第079話 伏せた札
入園の待機名簿に関する事務の心得(抄)
組の分け方 次項による
順の付け方 組の中で付ける
名簿の作り直し 年に二度
一、組の分け方
名簿は申込の順によらないものとした。
居住区分と世帯の人数で先に組を分ける扱いとする。組の数は六としていた。六の別を記した表は、本心得の末尾に付してある。
二、組の分け方の根拠
組の分け方は別に定めるところによるものとしていた。当該の別に定めるところを、当窓口では備えていない。備えるよう求められた例は本年度に零件であった。
求めがあった場合の扱いも置いていなかった。
二の二、組を移す場合
世帯の人数が変わった場合は、組を移すものとしていた。
移した例は本年度に四件になる。
移した事由を記す欄は本心得に置いていない。四件の内訳を控えた書面も残していなかった。
三、順の付け方
順は組の中で付けることとした。
組をまたいで比べる扱いは置いていない。同じ組の中で順が並んだ場合は、先に受け付けた側を上にするものとしていた。並んだ例は本年度に十九件。
四、申込に添える書面
申込には二点を添えさせることとした。居住区分の証明と、世帯の人数の記載になる。二点のいずれかを欠く申込は、組を立てないものとした。
組の立たない申込を控える欄は、本心得に置かなかった。
四の二、記入の欄
申込の様式に置いた欄は九つになる。
氏名、居住区分、世帯の人数、続柄、受付の年月日、受付をした者、組、順、備考とする。
備考の欄に記入のあった申込は本年度に六件であった。六件の内容は一つの欄へまとめて入れていた。
五、名簿の作り直し
名簿は年に二度作り直すものとした。作り直しの月は四月と十月とする。前の名簿は作り直しの日に破棄する扱いとしていた。
破棄の方法を定めた記載は本心得に無い。
破棄した日は当窓口の側で覚えている扱いとした。
五の二、順位の告知
順位は当窓口の掲示によって知らせることとした。
個別に知らせる扱いは置いていない。掲示は組ごとに分けて出す。組の別を掲示に記す扱いは定めなかった。
五の三、掲示の期間
掲示は次の作り直しの日まで出しておくものとした。途中で差し替えた例は本年度に二度ある。差し替えの事由を記す欄は本心得に置いていない。
差し替えた日を控えた紙も残っていなかった。
五の四、順を訊かれた場合
自分の順を口で訊かれた場合は、掲示の側を見るよう言うこととした。
口で答える扱いは置いていない。
答えた例の有無を数える欄も本心得に無い。数えるよう求められた例も残っていなかった。
六、番号札
来所した者へは番号札を交付するものとした。札は帰る際に回収する。回収に至らなかった札の扱いを定めた記載は、本心得に無い。
六の二、札の数
札は五十枚を備えるものとした。
減った場合の補いは当窓口の判断による。補った例は本年度に一度あった。補った枚数を控えた記載は残していない。
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私は戸を開ける前に、札の箱を台の上へ出す。箱は木で、蓋は無い。
中の札は五十枚ある。数え直すのは月の初めと決まっている。
箱の底には布が敷いてある。前の係が敷いたものになる。端が擦れて、糸が出ている。
私は替えていない。土間は朝のうちが一番冷える。石が夜の分を持ったままだ。
私は手を膝の下へ入れて温める。
温めてから、紙を触る。
冷えた指は紙の端を捲れない。札は竹を削ったものだ。
表に数が焼いて入れてある。裏には何も無い。
焼き印の深さは札ごとに違う。古い札のほうが浅い。浅いのは十二枚ある。
数えたのは去年の暮れになる。持つと軽い。一枚の重さは、指で分かるほどではない。
私は札を数の順に並べ直す。しなくても回るが、手が動く。
並んでいると、戻ってきた時に何処が空いているかが目で分かる。台の右に判が三つある。受付の判と、組の判と、順の判だ。
三つとも柄の長さが違う。受付が一番長く、順が一番短い。
柄の頭には木の目が出ている。受付の判だけ、目が斜めに走っていた。長さが違うのは、作った年が三つとも違う。
判の面は三つとも欠けていない。順の判だけ、縁に朱が溜まっている。
朱肉は一つで足りる。
三つとも同じ肉を使う。肉の面は真ん中が窪んでいる。私は端のほうから取る。
蓋を開けると匂いが立つ。油の匂いで、指へ移ると昼まで消えない。
押す順は決まっている。受付が先で、組が次だ。
順は最後になる。
順を先に押した紙は、後で組を直せない。
直せない紙は差し替える。控は残さない扱いになる。
本年度に差し替えたのは二件になる。どちらも私の手違いだ。手違いの数は私の頭にだけ残る。
日締めの表も綴りも、数だけで足りる形だ。
私は指にゴムを嵌める。右の人差し指と中指の二本になる。
ゴムは筒の形で、内に細かい溝が入っている。溝は横向きだ。新しいうちは溝が立っていて、擦れてくると寝る。
寝たものは紙を掴めない。指が滑った日に替える。嵌めるのは指の付け根までではない。
第一関節の下で止める。そこで止めると、紙を捲る時に爪が当たらない。
ゴムは薄いほうが紙を取りやすい。厚いほうは長く持つ。
私は薄いほうを使って、月に二度替えている。窓の外は明るい。土間の三和土に、戸の隙間の光が二本入っている。
二本の幅は違う。上の一本が広い。板の反りが上のほうで大きい。
棚は三段ある。上が綴り、真ん中が様式の束、下が空になる。
下の段は前から空だ。何を入れる段かを、私は聞いていない。
段の奥に釘が二本残っている。何かを掛けていた跡がついている。
私は棚の綴りを一冊下ろす。組の表が挟んである冊子だ。表は一枚で、罫が縦に六本と、横に四本引いてある。
六本の縦が組の別になる。横は区分の大きな括りになる。
升目のうち、字の入っていない升が二つある。空いている理由を、私は聞いていない。
腰掛は待合の壁に沿って置いてある。長さは大人が四人掛けられる。
板は真ん中が減っていて、両端は減っていない。人は真ん中から座る。両端に来る者は少ない。
二人で来た者は、必ず並んで座る。間を空けた例は覚えている限りで二度になる。
腰掛の下には何も置いていない。前は籠が二つあった。籠は去年の四月に外した。
理由は掃除だと聞いている。外した跡の板が、そこだけ色が薄い。丸が二つ並んでいる。
戸を開ける前に、外の音を聞く。足音が三つ分ある。
三つのうち一つは重い。太いのは大人で、軽いのは子どもか年寄りになる。
当たる時と当たらない時がある。私は当てにいっていない。
私は戸を開ける。最初に入ってきたのは三人だ。三人とも札を受け取ってから腰掛へ行く。
札を渡す時、私は数を読み上げない。
渡すだけで済ませる。読み上げる扱いを聞いたことがない。前の係も渡すだけだった。
三人のうち二人は、札を掌に握って腰掛まで持っていく。残る一人は膝の上へ置いた。その札は表を上にしている。
一番の札を持った者が台の前へ来る。私は申込の様式を出す。
「一番の方は居住区分の証明と、世帯の人数の記載と、二点をこちらの台の上へ先に出してください」
この人は懐から紙を二枚出した。どちらも折り目が四本ある。四本の折り目は、縦に二本と横に二本になる。
持ち歩くとこの折り方になる。折り目の交わるところが薄い。そこは指で押すと透けた。
私は透けたところを避けて紙を持つ。避けないと破れる。私は区分の欄を見る。
それから人数の欄へ移る。
人数は五になる。区分は三の二だ。
区分の証明の紙には、判が二つ押してある。上が発行の判で、下が確かめの判になる。
下の判は薄い。薄いものは月に何枚か来る。
薄くて読めない時は、備考の欄へ書く。今日は読めた。組は表で引く。
三の二で五人なら、第四組になる。表の升は縦が六つで、横が四つある。二十四の升のうち、二つが空いている。
空いた升に当たる申込は、本年度に一件も来ていない。入った場合の扱いも表に書いていない。
私は組の判を押した。朱肉へ当てるのは二度と決めている。
一度では薄い。三度当てると滲む。
それから順の判を押す。順の数は組の今の一番下の次になる。今日は二十七になった。
この人は台の縁に手を置いたままでいる。その手は動かない。爪は短い。
指の背に日の跡がある。境は手首のところで切れていた。それから話し始めた。
話の中身は毎日ほとんど同じだ。飯のことを言う人が一番多い。
次に多いのは医者のことになる。三番目が冬のことだ。四番目に、子の行く先のことを言う人がいる。
私は数えたことがある。四月から今日までで、飯が百十一になった。
医者が七十四で、冬が五十二だ。子のことは三十一になる。
言い方はそれぞれ違う。中身は寄っている。
飯のことを言う人は、必ず量の話をする。次に来るのは、切れる時期の話だ。
医者のことを言う人は、掛かった年を言う。年の後で、掛からなかった年の話をする。
冬のことを言う人は屋根から入る。屋根の後は水の話へ移る。
子の行く先のことを言う人は、数を言わない。この四つのうちで、数の出ないのはこれだけになる。
合わせても来所の数と揃わない。二つ以上言う人がいる。私はその数を何処へも書いていない。
入れる欄が無い。申込の様式の欄は九つある。氏名と居住区分と世帯の人数、続柄、受付の年月日と受付をした者、それから組と順と備考になる。
備考の欄は狭い。字を入れると三つか四つで埋まる。備考へ書くのは、区分の証明の写が薄くて読めない時と、印が欠けている時になる。
本年度に備考を使ったのは六件だ。
どれも印か写のことを書いている。六件の内容は一つの欄へまとめて入る。分けるよう言われたこともない。
私はこの人の話を聞き終わる。それから、様式をこちらへ引き寄せた。
引き寄せる時、台の面と紙が擦れる音がする。長さは短い。
台は木で、真ん中が少し窪んでいる。低いところは紙の当たる場所と重なっていた。
「一番の方の受付は済みました。順の別のほうは、組の掲示の欄と日付の欄で見ていただくことになります」
この人は頷く。それから、もう一度台の縁に手を置いた。
二度目に置いた場所は、一度目と少しずれている。ずれたのは私の側へだ。置いた手はすぐに離れる。
それから戸のほうへ歩いていった。
札は返してきた。私は箱の一番のところへ戻す。入れる時、札の向きを表に揃える。
揃えるのは私の手の癖になる。向きは私の側で決めている。二番の札を持った者が来る。
この人が持っているのは区分の証明だけになる。世帯の人数の記載は懐から出てこない。
組が立たない。私は次の来所の日を言う。
「二番の方は世帯の人数の記載のほうが要ります。居住区分の証明の紙はこのままの形で通ります」
この人は紙を懐へ戻した。入れる前に、二つに折り直す。
折り直す手つきは早い。何度も同じ折り方をしている手になる。
折り直した紙の角が、懐の布から少し出ていた。この人も話をした。
中身は冬のことを言っている。話の間、私は様式を台の上へ置いたままにしておく。
片づけると、話が途中で止まる。止まると、この人はもう一度初めから言う。
置いたままのほうが、終わるのが早い。冬のことを言う人は、必ず屋根の話をする。それから水の出る場所の話へ移る。
私は聞いている。終わってから、次の来所の日をもう一度言った。この人は札を返して出ていった。
三番の札の者が来る。この人は二点とも揃っていた。揃えて持ってくる者は、紙を二枚重ねて出す。
重ねる順は区分を上にする。順が逆の例は少ない。今日は一件も無かった。
区分は五の一で、人数は二になる。第一組だ。
第一組は人数の少ない組になる。順の数も少ない。
今日で十四になった。第三組は一番長い。
今日で八十九になる。四月からの伸びは十一だ。
伸びの数を並べると、第三組と第四組が近い。第一組と第六組は伸びない。伸びない組の掲示は、月に一度も書き足さない月がある。
私は判を三つ押す。その間、この人は何も言わない。
言わない人は月に何人かいる。
私はその人の様式を、他の様式より丁寧に揃える。
揃えても、順は変わらない。揃えるのは私の手の癖になる。誰かに見せているわけではない。
台の下の抽斗に、揃えた様式を重ねて入れる。抽斗は二つで、右が本日の分だ。左には前の日の分が入っている。
左の分は昼に上の綴りへ移す。
昼までに来たのは十九人だ。
十九のうち、二度目の来所が六人になる。二度目の人は札を受け取る手が早い。初めての人は、渡す手が引かれるのを待ってから取る。
かかる間は一つ数えるほどで済む。組の立った申込は十一件になる。二点のどちらかを欠いたのが八件だ。
八件のうち六件は世帯の人数の記載を欠いていた。
二件は区分の証明を欠いている。欠いた申込は数だけが残る。私は指で数えて覚える。
指は左の手を使う。右にはゴムが嵌まっている。折る順は親指から始める。
五を超えると一度開いて、開いた回数を頭で持つ。
覚えても、日が変われば消える。
私はその日のうちに紙の余白へ書き付ける。
余白の書き付けは、日締めの時に消す。昼の間、窓を閉める。締め切ると土間が暗くなる。
私は腰掛の板を布で拭く。真ん中の減っているところは、拭くと色が変わる。端は色が変わらない。
減り方は左右で違う。
戸に近い側のほうが深い。
深いところを指でなぞると、木の目が二本切れている。
切れた場所は、腰の骨の当たる高さになる。
拭いた布を絞る。水は桶へ落とす。音は二度した。
昼の間に来る者はいない。
閉めている間に戸を叩いた例は、本年度に一度あった。
その一度は私が開けた。叩き方が長かった。叩き方の長さで開けるかどうかを決める扱いは、何処にも書いていない。
私は自分の弁当を開ける。
中は麦と、それから漬けたものになる。
包みは布で、結び目は上に来る。解く時は左から始める。左から解くのは、右手で押さえる形になる。
匂いは漬けたもののほうが強い。土間の中で立つと、隅まで届く。食べ終わって、器を洗った。
乾かすために窓の下へ伏せておく。
午後は人が少ない。
午前と午後で分けて数える扱いは無い。日で一つに数える。
私は自分の頭の中でだけ分けている。割ると、午前が三分の二になる。
午後の最初に来たのは、四十一番の札を取った者だった。台の前へ来るまでに、腰掛で長く座っていた。私は数えていない。
この人は台の前で止まる。手には何も持っていない。
止まった場所は台の真ん中ではない。右へ寄っている。寄ったのは、私の坐っている位置と揃わない。
背は低い。私の肩のあたりまでになる。
服は色が褪せている。袖の丈が合っていない。ずれているのは片方だけになる。
髪は後ろで括ってある。使ってあるのは布の紐で、端が二つに割れていた。
手は台の高さより下にある。指は握っていない。
開いてもいない。靴は履いている。紐は右が新しくて、左は古い。
様式の束は台の左にある。上から取ると、紙の端が揃わない。私は下から二枚目を抜く。
跡は上から押せば戻る。私は様式を一枚出した。
「四十一番の方は居住区分の証明と、世帯の人数の記載と、二点をこちらの台の上へお出しください」
この人は何も出さない。
台の縁に手も置かなかった。持っている物が見えない。袖の内が膨らんでいるが、出す様子は無い。
それから口を開いた。
「なにを出しますか」
声は小さい。私は同じことをもう一度言う。
「居住区分の証明の紙と、世帯の人数を書いた紙と、二点をこちらの台の上へ揃えてお出しください」
この人は首を横に振らない。縦にも動かさない。少し間があってから、また訊いた。
「区分は何ですか」
私は答え方を持っていない。区分は本人の側にある。こちらが決めるものではない。
決める窓口は隣の建物になる。隣へ行けとは言わない。言う扱いを聞いていない。
訊かれた例も、私の四年で三度だけになる。
私は様式の二つ目の欄を指で押さえる。そのままにして、見せた。
この人はその欄を見る。目をやる時、顔を近づけない。
目は動いている。左から右へ一度行って、それから戻った。
戻り方は行きより速い。私は三つ目の欄も押さえた。世帯の人数の欄になる。
この人はその欄も見た。二つ目より長く見ている。それから、また訊いた。
「一人でいいですか」
私は組の表を見る。第一組の人数は二から始まる。
一の欄は表に立っていない。人数が一の場合の扱いは、心得にも表にも置いていない。
表の縦の一番左の升は、二人からになる。一人の升は無い。
升の無いところへ入る申込を、私は受けたことがない。今日が初めてになる。
私は組を立てられない。立たないと、順を付ける前で止まる。
「四十一番の方は、居住区分の欄と世帯の人数の欄が埋まらないと、組のほうが立たないことになります」
この人の目は台の上の様式へ向いたままだ。
私の目もそこにある。様式の上のほうに、氏名の欄がある。そこも空いている。
私は氏名の欄を押さえなかった。順は区分と人数が先で、氏名はその後になる。順を変えた例は、私の四年で一度も無い。
変えてよいかを訊いた例も無い。
この人はもう一度、二つ目の欄のあたりを見る。目をやる時、私の顔へは向けない。それから台の上の様式の縁を、指で一度だけ触った。
当てたのは紙の角になる。角は折れていない。指が離れた後も真っ直ぐだ。
この人はしばらく立っていた。それから、台の上に札を置く。
置いた札は表を上にしていた。四十一の数が見えている。
私はその札を取らなかった。回収の欄へ書くのは、様式が済んだ後になる。
この人は戸のほうへ歩いていく。足の運びは速くない。
右の足のほうが、板を踏む音が大きい。左は軽い。
音の違いは土間の途中まで続く。三和土へ出ると揃う。
戸のところで一度止まった。止まってから、こちらを振り返らずに出ていった。
私は札を裏返して台の隅へ置く。表の数字が下になる。
その後で三人来た。三人は続けて入ってきた。札は四十二、四十三、四十四になる。
三人とも腰掛には行かず、そのまま台の前へ並んだ。列になるのは珍しい。三人は連れではない。
互いに口をきかなかった。二人目と三人目の間だけが空いている。幅は掌二つぶんある。
三人とも二点を揃えていた。
組は第二と、第四と、第四になる。順の判を三度押す。押した後で、判の面を布で拭いた。
拭くのは日に二度と決めている。昼と、閉める前だ。日が傾いてくる。
戸の隙間の光は、朝より低いところにある。
入ってくる幅は朝より広い。土間の奥まで届いていた。名簿の綴りを棚から下ろす。
綴りは厚い。四月に作り直したものになる。
作り直した日に、前の綴りは破棄した。方法は当窓口の判断になる。
私は前の綴りを竈へ入れた。入れる前に、頁の数を数えていない。
数えるよう言われていない。新しい綴りの一枚目には、四月の日付が入っている。
私が入れた。入れる欄はあった。
十月にもう一度作り直す。その時、この綴りも竈へ行く。
組を移した例は本年度に四件ある。どれも人数が変わっている。
移すと、順は移った先の一番下に付く。前の組で上のほうにいた者も、下から数え直しになる。直す時、私は前の順の数を消す。
消した跡は残る。消し方は係の手に任されている。私は線を一本引いて消す。
私は掲示の紙を出す。組ごとに六枚ある。
紙は同じ大きさで、罫の数も揃っている。書いてある数の桁だけが違う。
六枚のうち、今日書き足したのは四枚になる。第三組と第五組は動いていない。
書き足すのは順の数だけだ。氏名は掲示に出さない。
掲示を見に来る者は、朝と、日の暮れに多い。窓口の開いていない時刻になる。
開いていない時刻に来る者を、私は数えていない。
掲示の側にも残らない。見に来た跡は、腰掛の前の地面に残る。朝に来ると、前の日より跡が増えている。
出さない扱いは前からそうなっている。理由を訊かれたことは一度も無い。私は掲示を土間の壁へ貼る。
場所は前から同じだ。
貼る前に、前の紙を剥がす。外したものは畳んで抽斗へ入れる。
入れておく期間は係が決める。私は月の終わりに束ねて焼く。
壁の同じところへ貼り続けている。紙の四隅の跡が壁に付いていた。跡は薄い四角になって、六つ並んでいた。
六つの間隔は等しくない。第三組の分だけが少し下がっている。
下がったのは、去年の秋に一度貼り直した時からになる。画鋲は四つ使う。上の二つを先に刺して、下の二つを後で刺す。
貼り終えて、私は台へ戻る。日締めをする。
交付した札は二十七枚になる。回収したのは二十六枚だ。
数え方は二度する。一度目は箱の中を数え、二度目は空いた場所を数える。二つを足すと五十になる。
今日は四十九にしかならない。一枚合わない。
私は箱の中を見る。空いているところは一つある。四十一のところだ。
四十一の左は四十で、右は四十二になる。両方とも入っている。入っている札の頭が揃っていて、真ん中だけ低い。
台の隅を見る。札はそこにある。
伏せたままだ。私はその札を箱へ戻さなかった。入れれば、回収の欄へ書かなければならない。
書けば、明日この札はまた誰かの手へ渡る。
行った先で、また四十一になる。書く欄はある。書いた後で、この札はもう一度出ていく。
私は日締めの表へ、交付と回収の数だけを書いた。表の欄は五つある。日付と交付と回収、それから申込の件数と判の回数になる。
五つとも数を入れる欄で、字を入れる欄は一つも無い。合わない一枚のことを書く欄は、この表に無い。窓を閉める。
締める時、外を見た。
腰掛の前の地面に、靴の跡が残っている。跡は乾いていて、縁が崩れていた。
跡の数は数えない。並べても、明日には風で崩れている。
私は戸に落とす棒を掛ける。棒は樫で、両端が黒くなっている。
棒の真ん中は白い。手が届かない場所に貼ってある。掛ける時、棒は受けの金具へ二度当たる。
一度で入る日は少ない。黒いのは手の当たるところだ。
掛けてから、土間の光の入る場所をもう一度見た。光はもう入っていない。今日、私が数えたものを並べてみる。
来所は二十七人になる。組の立った申込は十七件だ。
欠いたのは十件になる。欠いた十件の内訳は、人数の記載が七で、区分の証明が三だ。
朝に比べて、午後のほうが欠く割合が高い。理由は分からない。
分からないままで四年になる。判を押したのは五十一回だ。
掲示へ書き足したのは四枚。飯のことを言った者は五人、医者のことは三人、冬のことは二人になる。
子の行く先のことを言った者は、今日はいなかった。いない日は月に何度かある。数えると、四月からで十一日になる。
どれも書く欄が無い。私は覚えているうちに紙の余白へ書き、それから消した。最後に来た四十一番のことを、私は数の何処にも入れていない。
組が立たないと、来所の数へは入る。
申込の数のほうには載らない。欠いた十件のほうへ入れるかどうかは、心得に書いていない。私は入れなかった。
入れれば十一件になる。入れなければ十件のままになる。
どちらでも、日締めの表の欄は埋まる。書き終えた表は明日の朝に綴りへ移る。移した後で、表をもう一度見ることはない。
見る用が起きた例を、私は四年で知らない。
台の隅の札を、私は指で少し動かす。位置を変えても伏せたままにする。竹の裏は削った跡が残っている。
削りは横向きで、端のところだけ縦に走っていた。縦の走った幅は指の腹ほどになる。触ると、そこだけ引っかかる。
引っかかるのは古い札の特徴だ。四十一は古いほうの十二枚に入っている。明日の朝、私は札の箱を台へ出す。
箱の四十一のところが空いている。抜けていれば、目で分かる。
空いた枡は、そのまま次の朝まで空いている。回収の欄に日付が入るのは、札が台へ戻ってからだ。
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番号札の交付と回収の記録(抄)
交付した札 二十七
回収した札 二十六
回収に至らない札 次項に記す
一、交付した札
本日交付した札は二十七枚であった。交付は来所の順により、番号の順とは一致していない。一致させる扱いを定めた記載は、この記録にも心得にも無かった。
二、回収した札
回収した札は二十六枚になる。
回収は帰る際に台の上で受けることとしていた。受けた者の別を記す欄は、この記録に置いていない。
二の二、回収の時刻
回収の時刻を記す欄は設けなかった。
設けるよう求められた例も残っていない。
三、組の立った申込
本日、組の立った申込は十七件であった。二点のいずれかを欠いたものが十件になる。
十件の内訳は、世帯の人数の記載を欠くものが七件、居住区分の証明を欠くものが三件であった。
三の二、来所の数と申込の数
来所の数と申込の数は一致しない。
組の立たない来所を申込の数へ入れない扱いとしていた。入れない旨は心得の側に記していなかった。当窓口の内部の慣行による。
四、掲示
本日書き足した掲示は四枚であった。第三組と第五組は動いていない。掲示に氏名を出さない扱いは前年度から続いている。
改めた記載は残っていなかった。
五、判
判を押した回数は五十一回になる。押す順は受付、組、順とした。押し違えた例は本年度に二件あった。
二件とも様式を差し替えている。
差し替えた様式の控を残す扱いは、この記録に置いていない。
五の二、朱肉
朱肉は一つを三つの判に用いることとしていた。判ごとに分ける扱いは置いていない。分けるのは当番の判断によっていた。
五の三、抽斗
受け付けた様式は台の下の抽斗へ入れることとしていた。
抽斗は二つで、日で分ける扱いとする。前の日の分を上の綴りへ移す時刻を定めた記載は、この記録に無かった。
六、回収に至らない札
回収の欄に記入の無い札が一枚、台の上に表を伏せたまま。




