7時間目 おかしいなぁ
その日奴は俺の目の前…いやクラスに突然現れた。
「涼介…」
数分前…
明日から2泊3日の修学旅行が始まる。表面上はそこまで楽しみじゃないと言っているが、本当はだいぶ楽しみだ。班のメンバーは神ってるし、周る建物などもかなり豪華になっているからだ。
そんな話を先生が朝の会で話している時だった、引き戸がずずっと開く音がした。
誰も遅刻してないのに扉が開いた音がしたからほとんどの生徒が扉の方を向いた、俺も例外なくそっちの方を向いた。
「涼介…」
そう、そこに居たのは不登校の親友細山涼介だった。みんな驚いていた。当然だ、いくら学校に行こうと誘っても断ることもせず無言で何も言わず登校を拒否する反応を見せてきたようなやつだ、みんなこんな反応になる。
だが、当の本人も予想だにしなかったであろうことが起きた。
「うおぉぉぉぉ涼介きたぁぁぁぁ!!!」
「50年振りくらいに見た感じだぁぁぁ」
「あーなんだろ、目から汗とまんねぇわ」
クラスの男子たちは涼介が登校してきた事を馬鹿みたいに喜んだ。
先生もそれを止めなかった。なんなら先生も「うおぉぉぉ!!!」って言ってたような気がする。
涼介本人は知らないが、こいつ、何故か不登校になってから学年での認知度と人気が信じられないほど上がったのだ。一部の奴らからは今最も登校を望まれている不登校第1位と勝手に言われているほどだ。登校を求めているのは涼介と特に触れ合ったことがないようなやつでもだ。
涼介は修学旅行で同じ班の爽斗から席を案内された。
話が変わるが今席は最初の席から席替えをして修学旅行の班の人が周りに必ずいるような形になっている。
俺の今の席は漫画とかで俗に言う主人公席でなんと隣の席は梨空だ。こっちから一方的に気になっているだけあって、最初決まった時はめちゃくちゃに緊張した。でもこの座席になってから2週間ほど経ったからか今ではそれも少しづつ薄れてきた。(まだ緊張しない訳では無いが…)
話が脱線したが俺の席は涼介の席とは遠く話をする機会が無かった。
隙間時間を使って話に行く事もできたが、涼介の登校を心待ちにしていた連中が他クラスからも来るため俺は自然と距離を取っていた。
4時間目の移動教室、準備が遅くなり一人で3階の英語室に向かった。
「乃蒼〜」
後ろから俺の名前を呼ぶ声がしたから振り返ってみるとそこには菜愛がいた。
「珍しいな、お前が梨空と向かってないなんて」
「トイレ行ってたら置いてかれちゃってさ〜気づけば教室には誰もいなくて〜」
女子なのにトイレとか普通に言うんだなと思っていると、なにか思い出したかのように菜愛が聞いてきた。
「ねぇ乃蒼は涼介と話した?2人って仲良かったじゃん?」
「まだ話してないよ。別にいつでもあいつん家行こうと思えば行けるし」
「あ〜家近かったよね、行ったことないけど場所は知ってる。てかなんでいきなり学校来たんだろー?乃蒼が呼んだん?」
さっきからだ、色んなやつに涼介の話をされる。親友だから、家近いから、他にもいろんな理由で聞かれる。その内容はなぜ学校にいきなり来たか、だ。
そんなこと知るわけない。あいつはいくら俺が誘っても少したりとも学校に行こうとしなかった。あいつの心に何があったのかは知らないが、俺の予想だと多分修学旅行が終わればいなくなる。
直感だからなんとも言えないが、なんだかんだ長い付き合いだから案外わかるもんなのだ。
「いや、俺は呼んでねーよ修学旅行前田家じゃねえの?親になんか言われたとかじゃね?」
「ふーんそっか」
階段を上り教室のすぐ近くになった時だった
「あと、今から言うことは忘れて良いからね」
「梨空のこと、好きだろ」
え
頭の中が「え」となった。上手く伝えられないがとにかく「え」となった。そのせいで英語の授業の内容はいつもの3倍は頭に入ってこなかったし、席が隣だから必然とおこる英会話のちょっとした時間も梨空と多分まともに話せていない。
それとちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、顔が頬の部分が熱かったかも、しれない。
なんなら給食がちゃんと喉を通っているのか怪しかったかもしれない。周りに心配されたことによってようやくぼーっとしてたのから開放されていつもと差ほど変わらない俺に戻った…と思う。
6時間目本当に最後の確認の時間が始まった。
持ち物と持ち込み不可な物。それと周る建物にホテルで泊まる部屋。夜ご飯は班ごとにホテルの隣の建物で食べなければならないため、そこで何を食べるか簡単に班で話し合った。
みんなワイワイしていたが多分俺はいつもより静かだったと思う。
何かを聞かれても誠空にちょっかい掛けられても、多分いつもより反応が薄かったと思う。
それと涼介とは帰り道に話せた。今日一日どうだったか修学旅行楽しみか、とかだ。それ以上踏み込んだことは聞かなかった、俺だかたら嫌だから。
「じゃあ、また明日涼介。遅れんなよ」
「うん、バイバイ」
その日は早く寝れた明日は6時までに空港集合だからそれもあると思うけど今日の俺はおかしかったからだと思う。
「はーーっふぅー」
翌日俺はよくあるような遅刻ギリギリに起きるとかはなく、普通にアラームで目覚めた。
「今日から修学旅行か。がんばって青春するか〜」




