↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
第一章 成長編
29/33

第二十九話 小さな村の英雄

 

 僕は意識を取り戻すとそこは親戚の家の布団の中だった。

意識を失う前の記憶が朧げだ、炎を酷使しすぎてから金剛さんが現れて……。


「金剛さんッ!?」


 今になって気付く、何で金剛さんがこんな田舎村に居るのだろうか。

ここに来ることは以前に話はしていたが、今日は非番だと言っていたし……。わからない。

あれから鬼達はどうなったのだろうか、頭から記憶をひねり出すように唸る。


 思い出した、あの後僕は金剛さんに助けられ、炎をより強める一心で使い続けたのだった。

あの時の蒼い炎はいったい何だったのだろうか……、謎は深まるばかりである。

 そういえば僕の腕はどうなったのだろうか、確認するように左手を動かすと感覚がある。

どうやら、あの時の現象が起こったらしい。僕はまた死んでしまったのか……。


「お兄ちゃんッ!」


 扉の開く音と共に月火の声が部屋の中に響き渡る。

僕は体を起こそうとするが動かない、異能力を酷使しすぎた影響だろう、横になったまま月火の方へ視線を向ける。


「心配かけてごめん」

「いいの……、お兄ちゃんのおかげで皆助かったし、無事に戻ってこれたから」

「そうか、助かったのか……。それより金剛さんは何でここに?」

「私が電話をかけたら『すぐにいく』って言ってたけど本当に来たんだね」

「そうか、月火が呼んでくれたのか。助かったよありがとう」


 僕は月火へ心から感謝する、。

あの時、金剛さんが駆けつけていなかったら僕は鬼に何度も殺されていただろう。

後で顔を合わせたらお礼を言おう。


「優君……、本当にありがとう、村の皆を助けてくれて」

 

 月火の後ろには義之さん達が立っていた。僕に心から感謝しているのだろうという事が表情から読み取れる。

だが、もう少し早く行動していればと悔やんでしまう。僕が起きていてすぐに家を飛び出していれば助けられた命はあっただろう。


「そう悩まず、助けられた命があった事を考えなさい。優君は出来るだけの事はやったのよ……、あのままじゃ私達は殺されていたのを助けてくれた。君は村の英雄なんだから―――」


 佳苗さんが僕に優しい声で伝えてくる。


 そうか……、僕が英雄か――。

その言葉を聞き満たされていく気持ちになる。血反吐を吐き倒れそうになってまで戦った事は間違いでは無かったのだ。

助けられなかった命もある、だがそれ以上に助かった命もある。今回の事は僕の糧となるだろう。

次、事件に巻き込まれた時はより大勢の人達を助けることが出来る様に更に努力を積み重ねていこう―――。


「おっ、起きたか」


 次々に部屋へ入ってくる人達、次は誰かと視線を向けると。扉の前には金剛さんともう一人男性が立っていた。

二人とも私服を着ており対異能力機関の制服を着ていないことから察するに非番なのに出てきたのだろう。


「ありがとうございます、本当に助かりましたッ!」

「いや、いいんだ。礼なら姉ちゃんと無理して連れてきたこいつに言っといてくれ」

「あの……、隣の方は?」


 隣の男性は会釈すると僕の問に答える。

彼の名前は『船田 燿』、対異能力機関に所属しているとのこと、今日は非番の中、金剛さんに無理やり連れてこられたらしい。

何故彼が連れてこられたのかには理由があった、それは異能力である。彼の異能力は『瞬間移動』、遠く離れた空間に瞬時に移動する事が出来る能力。

その異能力のおかげで月火からの連絡があった直後に来ることが出来たのだ。


「こんな体勢で申し訳ないのですが、その節は本当にありがとうございます」


 僕は横になったままだが礼を言うと、船田さんは頷いた。


「それじゃ今日は一旦帰るわ、報告とか色々しなきゃいけないからな。優、帰ったら少し話があるから家に来てくれ」


 そう言って二人は帰っていった。

部屋に取り残された四人に会話は無い、だが居心地の悪さは感じなかった―――。


 

 ―――僕はあれから体は回復し動けるようになったはいいが、村人達に呼ばれては食事を振る舞われ。

あるお父さんは俺の娘はどうだなどと色々忙しなく動いていた。

月火はこれも助けた人達の恩返しだと思って面倒くさがらず全部対応することと釘を刺されている。


 だがそんな忙しい毎日も終わり、僕は今日帰ることとなった。

予定では一泊二日のハズだったが二泊してしまった。休日が消えてしまったのは少し悔やまれる。


 僕達はバスに乗り込もうとすると、村人達が皆で見送りをしてくれた。

全員、僕に対しての感謝の言葉を告げている。僕は最後に振り向き一礼してバスへと乗った―――。


「お兄ちゃん、ありがとう」


 月火の小さな呟きが聞こえたような気がした―――。



 帰宅後、既に夕方になっていたが、金剛さんからの呼び出されていた事を思い出し急いで家を出る。

何の話なのだろうか、行ってみないことにはわからないが、あの時の金剛さんの様子からして良い報告ではないのだろう。

沈む気持ちを抑え僕は金剛さんの家へと向かった。


 家に着きインターホンを鳴らすと、すぐに門が開く。

鍵は開いているらしく家の中へ入ると出迎えてくれた。すぐにリビングへ移動し二人は対面した座った。


「呼び出してすまない、今日はこの間の鬼の事で言うことがある」


 金剛さんは続けて言葉を発していく。

鬼の事でわかった事は二点あるのだとか、1つ目は鬼が人工的に作り出されたものである事。

何やら異能力機関内で調べた所、薬品反応が出たらしく細かく細胞や血液などを調べて明らかになった。

だが人工とは言っても生きている、本能のまま行動し結果、畑や人を襲っていたのだろうと結論付けた。


 そして2つ目は今回の事件が人為的に行われたものらしい。

異能力機関での見解としては人工生物の実験場として彼処の村が使われていたのかもしれない。

理由も誰が放ったのかもわからない、ただ何かが起ころうとしている。そして今回、事件で更に優は注目される事となるだろう。


「これから選抜戦や学校の行事があるが……、優は対異能力機関で働いてみる気はないか?」

「僕は……、学校に通いたいです。もし自分の力だけではどうしようも無くなった場合、その時は改めて相談します」

「そうか、自分の道は自分で決めるものだ。だが無理はするな悲しむものは沢山いるのだから」


 僕には悲しむ人達がいる。

仁や愛莉や早霧といった同級生は勿論。金剛さんや剣心さん。そして月火。目覚めて間もないが色々な人と知り合い、色々な出来事を体験してきた。

二度も死に鬼や黒装束の人と殺し合いをした。もしかしたら僕は巻き込まれていく体質なのかもしれない。

しかし体質を憎んでいても仕方がない。僕が人を助けるチャンスが増えると前向きに考えておこうと僕は決めた―――。



 ◇◇◇◇


 とある廃墟の中、彼らは居た。

黒装束を身にまとう謎の組織、その幹部達が全員揃っている。今日、彼らはある実験を行っていた。

比較的に異能力機関の関与が遅れるであろう村を選び、新戦力となり得る鬼達を試す為に、だがそれも優と金剛さんの手によって失敗に終わる。


「おい、てめぇのせいで失敗したじゃねぇかッ!」

「俺にも事情があったんだよ」

「まぁいい。それよりあの少年は誰なんだ」


 全員が頭を悩ませていたのは金剛さんでは無い優の事だ。

金剛さんは名が知られており情報はある、だが優は別。一般のそれも学生である優があの鬼と対峙して勝てるはずがないのだ。


「そいや、あの少年って確か―――」


 一人の男が顎に手を当て考え込む。

言葉を発した男は花見の日、優が一撃を叩き込んだ女を連れ去った男だ。あの時の出来事を全員に話していく。


「お前、それ何で話さなかった」

「いや、面白そうでな」

「次からは報告をしてくれ。それより不死か……使えるかもしれんな」



 優は今回のことが決定打となり、組織から本格的に狙われる事となるのであった―――。

 今回で一章が終了となります! 次話から激戦の二章にッ!(なるといいな)

ブクマ、評価、感想は僕の励みになります。僕の作品を気に入っていただけたら付けていただくと嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。