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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
第二章 対抗戦編
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第三十話 合宿と愛莉の行方

 雨が降り続け湿気の多い鬱々とした梅雨も終わり、夏のカラカラとした空気が心地いい。

夏、それは学生にとって一大イベントがある月だ。それは夏休みである。

そして僕が通っている異能力育成校でも夏休みはある、7月20日から約一ヶ月間。今週が終われば夏休みに入る。


 教室に居る生徒達も少し浮かれ気味のようだ、夏休みは何をしようか考えているのだろう。

斯く僕も楽しみにしている、夏休みの日程は既に決まっている。

休み明けに行われる選抜戦に向けて合宿を行うのだ。メンバーは選抜戦メンバー全員で場所も既に確保している。

合宿場となる場所は柳生家の別荘、海と山に囲まれた観光地にあるそうだ。


 合宿は夏休み中の1週間を予定している、そして合宿には剣心さんが保護者として同行するらしい。

仁は恥ずかしがって来なくていいと言っていたが剣心さんは絶対に行くと考えを変えず仁が折れる形となった。

剣心さんは合宿中の指導に関して口出しはしないらしい、理由は単純に不公平だからだ。


「んっ―……終わったぁ」

「やっとだな、あと二日で夏休みだし気合いれねーとな」

「それより今日も愛莉は欠席なのかな」

「最近多いよなー、なんか家庭の事情がとか聞いたけど。あんまり詳しくは話してくれないんだよな」

「まぁ時々来てるし大丈夫でしょ」


 僕は再び授業の疲れを取るように背伸びをする。

空席の椅子、愛莉の席だ。7月に入ってから愛莉はあまり学校へ顔を出さなくなっていた。

前に少し聞いたが母子家庭で母が病気を患っていると言っていた、その看病をしているのかもしれない。

次に学校に来た時は僕に何か出来ないか相談してみよう。


「愛莉は合宿参加できるのかなー」

「どうだろうな、一応行くとは言っていたが……早霧にも聞いてみるか」


 僕達は早霧の席へ行き最近の愛莉の事について聞いてみるが、早霧も知らないようだ。


「まぁ明日にでもわかるだろ。お、先生が来たな」


 月火が来ると終礼が始まる。

何時も通りの終礼と思っていたが、どうやら違うようだ。何か全員に向けての報告があるらしい。


「先日から休んでいた愛莉さんから前日電話がありました。家庭の事情との事で学校を辞めるとの事です。愛莉さんからは短い間だけど楽しかったです、とだけ伝えてくださいと……。寂しくはなりますが愛莉さんの気持ちの分も皆さんは頑張ってください。それと愛莉さんと同じチームの人は終礼後に帰らず待機してね」


 月火はその報告で締めくくると終礼は終わった。

愛莉の突然の自主退学に僕は呆気にとられている、家庭の事情ならば仕方がないが一言あっても良かったのではないだろうか。

僕はスマフォを取り出し愛莉にメッセージを飛ばした。内容は『いつでも頼ってね、それとまた遊ぼう』とだけ伝える。

メッセージはすぐに既読が付き『うん』とだけ返事が返ってきた。


 僕はスマフォをしまい皆の所へ集まった。

皆も表情が暗い、僕と同じ気持ちなのだろう。付き合いは短いが同じチームで互いに高めあった仲である。


「皆集まっているようね、そんな暗い顔しないで、またこれからも遊ぶことは出来るじゃない。気持ちを切り替えて本題に入るね」


 月火の言う通り一生会えないわけでもないのだ、気を取り直し月火の話へと耳を傾ける。

話の内容は選抜戦の事だった、愛莉が欠け一人足らない分をどうするかの話である。

チームのメンバーは五人、戦闘科のクラスは60人で余っている人は居ない、この場合どうするのか学校は決めているのだろうか。


「心配もわかるけど落ち着いてね、欠けた一人の穴は既に学校側で決まっています、その一人はサポート科で名前は早霧ちゃんっていいます」


 ここで意外な人物の名前が出て僕は驚く。

早霧ちゃんは愛莉の友人で異能力は回復系とだけ言っていたが、本当に戦えるのだろうか。

そして愛莉が居なくなった事は他にも考えなければいけないことがある。それは今まで練習してきた陣形が使えなくなる。

早霧ちゃんを入れ改めて話し合う必要があるだろう。


「選抜戦まで僅かしか時間が無いけど皆で話し合って愛莉ちゃんの穴を埋めるよう頑張ってね」


 そう言い残し月火は教室を出ていく。

急遽決まった事に僕達は混乱したが、迅速な対応は非情に助かる。早霧ちゃんが合宿に来れるのなら合わせる時間はある、それとサポート科ならば戦闘に加わらない分、調整も幾分か楽だろう。


 帰る前に僕はスマフォを取り出す。早霧ちゃんとは以前連絡先を交換したのだ。

明日時間があるのなら空けて欲しいと旨を伝えると既読はすぐに付き『了解♪』と返ってくる、なんか可愛いい。

僕はスマフォを閉じ今日も鍛錬へと向かうのであった―――。



 次の日、僕はいつものように学校へ登校した。教室へ入ると既に愛莉の机は無くなっている。

本当に学校を辞めてしまったのだ、だが気がかりで仕方がない。選抜戦の練習で愛莉は毎日汗を流し頑張っていた。

合宿にも乗り気だったのにだ……。昨日の夜、月火と話したがやはり詳しい内容までは知らない。


 何か引っかかりを感じるが答えは出ない。

あれから愛莉にメッセージを飛ばすが既読も付かず返信はない。

だが答えの出ない事を考えていても仕方がないと、一旦思考を辞め、学業に専念していく―――。



 授業も全て終わり放課後になる、今から選抜戦メンバーが集まり話し合いを始める。

既に早霧ちゃんもAクラスの教室に来ており顔合わせは済ませてある。


「それじゃまず自己紹介だね」


 僕はそう切り出し各々が自己紹介をしていく。

同じクラスの3人は既に知っているが、早霧ちゃんの事はあまり知らない。異能力も詳細までは聞いていないのだ。


「私の名前は桐原 早霧っていうの、気軽に早霧って呼んでね。それと私の異能力は―――」


 早霧は異能力を紹介していく。

早霧の異能力は身体回復、致命傷以外の傷を即時に回復する事が出来る異能力である。

回復には回数の制限があるが自分以外の人でも使用することが出来るらしい、陣形でいうと後方支援となるだろう。


「それじゃ早霧って呼ぶね、それと一つ聞きたいことがあるんだけど、夏休み中に合宿をするんだ。良かったら来ない?」


 僕は早霧に問いかける。

顎に手を当て考えていると、チームで唯一の女性となってしまった渚が早霧にお願いをする。

正直男子ばかりの中に女の子が一人は心細かっただろう、新しく加わった人が早霧で良かったと思う。


「そっか、わかった。予定空けとくね」

「やったーこれから宜しくね早霧ちゃんッ!」


 渚は早霧の手を握り上下に振っている、よっぽど嬉しかったのだろう。

こうして僕達は新メンバーを加え、夏休みに行う合宿の調整を行っていく。


 調整とは言っても決めることは少ない。日程や持っていくもの、そして移動手段などだ。

日程はすぐに決まった、7月23日。夏休みに入って3日後である、そこから二週間みっちりと鍛えていく。

持っていくものは、合宿地が海もあるという事で水着も持参する事にした、移動手段に関しては剣心さんに任せよう。


「水着か……持ってたっけか」

「それじゃ皆で買いに行こっかッ!」

「さんせーい」


 女性陣が妙に盛り上がっている。僕と仁は水着を持っていないので買いに行くことには賛成だが、先程の自己紹介から一切喋っていない拓哉が気になる。

僕は拓哉はどうするのか聞くと、俺はいいと素っ気なく答えた。


「何時行こうか」

「21日でいいんじゃない?」

「それじゃ予定空けとくね、そのついでに合宿に必要そうな物も買い足しておこうか」

「わかった、それじゃ21日の昼にショッピングモールで集合で!」


 皆はそれに同意するように返事をする。

何だかレジャー気分だが、合宿中にも息抜きは大事だろう、ふと仁に視線を向けると手を前に突き出し親指を立てていた。

仁の考えはわかる、合宿といえば水着イベントだろうと言いたげな表情だ。僕もその意見に同意するように親指を立てた。

 猫要素が・・・。

愛莉が居なくなりましたが次からは海!山!そして合宿!


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