10時間目 飛行機2
フライトが始まり30分程たった今、飛行機の中は出発の時に比べて静かになっていた。
俺のようにモニターを見つめてるやつや、友達同士で持ってきたお菓子をコソコソ笑いながら食べてるやつなど様々だ。
一方俺、白崎乃蒼の横一列に焦点を当ててみよう。右席の誠空、大雅、慎也の3人は全員爆睡。なんなら誠空はイヤホンしながら寝てる。俺の座っている左席はどうか…
???なんだよこれ、梨空が寝ていて菜愛はモニターとにらめっこ状態。これだけならどれだけ良かったか、問題は梨空だ。俺の肩にもたれかかっていた。
一大事だ。とにかく理由なんて考えてる暇がないくらいにまずい。いつからこうなってた?肩に重さ感じなかったんか?内心嬉しいんちゃう?頭の中はパニックだ。
遡るほどだいたい2分くらい前。アニメを1話見終わって爆音で見てたから耳を少し休めるためにイヤホンを外した時に気がついた。あれ?左肩なんか重くね?そう思って見たらどうだ、梨空がもたれかかってんだぞ、思春期男子にはダメージデカすぎるぞ。
で、今に至る。
果たしてどうするべきか、菜愛に相談しようにも梨空が真ん中にいて起こすかもしれない。それでこんなふうになってんの気づかれたら今後の生活終わる。確実に。
相談できたとしても菜愛は面白がって放置してくるだろう。
こんなこと考えてどのくらい経ったろう。体感かなり長く感じてるが多分5分くらいだ。だいたいそんなもんだから。今わかるのは梨空の女の子らしい柔らかい感触と少しの寝息が耳に伝わっていることだけだ。
ここで起きられたら色々面倒だろうから身動きも取れないし、だからといってこのままこの状況でフライトを終えるのもまずい。
俺は梨空を起こさないよう静かにスマホを開きLINE開いた。
やつに。
「光葉、突然だが女子が肩にもたれかかって来たらどうする」
「それは寝ているものとする」
「ほんとに突然だな」
「うーん…そうだな…」
「俺だったら普通に起こしてあげるかな」
「なるほど…ありがとう!」
「あいよ」
そいつは光葉だ。クラスのやつにLINEをするとなんか面倒くさくなりそうと思い、他クラスで一番信用できるやつを選んだらそれが光葉だった。
「…起こすのか…よし、覚悟決まった!」
その時だった。
「ん〜」と言いながら菜愛の方に寝返りを打ったのだ。
…………は?
寝返りを打たれたのに気づいた菜愛は俺の方を見てニヤッとしたあと、梨空をゆすって起こした。
「ほら、梨空〜起きろ〜」
「ん〜、はぁ〜おはよ」
「多分あと10分くらいで着陸すると思うから起きときな、もう下ってきてんだよね」
「はーい」
こんなに簡単に大きな悩みの種が消えた。心残りは菜愛のニヤッとした顔だけだ、後で何も無ければいいが…
気づけばフライトの残り時間も少しとなっていて周りで寝てたやつもなんか起こされてないのに次々と起き始めて最初のザワザワした感じが戻った。
俺もイヤホンやスマホをバッグにしまいすぐにでも降りることができるようにした。
思わぬ事件が起こった飛行機の移動時間だったがアニメも見れたし、その…ぶっちゃけいい思いもできたし…とにかくこの移動時間も修学旅行の醍醐味だなと思いながら飛行機から降り、俺は東京の地面に足をつけた。
「んーーーー!!!!東京だー!」
突如そんなに大声が聞こえその声が聞こえた方を向くとそれは瑠南の声だった。
「うるさいぞー」
「いで」
一緒にいた原井に頭を叩かれ瑠南は静かになったが、他の奴らもワイワイ言ってるからうるさいのには変わり無かった。
それは俺の周りも例外じゃない。
「めっちゃ寝てたわ〜」
「俺も」
「寝落ちしてた」
「朝早かったしな」
グループの男子4人で飛行機から降りて一回目の集合の前にトイレに向かっているのだ。
東京についてここまででの感想は地元に比べてやはり人が多いということだ。けどやっぱり頭の中から離れないものがあるのが事実だ。あんなのすぐに忘れる方が難しい、思春期男子にあれは刺激が強すぎた。
俺の中で梨空の何かが変わってしまったのはここだけの話




