99話「崩壊の招き人12」
ハクレイ は転移した。それも パンドラ を連れて。
前門に控えるのは巨体と八つの首を擡げた竜と竜を操る パローラ。
後門に控えるのはユニコーンに跨った一柱の戦女神の様な聖女の テレス。
そして、テレス の向こう側には パンドラ が呼び出した『厄災』が突然の出来事に状況の静観をしている。恐らく、新たな指示を待っているのだろう。
そして、それらを目の当たりにした パンドラ と ハクレイ は...
「あ、あ...貴女って言う人はっっっ!!!」
「ぎゃああぁっ!ごめんなさいっすっっ!!」
怒りが爆発し、反省も爆発していた。
「何故、急に来るのですか!」
「そ、それは自分もちょっとマズイ状況になってて...」
「だからあれ程訓練しなさいと言ったではないですかっ! いつもいつも何かを理由につけて休んでばっかりではなかったですかっ!」
「ご、ごめんなさいっす...」
「大体、貴女はいつもそうです! 適当な事ばかりやってるではないですか! それにこの前だって私の ぷりん を勝手に食べていたではないですか!」
「そ、それは後で自分のおこずかいから返したじゃないっすか!」
「返せばいいのではないのです! いつも適当な事ばかりやってる事を私は言っているのです!」
「う、うぅ...」
「ハクレイ様はいつも甘やかされていることにいい加減お気づきになってください! 貴方様もいつも心配の眼差しを向けていたのですよ! あ! 貴方様で思い出しました! ハクレイ様は何時ぞやわ、私のこ、ここコレクションを盗みましたわね!」
「いや、それは全面的に自分に正義があると思うっす」
「と、に、か、く、貴女はいい加減その適当な.....」
「行動を改めなさい!」と言おうとした パンドラ の言葉を遮る様に巨大な火球が パンドラ と ハクレイ を襲った。
「「ッ!」」
反応したのは パンドラ。左手を掲げそれを起点に一気に広がった闇が火球を飲み込み、収縮し.....消し去った。
「いい加減、茶番に付き合うのが面倒いんだけど」
「そう仰らずにゆっくり...」
視線の パローラ に向けた瞬間を見逃すことなく視覚となった パンドラ の背中に向けて真っ白な光が迫った。
「おっと! させないっす!」
しかし、その死角をかばう様に ハクレイ が動いた。地面から現れた鎖が白い光を受け止め切った。
「これを見逃したら流石に言い訳できないっすからね!」
「お遊びは私達が来る前に済ますべきですよ?」
「むぐぐぅ...」
「お遊びではない! 死活問題なのだ!」 と言いたそうな表情で テレス を睨み見つける ハクレイ の背中に パンドラ が背中を合わせてきた。
「で、ハクレイ様、この際こうなってしまった事は致し方ありません」
「ゆ、許してくれるんっすか!?」
「許しません。罰は後できっちり受けてもらいます」
「しょ、しょんなぁ....」
「それよりも、あの魔法使いは?」
「アレは恐らく賢者っす。自分の『八岐大鉄蛇』を真似て、しかも上回れたっす」
「そうですか。『八岐大鉄蛇』を...」
「コッチは何者っすか? メチャメチャ白くて眩しいんっすけど」
「そちらは聖女です」
「聖女っすか!? 聖女ってもっと大人しい感じかと思ってたんすけど....なんでこんな武人みたいになってるんっすか?」
「知りませんわ。それよりも...」
「そうっすね。どうっすか? どうにかなるっすか?」
「貴女が来なければ...ッ!」
「ゲッ!」
情報を交換していた パンドラ と ハクレイ の元に新たな攻撃が仕掛けられる。
それは、水と雷の混合魔法。一つの首から放たれた膨大な量の水。そして、それに巻きつく様に伝わり、進むバチバチと鳴る音。
放射される瞬間に気づいた パンドラ はいち早く離脱し、その動きに合わせて ハクレイ もその場から逃げる。
「いやはや、調整は難しかったが何とかできたよ。帰ってからやっては意味が無いと気づいたからね」
そう高らかに嬉しい声を上げる パローラ。見れば パンドラ と ハクレイ 元居た位置はパックリと裂け、更に大きな亀裂が所々に入っている。それだけで水圧と電力の強さを思い知らされる。
「ハクレイ様! 10秒時間を稼いで下さい!」
「じゅ、10秒っすか!?」
「加えて賢者を更に30秒足止めしたら今回の罰の軽減を考えましょう!」
「マジっすか!? 30秒っすね!」
「そんなに持たせないよ。テレスッ!」
「承知していますわ! アインッ!」
「クルゥウッ!」
「コッチも行くよ! 『八岐大鉄蛇』!」
「何技名パクってるっすか!」
テレス の合図と共にユニコーンの頭部の角が伸びた...否、伸びたのではなく本来あった角を軸に強化された。より硬く、長くなったそれは2mにまで達するだろう。
それと同時に動いた八つの首。同時に開いた顎門からは魔力の渦を感じる。それも一つ一つが膨大で、緻密な渦はどれも全く同じ量で、同じ速度で渦巻いている。
「『聖滅する神角』! 貫きなさいッ!」
「超滅殺究極破壊八砲....でいいや。放てッ!」
前からは八つの属性が混ざり最早消滅だけを存在意義とした一撃が迫り、後ろからはユニコーンがその伸びた角を向け地面を削りながら突進してくる。
「技名くらいちゃんと考えろっす!」
ハクレイ は パンドラ の服を掴んだ。そして...
「空間魔法! 座標固定! ....」
ユニコーンの角が届くその瞬間を狙いーーー
「転移!」
ーーー消えた。
「....甘いよ!」
ハクレイ が現れた先は衝突がギリギリ届かない上空。そして、移動先を感知した パローラ は直ぐ様新たな魔法を組む。
「いい作戦だ! でも上空じゃ逃げられない! 」
「甘いのはアンタっす! 後20秒なら...自分の勝ちっす!」
狙われることを見越した転移。固定された座標を足場に ハクレイ は一直線に パローラ の元へ跳んだ。
そして、右手を前に突き出した。
「『束縛封印』ッ!」
ハクレイ の声と共に莫大な量の鎖が ハクレイ から生み出された。
「その鎖はすでに攻略済みだよ! 火竜!」
パローラ の声に反応した一つの首。真っ赤に染め上がった首は口から轟々と燃える炎を吐き出した。
「これで溶ければ君は無防備だ!」
「そんなヘマする訳ねえっす!」
少し前ならば融解する程の熱量。しかし、少し前の鎖とは違う鎖は一切溶ける素振りを見せず パローラ の元まで伸びる。
「な、なに!?」
溶けると思って次の攻撃の魔法を準備していた パローラ は驚愕に包まれる。
「しまっ...」
そして、鎖は パローラ の元まで到達し、手足を拘束し、魔法を防ぐために口を塞ぐ。更に余った鎖はグルグルと パローラ に巻きつき一つの鉄色の球体を創り出した。
「はぁ....はぁ....これで...」
しかし、球体は先程までの強度を嘘のように失い....
「20秒...合計...30秒っす...」
パリパリパリンッ!、と硝子が大量に割れる音と共に霧散した。そして...
「やってくれたね!」
中から現れたのは目を大きく開き、怒りに顔を染めた パローラ。もうそこには気怠げさも、遊び心も無い。
「もう許さないよッ!」
怒気を含んだその声に八つの首が反応し、顎門を開き再度あの消滅の一撃を放った。
「消えて無くなれッ!」
「....後は...頼みますっすよ」
フラリと体を崩しながら零した一言。その小さな、小さな一言は...
「全く、10秒に30秒なら合計は40秒ですよ」
パンドラ が側で溜息を吐きながら聞いていた。倒れる ハクレイ の体を右手で受け止め、開いた左手を消滅の一撃に向ける。
「闇よ...」
たった一言。そのたった一言で左手からはかつて見たことのないほどの量の暗黒...否、それすらも生温い深淵が現れた。
消滅の一撃は深淵によって受け止められ、その端から消えて行く。
完全に受け切った消滅の一撃は土煙すらも立たすことなく消え去ってしまった。そして、唯一立っていたのは パンドラ ただ一人。
「ふぅ、此処からは...」
禍々しいほどに揺らめく深淵を覗かせる黒のオーラ。それは全身に纏わり付くように蠢いている。
美しかった紫の瞳は赤色となり爛々と輝いている。
白く滑らかだった腕や顔、そして恐らく足には、黒の奇怪な模様が現れている。
「私がお相手いたしましょう」
美しかった パンドラ の姿はなく、一体の魔物が パローラ と テレス を順に見て、そう言った。
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名前:ハクレイ
種族:妖種
性別:女
Lv:65 → 78
HP:9,900 → 11,850
MP:13,200 → 15,800
技能:束縛封印(-)、地縛(-)、鞭術(4→5)、気配探知(4)(New)、家事(3)(New)、空間魔法(3)(New)
称号:迷える者、封印されし者、抜け師(New)
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ふぅ、何とか一段落しました。
にしても、この2話で技名をポンポンと...流石に作者の技名ストックは底を着いてしまいましたよ...
なんでこんなに新技出しちゃったんだろ...




