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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
第二章 対抗戦編
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第三十二話 合宿一日目

 僕達は今剣心さんの車に乗っている。向かう先は合宿を予定していた剣心さんの別荘。

街を抜け田舎道を走ること1時間程経過した。僕は変わっていく景色を楽しみながら皆と話している。

今日の合宿に参加するのは、チームのメンバー全員と剣心さん……それと何故か月火が居る。

 何故、月火が来たのかは今日の朝に遡る―――。


「お兄ちゃん合宿行くの!?」

「え、言ってなかったっけ」

「言ってないよ、しかも剣心さんの別荘で有名な観光地にあるって……、ちょっとお兄ちゃん待っててッ!」


 ドタバタ足音を鳴らし自分の部屋へ入っていく月火を見送り、僕は仕方なく待つことにした。

10分が経過するが月火はまだ部屋から出てこない。僕はスマフォの時計を確認し集合時間が迫っていることに焦りを感じる。

更に30分が経過すると、ようやく部屋の扉が開いた。


「おまたせ」

「その手に持っているのは何?」

「え、キャリーケースだけど?」

「まぁ……何となく想像できたけどさ、一緒に来るのなら剣心さんに一応確認取るからな」

「おねがいッ!」


 僕はやれやれと肩を竦めながら、剣心さんの電話を掛ける。すぐに発信音が鳴り止み、声が聞こえ始めた。


「おい、優。早く来いよ、皆着てるぞ」

「仁か。ちょっと月火が来たいって言ってるんだけど剣心さんに聞いてみてくれないか?」


 僕は仁に聞くと後ろに剣心さんも居るのか話し声が聞こえてくる。

何やら電話越しに聞こえる声が騒がしい気がする。全員集まっているのだから無理もないかもしれないが、皆来るのが早い、まだ集合時間の30分前なのだが……。


「いいらしいぞ、女子達も喜んでるみたいだし」

「わかった」


 そこで電話は切れる。

月火に会話の内容を伝えると、飛び跳ねて喜んでいる。これが朝起こった出来事だ―――。


「先生、お菓子入ります?」

「ありがとー。それと学校以外だったら先生じゃなくて月火って呼んでいいよ?」

「わ、わかりました。つ……月火さん?」

「ちゃんでもいいんだけど仕方ないね」


 女性陣三人は楽しそうに話している。

僕も混ざりたいが今は遠慮しておこう、それより後ろに座っている拓哉が不機嫌そうにしているのはどうしようか……。

悩んだ結果放置する事にした、拓哉くんコワイ。


 車が発車して既に二時間が経ちついに剣心さんの別荘に到着した。

皆降りて全員が目を丸くした、金持ちだとは思っていたがここまでだとは思っていなかった。

 目の前にある別荘は普通の家ではなく邸宅と言ったほうがしっくりくるだろう。

広い庭には噴水もあり芝生が敷き詰められている、家の外見は白いレンガ造りをしており柳生家の道場とは正反対な洋風な家である。

車庫には車が五台程止まっており、あまり詳しくはないが全部高そうな車だ……。


「すごい……」

「すまないが、あまり使っていない別荘だから少し埃が溜まっているかもしれん」

「いえ、立派な家を貸して頂きありがとうございます」

「いやいいんだ、息子の頼みとなっちゃ断るわけにも行かない。それじゃ中を案内するよ」


 剣心さんは屋敷の扉を開き中へと案内しはじめた。

僕は中に入ると更に驚いた、外もそうだが中はそれ以上だ。扉の奥は広いエントランスになっており目の前には装飾のされた大きな階段が目につく。

壁には絵画が掛けられており、よくわからない美術品の様なものも置いてある……。剣心さんの和のイメージからは想像できない内装だ。


 次に部屋に通される、一人一部屋あるようだ。

そしてトレーニングルームやプールなども完備しているらしい。楽しい二週間になりそうだ。


「荷物も置いたし、合宿という事で練習始めますかッ!」


 僕がそう言うと拓哉の表情が少し和らいだ気がする。

しかし拓哉以外は少し沈んだ様子だ、どうやら観光地に来たのだから遊びたいのだろう。

だがここは心を鬼にしなければ、合宿の意味がなくなる。遊ぶのはやることをやってからだ。


 皆は渋々了承してくれた、全員で移動していく。

庭は異能力を使っても近所に迷惑がかからないほど広い、練習にはうってつけだ。

ただ試合相手が居ないのは難点だが仕方がないだろう。


「相手なら俺がしてやろうか」


 それは剣心さんからの申し出だった、最初はあまり口出しをしないと言っていたが練習相手になるくらいならいいだろうと考えたのだろう。

だが僕達は5人である、流石の剣心さんも一人で相手にするのは無理があるのではないだろうか。

僕が大丈夫なのだろうかと考えていると顔に出ていたのか補足してくれる。


「伊達に柳生家の当主じゃない、構わず異能力を使うといい」

「わかりました……」


 それなら胸を借りる気持ちで相手を努めよう。

愛莉が居なくなり早霧が入ったことで陣形を変えた事がどうなるか楽しみだ。


 まず僕が考えた陣形は、先頭に僕と仁、後衛に他の三人だ。

これが基本のスタイルになるだろう、僕と仁が敵と真正面で戦いそれのアシスト兼補佐を渚と拓哉が、そしてサポートとして早霧が後衛で支援する。


「準備はいいようだな、いつでもいいぞ」


 剣心さんの言葉が開始の合図となった。

僕と仁はその場で待機し、まず先制したのは拓哉の異能力だ。重力操作による一定範囲を加重させ動きを抑える。

最初、僕達も範囲内に入り影響を受けていたが、時間差で範囲内に入ることで敵よりも遅く加重されていく事に気づいた。

だがこの作戦は敵が動かないことを前提に考えられている。前までは愛莉が牽制し敵の動きを阻害していたが今回はその役を渚が担っている。


 輸血パックを切り裂き中身を地面へと撒き散らす。

だが人工血液は地面へ落ちず空中に浮遊したまま形状を変えていく、その形は刃へと姿を変え剣心さんへと飛んでいく。

速度はあまり早くはないが牽制にはなる、剣心さんは大太刀を振り回し血の刃を斬っていくが斬っても形状を戻し再び剣心さんへと攻撃していく。

この攻撃にもデメリットはある、この異能力を使用するには集中しなければならない。それを乱すことが出来れば異能力は止まる。

しかしそれをさせないのが拓哉の異能力だ、徐々に重さを増していく内に早霧の異能力を対処するのに時間がかかる。

だがいくら時間が経っても剣心さんの動きは鈍らない、既に体が重くなり立っていることもやっとなレベルになっているはずなのだがおかしい。


「仁、剣心さんの異能力ってなんだ?」

「えーっと確か……、身体能力の強化だったかな」


 身体能力強化は有名な異能力だから僕も知っている。

力や俊敏さなどを通常の数倍まで上げる異能力だ、オンオフ切り替えも出来るし前に羨ましいと考えていたのを覚えている。

だから比重の重くなった一帯でもあそこまで動くことが出来るのだろう。


「なら渚の異能力と合わせて僕らも行くしか無い」

「そうだな、模擬戦だし相手は親父だ。負けても問題ないし俺らも突撃するか」

「おうッ!」


 僕は短剣を構え、仁は太刀を鞘から取り出した。

今から僕達も戦いに参加する、だが気をつけなければならないのが拓哉の異能力だ。

自分の体が重く感じたら、すぐに範囲の外へ出て一旦解除しなければならないのが面倒だ。


「おっ来たか」

「親父、行くぞッ!」


 飛び交う血の刃を裂けながら仁は巧みに太刀を操っていく。

刃がぶつかり合い甲高い金属音が鳴り響く、僕は仁の相手をしている所を狙っていく。

だが異常な視野の広さで僕を把握しているのか死角からの攻撃にも蹴りが飛んでき僕は吹き飛ばされる。この人は後ろにも目がついているのではと錯覚してしまいそうだ。


 仁も膳戦しているように見えるが押されている。

徐々に後ずさりし防戦一方の状況だ、だがその状況も剣心さんの上段の構えから放たれた一撃で仁の体は吹き飛ばされた。

こうなってはどうしようもない、前線が崩れれば後方はどうしようもなくなってしまう、勝負ありだ。


 こうして剣心さんとの初めての模擬戦は敗北という形で幕を下ろした。

 合宿が始まりましたッ! それと剣心さんの強さがやばい(小並感)

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