8時間目 朝の光の中で
よく漫画とかであるような遅刻ギリギリとかのピンチな時間に起床する展開は俺の物語には無かった。
空港に6時半に集合という日程で、俺が目を覚ましたのは4時半だった。2時間も早く起きて当然まだ家族は誰も起きていない。なんせ4時半だからな
とりあえず体をベッドから起こしパッパと修学旅行の持ち物の最終チェックをした。全ての作業が終わって一息ついて時計を見ると針は5時を指していた。
とうとうやることが無くなった、本当はもっとわたわたしたような時間になる事を想像していたが、時間に余裕がありすぎた。
突如として「外に出てみる」という選択肢が頭をよぎった。俺はそのままジャージに着替え、5時10分外に出た。少し暑くなってきて夏を感じてきた昼間とは違い心地よい風が吹いていた。
家から近くの川沿いを歩いていると朝のジョギングをする人、犬の散歩をする人、釣竿をリュックに入れ自転車を漕ぎ海の方に向かう人、と昼間とかよりも多いのでは?と思うくらい様々な人がいた。
俺は自販機で買ったカフェオレを片手に川のすぐそこの階段に腰掛けた。現在時刻5時20分。カフェオレを飲み終わったら家に戻り準備をしようと思った時、突然視界が暗くなった。目を手で覆われたらしい。
「だーれだ!」
「…」
俺は黙秘した。誰かはわかっているがわざわざ相手をしてやらなくても大丈夫なやつだからだ。
「…沈黙かよ〜乃蒼、おもんないぞ」
後ろを振り向くとやはりやつだった。新島光葉。産まれてすぐからの幼なじみで親同士も仲が良い。容姿は一見小さい女子みたいな感じだが列記とした男で、名前も俺と同じように少し女っぽい感じなやつだ。
「で、なんでこんなこっ早い時間なんかに河辺にいんだよ?なんかあったか?」
「別に、あんまり早く起きすぎてめっちゃ暇だったんだよ。特にやることも無いしな。そっちこそなんでこんなとこにも」
「まぁお前と似たようなもんよ楽しみすぎて寝れなくて今に至る!ってこと。」
光葉はオールしたらしい。楽しみなのは分かるが、そういうのって大体遅刻ギリギリに起きるみたいな感じじゃないのか?と考えもしたが、それよりオールしたということに少々驚いた。
俺が早く起きたのも絶対少しは楽しみすぎた、ってのもあるだろうなと思いながらグッとカフェオレを飲み干した。
「それじゃあ、俺はそろそろ戻るよ。いい時間だし」
「ん。…うわっほんとだ俺も帰るか〜。ふわあぁぁ眠くなってきたかも」
光葉が大きく欠伸をかいて目を擦った。
「今から寝たら確実に修学旅行行けないな」
「それは嫌だ〜。カフェインブーストかけるかー!」
光葉はいいやつだ。すごく純粋で人付き合いが上手い。俺には少なからずそう見えるんだ。
こいつとは小さい頃からなんだかんだずっと一緒だった。別に学校では話さないけどこうやってたまに会うと話す。俺はこいつよりも話しやすいやつを知らない。どんな人間と出会っても、未だかつてこいつよりも話していて楽になれるやつがいたことはないくらいに、俺はこいつのことが友達として大好きだ。
河辺から階段を登って上の方に行って空を見上げるといい感じに太陽が輝いていて、心と脳がパッと目覚めたような感じになった。
2日半の修学旅行。たった2日半と考えるか長い2日半、と考えるか。だいたいの人は前者なのではないだろうか。俺は後者だ、2日半という約60時間という時間をこれからどう使うかは完全に自分次第だ。
この時間を無駄に使わないよう、しっかり楽しんで思い出を作れるようにと手を握りまたしてもそれを願った。
光葉と共に帰る俺の長い長い2日半の修学旅行はもうすぐ始まる。
「…楽しみ」




