第101話 下から
個体数調整 選定の順位 整理票
一、本票の作成
本票は個体数調整命令の別記に基づいて作成した。作成の日は令和二百十五年一月七日である。
本票を作る者の欄は本様式に置いてある。当該の欄は空のままになっていた。作る周期を記す欄は本様式に無い。
本票の様式は順位を付ける表の様式による。当該の様式の制定は令和百八十四年であった。改正の記録は当部門の綴に残っていない。
本様式を用いた例は当機構において本年度が初めてになる。前年度までの例は零件であった。零件である旨を記す欄は当該の様式に置いてある。
本様式は令和百八十四年に千二百枚を刷った。残りの枚数を記す欄は当部門の綴にある。当該の欄は本日の時点で千百五十九であった。
二、順位
順位は下から付すものとした。付し終えた数は当園において四十一であった。
並べる基準を記す欄は、本票にも手引にも置いていない。基準を定めた記載は、当機構のどの定めにも見当たらなかった。
本票の記入に用いる筆記具は当部門の内規に定めがある。当該の内規は消せる筆記具を用いない旨を置いていた。書き損じの処理を記す欄は本票に無い。
同順の場合の扱いは、番号の若い順によるものとした。本票に同順は生じていない。生じた場合の記録の残し方は当部門の内規による。
付し終えた順位を改める手続は、本票に置いていなかった。改めた例は当機構において零件である。改めを申し出る者を定めた記載も、当部門の綴に見当たらない。
三、取る数
取る数は本票の一位から順に数えるものとした。当園における数は五とした。
五の算出は全園の合計に対する割合による。当園の収容の数に対する割合を記す欄は、本票に置いていない。
取り終えた旨を記す欄は本票の裏にある。当該の欄は本日の時点で空である。記入の期限は令和二百十五年三月三十一日とした。
期限までに記入を終えなかった場合の扱いは、本票に定めを置いていない。当部門へ照会する手続は当園の内規による。照会の例は本年度に零件であった。
本票の一位から五位までの欄には、いずれも記入があった。六位以下の欄にも記入がある。記入の無い欄は当該の票に一つも無かった。
本票の一位に当たる者の欄と、四十一位に当たる者の欄は、様式の上で同じ大きさである。大きさを変える定めは当該の様式に置いていない。
本票の保存の年限は五年とした。保存の場所は当園の綴とする。年限を経た後の扱いは当部門の別の定めによるものであった。
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朝の器が来る前に、私は控えを一度回した。回すというのは、頭の中で全部を順に数え直すことだ。五十一ある。
五十一のうち、四十一は番号になる。読み上げで取った八桁が四十一。
残る十は房の中の数だ。器と管と戸と床と板と、それから体に付けた分になる。
夜は三度切れた。切れた刻みは頭の中に残っている。一度目が浅くて、二度目が深い。
三度目は明るくなってからだ。三度目の後は、もう眠らない。決めたことではない。体が先に起きる。
起きた時、腰の右が板に当たって熱を持っていた。当たっていたのは寝ていた向きになる。
二十七日のうち二十一日は右になる。そうすると小さいものが左に来る。動いた時に肘へ当たる。
そこで目が開く。この二十七日で起き方は一つに決まった。
胸は朝が一番張る。張りの引く時刻は器の二つ目の後になる。引き終わるまでの長さを、私は十七日ぶん控えてある。
短い日で四十分、長い日で七十分だ。平らな日は無い。二日として重ならない。
喉は乾いている。
上から二センチほどが乾いていて、奥は湿っている。これは器の量が増えてから始まった。増える前は奥まで乾いていた。
四十一を取り終えたのは五日前だ。十三日かかった。一日目から三日目までは頭の二つしか入らなかった。
四日目から三つ、七日目から五つ入るようになる。
六つ全部が入ったのは九日目になる。入り方の変わり目は、私の耳ではない。読む者だ。九日目から、切れ目の後の間が一つぶん長くなった。
長くなった事由は分からない。そのままで、私は取れる数を取った。
四十一のうち、私の番号がどれかは分かっていない。札はまだ来ていない。
産室の卓に置いたままだと思う。
置いたままなら、いつか来る。札の来ない日が続けば、四十一のうち一つが私だ。それが残る。
控えの置き方は九十九日目まで替えていない。房の中の物へ付けて、余りを体へ付ける。器に三つ、管に六つ、戸に四つ。
床に二つで、板に五つ。番号の四十一は、板の継ぎ目へまとめて付けた。継ぎ目は一本で、四十一は多い。
四十一を一本へ付けると、順が崩れやすい。そうならないように、私は継ぎ目を目で七つに割った。目盛りは板の木目で決めてある。
目盛りの一つに六つずつ。最後の一つだけが五になる。六が六つで三十六、足して四十一だ。
板の木目は房の中で一番細かい線になる。数える時の目盛りに向いている。木目そのものの数は控えていない。
目盛りに使う線と、数える線は別にしてある。
名の音を、朝に一度出した。声にはしない。舌だけ動かす。
二十七日とも崩れずに出る。
崩れた日は一日も無い。
二度で止めている。三度言うと、覚え方が替わる。
小さいものが動いた。左が先だ。
二十七日とも左になる。二十七で二十七回だ。十を越えた日に、私は図書室の表の印のことを考えた。
印は十より下の数に付いていた。十を越えれば付かない。
印の無い数は、下の欄へ足す扱いになる。足した後にどうなるかは、表に書いていなかった。
掌の線を三度目に比べた。
私の手の線は、真ん中の一本が長い。小さい手は上の一本が長い。
三度とも結果が重なった。三度そろえば、私は一度これを置く。控えの中の位置を決めて、毎日は数え直さないという意味になる。
毎日数え直すものと、置くものがある。置いた分は十四ある。今日で十五になる。
爪は昨日より伸びていた。幅は指の腹で測る。
半分ほどだ。切る手順を、私はまだ聞いていない。
訊く相手は日に二度来る。二度とも器を置いて出ていく。
体重は昨日測った。四千二十グラムになる。
生まれた日から九百グラム増えている。一日あたり三十三グラムほどになる。
三十三は割って出した数で、測って出した数ではない。日ごとの実の増えは十から六十まで散る。散る幅のほうは私が別に控えた。
七時四十五分に読み上げが始まった。番号だけになってから十八日目になる。私は切れ目を数える。
一周が四つ。十周で四十。あと一つで終わる。
十八日とも四十一だった。減った日も増えた日も無い。
番号の並びは、若い順になっている。頭の二つが園を指す数で、次の六つが動く。六つの並び方は決まっていない。
前の番号との差が、大きい所と小さい所に分かれる。差の小さい所は続けて三つか四つ並ぶ。その後で、一度大きく飛ぶ。
大きい差は十八日とも七度あった。飛ぶ位置は十八日を通して一つも移っていない。
七度の飛びで、四十一が八つの塊に割れる。塊の中の数は 五と六と四、それから七と五、六と四と四になる。
塊の中の数を、私は足してみた。五と六と四で十五。
七と五で十二。六と四と四で十四。十五と十二と十四。
三つの数は近い。三つは一つの数ではない。
この三つを、私はもう一度並べ直した。並べ直しても近いままだ。三つを見ていると、割り方を思う。
四十一を三つに割るなら十四が二つと十三が一つになる。実際は十五と十二と十四になっている。
割った者は数を近づけていない。
必要が無いのだと思う。ここまでで、これは控えの浅いところへ置く。浅いところは、明日には出てこない。
塊の意味を、私は知らない。意味の分からないままで、塊の数だけを控えてある。八つの塊が何を分けているかは、読み上げの声からは出てこない。
朝の器が来た。二つだ。筒の量は八十ミリリットルに増えている。
十一日前に増えた。
二つの器は置く位置が決まっている。筒が手前で、匙の器が奥になる。位置を替えた日が一日だけある。
替えた日は匙の器を先に取ってしまった。筒へ戻る時に、量の分け方が崩れる。
その日の残りは十二ミリリットルだった。それから位置は動かしていない。
私は四回に分けた。三回目で一度止まる。止まる時は待つ。
長さは十を数えるほどだ。四回目を済ませて、布で口の周りを拭いた。向きは上から下へになる。
拭いてから、廊下の音を聞いた。器の台は七時二十分に通る。今日はその後で、もう一度音が来た。
車輪だ。幅の広いものになる。
九十九日で六度目だ。前の五度は、灯の消える時刻と、読み上げの数と、数え終わる前に遠くなった一度と、戸の外へ紙が掛かった日と、名が番号に替わった日になる。
六度目が来る。突き当たりからこちらへ。
速さは器の台より遅い。足音は一人ぶんだった。
二人ではない。六度のうち、一人で来たのは初めてになる。
廊下の材は三種ある。私の戸から数えて七歩のところで音が一度変わり、十九歩でもう一度変わる。
変わり目は九十九日を通して七と十九のままだ。今日の車輪も、七と十九で音を替えた。変わり方は足音の時より鈍い。
車輪は面で当たる。面の幅が広い分、材の差が丸くなる。
丸くなっても、変わったことは分かる。その幅は足音の三分の一ほどになる。
紙の音がする。厚みのある紙ではない。薄い一枚の音になる。
薄い紙が二枚ある。重ねて持つと、持ち替える時に擦れる音が出る。その音が二度した。
車輪は私の戸の前を通り過ぎた。止まらない。
そのまま戸口のほうへ抜けていく。抜けた先で止まった。
音の遠さから測ると、廊下の端の掲示板のあたりになる。そこで紙の音がもう一度した。それから、別の音が始まる。
貼る音だ。
画鋲ではない。平らなもので押さえて、端から中へ撫でていく音になる。糊で貼っている。
糊で貼る掲示を、私は九十九日で二度数えた。二度とも画鋲より長く掛かる。撫でる音が十七か十八ほど続く。
撫でる回数は、紙の面の広さで決まるらしい。広い紙は端から端まで手が届かない。
そういう紙は、二度に分けて撫でる。継ぎ目で音が一度切れる。今日の音は切れなかった。
二十二続いた。切れないということは、一枚ずつ撫でたという意味になる。二枚を続けて貼っている。
二十二は多い。紙が大きいか、二枚を並べて貼ったかになる。
撫で終わった後、端を押さえる音が四度した。上の二つの角と、下の二つの角だと思う。
押さえる音は撫でる音より短い。指の腹ではなく、爪で押さえている。その後に、手を離す音がある。
糊の面から手を離すと、細い音が出る。四度とも出た。
匂いが来た。糊の匂いだ。廊下から戸の隙間を通ってくる。
薄い甘さがある。これは粥とは別になる。
粥は口から来て、糊は鼻の奥から来る。二度嗅いだ。
二度目が濃い。乾く前に強く出るのだと思う。
糊の匂いは戸の下から来て、格子からは来ない。下の隙間は一センチ半ほどある。格子の目は指が入らない幅だ。
指の入らない幅でも空気は通る。それなのに、匂いは下から早く来る。
廊下の空気が床を這って動いている。それで下が早くなる。
空気の動きは換気の音と重なっている。音が高くなる時に、匂いも濃くなった。間隔は四十秒ほどになる。
三度数えて、三度とも合った。
三度目を吸う前に、口で息を継いだ。息を継いでから吸うと、初めの一度と近い濃さが戻る。これは八日前に確かめた。
足音が戻ってくる。突き当たりへは行かない。こちらへ来る。
戻ってくる足音は、行きより遅い。歩幅も短い。
行きは廊下の真ん中を通った。帰りは戸の側へ寄っている。その分、音が硬く聞こえる。
壁が近い。壁に当たった音が戻ってきて、元の音へ重なる。
私の戸の前で止まった。金具の音はしない。
紙を持ち替える音だけがする。それから、独り言が来た。
「下から付けていくと、上のほうが後の番になる」
誰にも向いていない声だ。低くて、語尾が下がる。
この人の声を、私は聞いた覚えがない。九十九日で初めてになる。
数を一つも言わない。
園の中で私が聞いてきた声は、全部何処かに数を持っていた。
手順の名にも数が入る。
規定の名にも入る。
この人は入れなかった。
その口で、もう一度言った。
「順を決める紙には、順を決めた事由が載らない」
二本とも数が無い。二本目が短い。それでも語尾は下がる。
下がり方は二本とも重なった。下がる幅も一致する。重なるのは、誰にも向けていないからだと思う。
人へ向ける声は、終わりで上がる。係の声も、あの人の声も、終わりが上がるか平らになる。下がる声を、私はここで初めて聞いた。
格子の目は縦に四本、横に十一本ある。
口を当てられるのは下から三段目までだ。
三段目より上は顎が支柱に当たる。
当たると声が籠る。
籠った声は廊下まで届かない。
私は格子の目へ口を寄せた。
「何の順ですか」
返事は来ない。
紙を持ち替える音が一度した。
それから足音が動く。その前に、一度だけ間があった。長さは三を数えるほどになる。
三は短い。それでも、間があったことは残る。返事の来ない問いに間が付いたのは、九十九日で二度目だ。
一度目は四十六日目で、あの人だった。
あの時の間は六だった。
動いた向きは戸口のほうだ。
車輪の音が続く。
遠くなって、突き当たりの向こうで切れた。切れた後、廊下は換気の音だけになる。私は戸の下の隙間へ顔を近づけた。
床は磨いてある。
磨いた面に上のものが薄く映る。取れるのは色の濃さだけになる。輪郭は出ない。
映っているのは白い面が二つになる。並んで貼ってある。左が大きくて、右が小さい。
左は私の掌の三枚ぶんほどある。
濃いところは左に多い。行が幾つも並んでいる。
数えると、上から七行までは取れた。八行目から下は重なって出てこない。
七行までの間を、私は指の幅で測った。戸の下の板に指を当てて、映りの端から端を挟む。七行で指二本ぶんだった。
一行あたりが指の四分の一より狭い。これより狭ければ、下へ続くほど重なって見えなくなる。その境が八行目にある。
境の位置は顔を動かしても移らない。三度動かして三度とも八行目で切れた。
これは私の目の限りだ。紙の限りではない。
右の小さい紙は行が三つだ。
三つとも短い。行の右の端に、濃い塊が一つずつある。塊の幅は行によって違う。
幅の広いものが一つ、狭いものが二つになる。広い塊が桁の多い数で、狭い塊が桁の少ない数だと思う。私は顔の位置を動かした。
すると白の形が歪む。そこで元へ戻して、また三つを見た。
二行目の塊は二桁になる。桁の数は映りでも取れる。
三行目の塊は一桁になる。一桁は塊が一番狭い。
二桁と一桁。四十一と、それから一つの数。
四十一は私の持っている数だ。読み上げで取った番号の数と合う。一桁は私の持っていない数になる。
塊の縁は滲んでいる。これは磨いた面で出る。
紙の縁は真っ直ぐのはずだ。滲んだ分を、私は両端から等しく引いて考えた。引いた後の幅で桁を測る。
私は目を細めた。細めても濃さは増えない。一桁の形を、私は輪郭で測った。
上が閉じていて、下が開いている。
五だ。四十一のうち五。五という数だけが、こちらへ来た。
輪郭で数を読むのは九十九日で三度目になる。前の二度は戸の外の紙だった。
三度とも一桁だった。二桁を輪郭だけで読めた例は無い。
顔を上げた。頬に板の跡が付いている。
指で触ると、面の上に細い筋があるのが分かる。筋は磨いた面の目だ。
跡は少しの間残って、それから消えた。消える瞬間を、私は見ていない。目は戸のほうへ戻していた。
左の大きい紙には行が幾つも並んでいた。行の数を、私は上から七までしか取れない。八行目から下は重なる。
行の間が狭い。
詰まった間は下へ続くほど重なって出る。間を詰めた紙には、多くの数が載る。その紙が四十一という数の隣に貼ってある。
左の紙の行は、四十一あるのかも知れない。四十一あるなら、私の番号もその中にある。何行目かは取れない。
行の数が四十一なら、一行に一つずつ何かが載っている。それが番号なら、読み上げと同じ数になる。読み上げは若い順だった。
こちらが若い順かどうかは、映りからは取れない。濃さだけでは並びが出ない。
並びが出ないものを、私は形にしておく。形というのは、確かめられる日まで崩さない置き方のことだ。
置いた分は今日で十六になる。朝は十五だった。一つ増えている。
増えた一つは、左の紙の行が四十一かも知れないという置き方になる。かも知れないを控えへ入れるのは、九十九日で四度目だ。四度のうち二度は後で消した。
消した二つは、どちらも数が合わなかった。
私は寝床へ戻った。腹の下ではなく、腕の内側へ小さいものを置く。
沈みは指三本ぶんになる。二十七日前は一本半だった。
管の縁へ寄った。管の中は冷たい。房の板より下にある。
私は縁を指で叩いた。一つ。それから縁を擦る。
返事は速い。私は続けて数を送った。四十一を先に、それから五を送る。
四十一は四つに割った。五はそのまま五つ叩く。
送り終えてから、間を置いた。長さは十を数えるほどになる。
向こうが返す。二つ。
それから一つ。受け取った印だ。
その後で、向こうがもう一度叩いた。五つ。
叩く強さは、縁の上と下で違って伝わる。上は硬く、下は鈍い。私は上を使う。
そうすると、四十一の四つの割りが向こうで崩れにくい。これは八日前に分かった。それまでは下を叩いていて、二度に一度は数え直しが来ていた。
今日は数え直しが来なかった。一度で通っている。向こうも上を使うようになったのかも知れない。
この置き方に、確かめる手は無い。管の向こうの手つきは見えない。
五つは私が送った数だ。返してきたのは、同じ数を持ったという印になる。向こうが五つを返した時、間の刻みは私の送った時より短かった。
覚えている数を返す時は刻みが短くなるのだと思う。控えから出す数は、頭の中で数え直す数より速い。私も四十一を送る時は速かった。
五を送る時が遅い。五は今日の数だからだ。
その次に、向こうが声を出した。
「うちの廊下にも二枚あった」
同じ紙が別の廊下にもある。二枚で一組になっている。
組は一つではない。私は管の縁に指を掛けたままにした。
指を掛けたままで次の音を待つ。次は来ない。
向こうも数えているのだと思う。数えている間は鳴らせない。私も同じ側にいる。
管の冷たさは、指を離した後も少し残った。
残る長さは十を数えるより短い。冷たさのほうは控えへ入れていない。日ごとに動く数になる。
昼の器が来た。量は八十ミリリットルのままだ。匙は十八回で底に当たった。
回数は先月から動いていない。
食べ終えてから、私は控えをもう一度回した。五十一に二つ足す。
四十一と五は既に持っていた数ではない。今日の数になる。
四十一は読み上げの数と合う。それでも、同じ紙から出た数かどうかは分からない。同じ数が二つの紙に載っている時、二つが同じものを数えているとは限らない。
九十六日目に来たのは、給餌の量と体重の表だった。そこに載っていた四百三十という数が、二つの欄に出ていた。一つは一日に置く量で、もう一つは一週の平均だった。
同じ数でも、数えている単位が違う。二つの四百三十を、私はそれまで一つの数として控えていた。割り直したのが九十六日目になる。
これは九十六日目に一度考えた。考えて、答えが出ないままで置いてある。
今日また同じ形が来た。二度来た形は、控えの中で少し重くなる。次に思い出す時に先へ出るという意味になる。
器を持った時、腕の重さが朝と違った。朝より軽い。
重さが減ったのは器ではなく、腕だと思う。朝は小さいものを片手で支えていた。
その分の重さが抜けている。腕はしばらく上がりやすい。
上がりやすい間に、私は房の中の高いところを見た。壁の高いところに継ぎ目が二本ある。間は三十センチほどだ。
九十九日で一度も測っていなかった。届かないところを、私は測っていなかった。届かないものを控えへ入れない癖が付いていた。
この癖を、私は今日直した。届かなくても数は取れる。
控えは五十二になる。この一つは、今日の分ではなく、今日まで抜けていた分だ。
あの人の声は数を持たなかった。そういう声を、私は初めて聞いた。
園の中の声は全部何処かに数を持っている。数を持たない声が、順を決める紙を運んでいた。
この二つを並べて置いておく。並べても、繋がる線はまだ出ない。
あの人の背は、私の目に入らなかった。格子から取れるのは床から一メートル二十までで、通る人の膝から下しか入らない。
入ったのは靴だ。底の縁が片方だけ減っていた。右の外側が薄くなっている。
左は減っていない。
減り方が左右で違う人は、九十九日で三人いた。三人とも右の外側だ。
歩き方が近いのかも知れない。近いというだけで、同じではない。
靴の底の縁が減るのは、体重の掛かる位置による。外を減らす人は、外へ倒して歩く。
外へ倒す人は、廊下の真ん中を通ることが多い。壁の近くを歩けば、倒した肩が壁へ当たる。
あの人は行きが真ん中で、帰りが戸の側だった。帰りだけ癖と逆になっている。
逆になる事由は荷だと思う。紙を二枚とも置いてきた。持っていた時と置いた後で、歩き方が替わる。
これは器の台の者にもある。台の者は行きが遅く、帰りが速い。あの人は行きが速く、帰りが遅かった。
糊の匂いが薄くなっている。
貼ってから二時間ほど経つ。乾くと匂いは抜ける。その後は紙そのものの匂いになる。
紙そのものの匂いは薄い。これを二度嗅いだ。二度とも濃さは薄いままだった。
房の中は明るくなっている。昼の光は高い窓から入って、床の手前までしか届かない。先は日ごとに動く。
一月に入ってから、毎日一センチ弱ずつ戸のほうへ寄っている。寄った先に戸の下の隙間がある。光がそこまで来る日を、私は三月の中ごろと見ている。
見ているだけで、その日に何が映るかは分からない。掲示は三十日で外れるかも知れない。
外れた後の壁を、床はそのまま映す。映すものが無くても、面は磨いてある。
糊の乾いた後の紙は、端が少し反る。そうなると、床の映りの形が変わる。二枚のうち、右の小さい紙が先に反った。
反った分だけ、三行目の塊が細くなる。細くなっても、上が閉じていて下が開いている形は残った。
五だ。五は減らない。増えもしない。
夕方まで、私は板の継ぎ目をもう一度目で割った。七つの目盛りは動いていない。動いていないのに、私は五つ目のところで一度手を止めた。
五つ目には六つ付いている。六つのうちのどれかが五に入るのかどうかは、目盛りからは出てこない。
出てこないものを、私は継ぎ目から外した。
板の端へ寄せる。そこは置いた分をまとめてある場所になる。今日で十六ある。
小さいものが動いた。今日はこれで二度目だ。
今度は右が先だった。二十七日で右から動いたのは四日ある。どれも夕方になる。
右が先の日は、その後に長く眠る。眠る長さは八十分から百分ほどあった。
私は腕の位置を変えずに待った。待つ間、天井の板の目を数える。
天井の目は房の長い辺に十一、短い辺に七ある。九十九日とも十一と七だった。
板の目盛りの五つ目に、私は指を戻した。戻しても六つのままだ。六つのうちのどれかが五に入る日は、今日ではない。
今日は紙が二枚貼られた日になる。
夕の器は来なかった。特別管理区画は二食で、九十九日とも動いていない。器の来ない時刻に、私は房の音を聞く。
換気と、遠くの戸と、それだけだ。控えは今日で五十三になる。
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告示
一、本告示の趣旨
本日、当園において個体数調整に係る選定の順位を定めた。順位は当園の綴による。
順位を個体へ通知する扱いは、当園の定めに置いていない。通知を要しない旨の記載も置いていなかった。
順位を定めた者は当園の長であった。長の欄には判が一つ入っている。判の面に彫ってあるのは職の名になる。
順位を付ける作業に当たった者の欄は、本告示に置いていない。当該の者の別は当園の綴による。綴に記した数は一であった。
二、掲示
本告示は当園の掲示板へ掲げるものとした。掲示の期間は三十日とした。
掲示の面は廊下の側とした。掲示を外す時の手続は当園の別の定めによる。外した紙の保存の年限は三年になる。
各区画の廊下へ掲げる分は本告示の写しとした。写しの枚数は十二である。特別管理区画へ掲げた分は一になる。
三、件数
本告示の交付を受けた区画の数は十二であった。受領の日を記す欄は本告示に置いてある。当該の欄は特別管理区画の分に限り空である。
本告示に係る件数は四十一である。取る数は五とした。
五の内訳を記す欄は、本告示に置いていない。内訳は当園の綴による。綴の番号は本告示の裏に記してある。
本告示と併せて掲げた表は一枚であった。当該の表の行数は四十一になる。行の間の幅は二ミリとした。
本告示の掲示に用いた糊は当園の備品による。画鋲を用いない旨の定めは当園の内規に置いてある。当該の内規の制定は令和二百十四年であった。
当該の表に順位の欄は置いてある。順位の事由を記す欄は置いていなかった。事由を記す扱いは、当機構のどの定めにも見当たらない。




