合っている。
点の形は丸い。書いた者が筆を止めた跡が、少しだけ濃い。濃いところの径は、ほかの字の線の太さより大きい。
径は倍ほどになる。押し当てて、そこで止めた跡になる。
六つの数のうち、二つは同じ字だった。並んではいない。一つは左の端で、もう一つは右の真ん中にある。
字の高さは六つとも揃っていた。下の端が一本の線に乗る。揃えるための罫は引いてない。
手で揃えたものになる。
「あんたのはどうするんだい。無いものは、何処かで作ってもらうのかい」
私は答え方を持っていない。作る手を聞いていない。聞ける相手も、いま前にいる一人だけになる。
女の人は紙を畳んで懐へ戻した。畳む向きは、出した時と逆になる。
戻す先は右の懐だ。抜いた時と変わらない。
入れてから、この人は服の上を一度押さえた。押さえた場所は胸の下になる。
押さえると、紙の角が布の上へ出る。浮いた形は三角に近い。
当番の家までは、広場から歩いて数えると六十二歩ある。行きは女の人が先に立った。
この人の歩幅は私より広い。私は二歩に一度、合わせるために足を詰める。短くするのは右の足になる。
道の左に用水が通っている。
水の音は途中で一度切れた。切れる場所に板が渡してある。板の下で水が細くなっていた。
板の幅は足の長さの倍ほどある。渡る時、女の人は真ん中を通った。私は端を歩いた。
そちらは板の撓みが小さい。
当番の家は広場から左へ入って、四軒目にある。屋根は他より低い。戸は引き戸で、下の溝に砂が溜まっていた。
溝の砂は片側に寄っている。開ける手の側に集まっていた。開ける度に掃き寄せられた跡になる。
掃き出した跡は無い。開ける時、音が二度に切れる。一度目で止まり、二度目で開く。
土間は三軒目の家より高い。上がり框が無くて、床がそのまま続いている。
足を上げる高さが違うので、私は一度つまずきかけた。
当番の人は奥にいた。
この人は口を開かない。開かないのは今日に限らない。
顔をこちらへ向けたのは一度になる。
向けてから、また手元へ戻した。
手元には縄がある。
編みかけのものが膝の上に置いてあった。
編み目は途中で太さが変わっている。
途中から先が細い。
後から編んだところになる。
そちらの縁は毛羽立っていなかった。
私たちが入ると、棚から冊子を一つ下ろした。棚から抜く時、両手を使う。冊子は厚い。
背に紐が三本通っていて、真ん中の一本だけ色が違う。違うのは掛け直したためになる。日を書いた紙は付いていない。
当番の人は冊子を台の上へ置いた。
それから、表紙を開く。表紙の裏には何も刷っていない。次の頁から字が始まる。
紙は薄い。下の頁の字が透けて見える。透けるのは行の太いところに限られる。
頁の左に家の名が並んでいた。名の右に番号が入っている。番号は縦に並ぶ。
行の高さは揃っていた。
揃えるための罫は引いてない。目で揃えたものになる。下へ行くほど、右の端が少しずつ内へ寄っていた。
寄り方は一行につき髪の幅ほどだ。一頁で爪の幅になる。
一頁に十四行ある。家の数と合っていた。
私は上の行から順に見た。番号はどれも同じ長さだ。
私は桁を数える。六つあった。点は三つ目の次にある。
十四行とも、点は同じところにある。
点の大きさは行によって違った。上の点が大きい。
下へ行くほど小さくなる。書く速さが上がった分になる。
十四行のうち、点の下がわずかに滲んでいる行が三つあった。滲んだ行は続いていない。上から五つ目と、八つ目と、十三つ目になる。
滲みは下へ寄っている。紙を立てて乾かした跡だ。
当番の人は指で一つの行を押さえた。指の当たったのは上から三つ目の行になる。
押さえた指の爪は短い。切った縁が真っ直ぐになっている。
切った跡は一度で、途中で角を残していない。女の人が横から覗く。見てから、頷いた。
「そこがうちだよ。去年もその前も、ずっと同じところに載ってるからね」
当番の人は頁をもう一枚めくる。次の頁も十四行あった。
二枚目の行は、一枚目より字が薄い。書いた年が違う。
薄いのは鉛筆の芯が違うためになる。同じ手で書いてあった。字の止め方が一枚目と揃っている。
はねを付けていない。薄いほうには、下に線を引いた行が二つある。
線は横に引いてあった。線の下の数は読める。
二つの線は長さが違う。上のほうが短い。
上の線は数の途中で止まっていた。先の二桁に線は掛かっていない。
定規を当てた線ではない。
手で引いてある。途中で太さが一度変わった。押す力が抜けたところになる。
当番の人は二枚目を指で二度叩いた。叩いた場所は線の引いてある行になる。それから冊子を閉じる。
閉じる時、紐が台に当たって短く鳴った。
私は冊子の背を見る。背には題が刷ってある。字は四つだ。
字の高さは背の幅の半分ほどある。上下の空きは同じではない。
上のほうが広い。下は字の端まで一分ほどしか無かった。
題の下には何も無い。年も、区の名も入っていない。刷りの色は黒で、掠れていなかった。
背の紙は表紙より濃い色をしている。貼ってあるのは背になる。剥がれかけているところが下の端にある。
剥がれの幅は爪の半分になる。当番の人は冊子を棚へ戻した。置く場所は抜いた棚の段になる。
棚の高さは私の肩より上だ。当番の人は爪先を上げなかった。
当番の人は私たちを戸まで送らなかった。座ったまま縄へ戻っている。
編む手は途中から速くなった。上がる場所は決まっていない。
外へ出ると、日が真上より少し西へ寄っていた。影の向きが、来た時と変わっている。来た時、影は道の右へ落ちていた。
今は左になる。変わったのは日になる。道は動いていない。
広場の裏の作業場に人がいた。木を割る音がしている。
一つ置きに二度鳴る。割れる木と、割れない木がある。
割る人は二人いる。一人が斧を持ち、もう一人が木を立てる。
木を置く人は、手を引く速さが決まっていた。引いてから、斧が下りるまでに二つ数える。二つの間は毎回変わらない。
割れた木は右へ積む。
割れなかった木は左へ寄せてあった。左の山が低い。高さは膝の下までになる。
右の山は私の腰まである。積み方は縦ではない。横へ寝かせてあった。
鵜飼はその脇に立っていた。手には何も持っていない。
この人を見るのは四十日ぶりになる。服は六月と変わっていない。袖の丈が合っていない。
丈の違うのは右の袖になる。
右の袖は肘の下で一度折り返してある。返した幅は二重になる。
左は折っていない。手首まで真っ直ぐ落ちている。
靴は前と違う。底の厚みが増していた。
付け足した厚みになる。縫った糸の色が本体と違う。
糸は黄で、本体は黒に近い。縫い目の数は片足で十二あった。
「札の話は聞いた。当番の控は見たか。見たなら形は分かるだろう」
私は頷いた。首を縦に一度動かす。それから、指を六本立てた。
立てたのは両手になる。右が三本で、左が三本だ。間を少し空けて立てた。
空けた幅は指一本ぶんある。鵜飼は立てた指を見た。それから、目を作業場へ戻す。
「番号の無い者に番号は付かない。付けるには先に世帯が要る」
私は世帯のことを言おうとした。口を開くところまでは動いている。言う前に、この人が続けた。
「世帯があっても、生まれた場所の紙が要る。そっちは俺にも作れん」
鵜飼は自分の紙を出さなかった。懐に手も入れていない。
この人の懐は左が膨らんでいる。中身は帳面に近い。
角が四つとも出ている。厚みは指の二本ぶんほどになる。
膨らみの位置は前より下だ。六月に見た時は胸の高さにあった。
作業場の音が止まった。切れてから、また始まる。
始まりの一度目は音が小さい。二度目から元の高さに戻った。
止まっていた長さは、二十を数えるほどになる。止まっている間、二人は何も言わなかった。斧の刃を布で拭いている。
拭くのは片面ずつだ。表を三度、裏を三度で終わる。
「当番は写すだけだ。向こうが直せば、こっちの控も変わる」
私は向こうが何処かを訊かなかった。この人は指も差さない。
鵜飼は道へ向かって歩いていく。歩幅は広い。右の足のほうが土を強く踏む。
踏んだ跡は左より深く残った。深さは指の腹が入るほどになる。
私はその跡を見ている。
そのうちに風が来て、縁が崩れた。崩れるのは上の縁からだ。底の縁は残った。
風は西から来た。今朝は東から来ていた。変わる時刻を私は見ていない。
風の来る草が、一度に倒れた。向きは揃っている。
起き上がり方は揃っていない。戻る速さは丈で決まる。長いものほど遅く戻った。
女の人が私の腕を軽く叩いた。それから、家を指す。
「帰るよ。日が落ちる前に薪を運んでおくんだ。今日の分はまだだからね」
私は薪の置き場へ行く。三軒目の家の脇にあって、道からは板の陰になる。積んだ列は六つで、そのうちの二つが手前から取ってある。
取ってある二つは、奥まで空いてはいない。手の届く分が抜けている。空いた跡は、上から見ると三日月に近い。
一番上の横向きの一本は、まだそこにあった。切り口の白さが少し落ちている。日に当たって落ちたものになる。
私は下の列から、順に取る。一度に持つのは四本になる。両腕で抱えられる数だ。
五本にすると、腰の後ろへ来る。
抱える位置は胸の下になる。上へ寄せると顎に当たった。
下へ寄せると腕が伸びきる。腕が伸びると、途中で持ち替えることになる。
持ち替えると一本落ちる日がある。落ちるのは一番外の一本だ。一番外の一本が、抱える腕から遠い。
運ぶ道は片道で九歩ある。抱えた数が四本でも三本でも変わらない。
戸口へ置いて、また取りに行く。三度で、今日の分になった。
三度目の最後の一本に、皮が残っていた。皮の縁は反り返っている。
反った内側は色が薄い。私は指で剥がさなかった。
運び終えてから、私は手を服で払う。皮の粉が付いていた。
粉は白い。払うと、服の色が変わる。色の変わる幅は擦った長さで決まる。
手のひらの真ん中に、薪の角の跡が残っていた。跡は三本ある。
二本は平行で、一本は斜めに入っている。斜めの一本は、持ち替えた時に付いたものになる。
日が落ちる。屋根の影が土の上を伸びていく。伸びた先が、薪の置き場の手前で止まった。
止まる場所は昨日より手前になる。日が短くなっている。
私は小屋へ戻る道を歩く。帰りは行きより歩幅が広くなった。自分で決めたことではない。
途中の曲がりで、朝に見た石をもう一度見る。三つとも動いていない。平らな面に、日が斜めから当たっていた。
斜めの光で、面の傷が見えた。傷は細くて、向きが揃っている。削れた向きになる。
小屋の戸を開ける。中の匂いが出てくる。
板と水の匂いだ。朝より薄い。日の間は戸を閉めていたのに、薄くなっている。
薄くなるのは、外の匂いを持ち帰った分になる。服に付いたのは木の粉と、土と、当番の家の紙の匂いだ。
通知は板の上にある。石も動いていない。私は今日見た物を並べる。
当番の家の冊子の背の紐が三本で、真ん中の一本だけ色が違う。女の人の紙は二つ折りで、下の側だけ破れていた。
鵜飼の懐は左が膨らんでいて、中身は帳面に近い。薪の一番上の一本は横を向いたままだ。
次に人を並べる。当番の人は一言も言わなかった。
女の人は三度話した。鵜飼は三度言い切った。
私は誰にも訊き返していない。
指を六本立てただけになる。最後に数を並べる。当番の冊子は一頁に十四行で、二枚目にも十四行あった。
線の引いてある行は二つ。番号はどれも六桁で、点は三つ目の次にある。私の番号は、頭に字が一つ付いて、後に数が四つ並ぶ形だ。
その形は今日見た紙の何処にも無い。
私は板の上の紙をもう一度見る。角の一つは、押さえた形のままになっている。
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地区の住民の控に係る当番の覚(抄)
写しの元 機構の側の名簿による
照合した数 十四
控の保存の年限 五年
一、写しの元
本控に載せた番号は、機構の側の名簿から写した。
写しは当番の家で行うこととしている。写す際に用いた紙は回覧の紙の裏であった。裏を用いる扱いは過去の当番から続いている。
一の二、写す時期
写しは年に一度行うものとした。時期は当番の替わる月による。本年度は四月に行っている。
四月のうちのどの日に行ったかは、本覚に書いていない。
二、照合した数
本年度に照合した数は十四になる。
十四は当区の家の数と合っていた。
家の数と番号の数とが合わなかった年があるかどうかは、本覚では確かめていない。前の当番へ問い合わせる扱いも定めていなかった。
二の二、線を引いた行
本控には線を引いた行が二つある。二つとも二枚目にある。線の下の数は読める状態のままにしてある。
線を引いた者と、引いた日を記す欄は本控に置いていない。線を引いた事由を口で引き継ぐ扱いとしている。引き継いだ旨を記した紙は残っていなかった。
三、控の保存の年限
本控の保存の年限は五年とした。
年限を過ぎた分の扱いは、当番の判断による。判断の別を記す欄は置いていない。年限を過ぎた分を残した例が過去にあったかどうかも、本覚では確かめていなかった。
三の二、表紙の題
本控の表紙には題を刷ってある。題は四字とした。区の名を入れる扱いは置いていない。
入れるよう求めた例も残っていなかった。
四、区の外にある者
区の外にある者の分を載せた例は、本年度に一件あった。
当該の一件は婚姻による転入の前の分になる。
転入の後は当区の分として載せ替えた。載せ替えた日を記す欄は本控に無い。
四の二、番号を持たない者
番号を持たない者を本控に載せた例は、これまでに無かった。載せる場合の扱いを定めた記載も置いていない。当番の側から機構へ問い合わせた例も残っていなかった。
五、写しの元となる名簿
本控の元となる名簿を、当区で備える扱いは置いていない。
備える用が生じていないものとみられる。




