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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
第一章 成長編
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第二十六話 親戚の家

 月日は流れ既に6月になろうとしている、あれからも毎日、金剛さんと仁で鍛錬を続けている。

変わったことと言えば、仁に模擬戦で何度か勝利する事が出来た事だろうか。

新しく発症した炎の異能力はそれだけ強力だった、近接戦しか出来ない僕の戦闘の幅を広げたのだ。

 だが仁が太刀を使いはじめてからは勝率がぐっと下がったのが悔しい。長いブランクがあるが、それをすぐに取り戻すほどのセンスは正直羨ましい。


 それと変わったのは仁との模擬戦だけではない、選抜戦メンバーの息も最近合ってきている。

最初、ちぐはぐだった連携も取れるようになりスムーズに皆が動けている。これも剣心さんのおかげだろう、本当に感謝している。

 メンバーの一人である渚も輸血用の人工血液を操作する事が出来るとわかってからはチームの動きにも変化が現れ始めていた。僕も炎を扱い、近接と遠距離を両立させ戦っている。

仁も太刀を使い始め、最初は危うく刃が味方に当たりそうにはなっていたが、今では間合いも把握した。


 そして今日、月曜日が祝日という事で学校は三連休に入ろうとしている。僕はこの三連休で何をするかは決めていた。 

この三連休ですることは、月火を引き取ってくれた親戚の家へと挨拶に行くことだ。前々から挨拶には行こうとしていたが、二人の時間が合わずに行くことが出来なかった。

 しかし今日は月火も三連休という事で急遽決まった。親戚の家は中心地から離れており電車をバスへ乗り継ぎしないと行けない田舎にある。長い道のりだが、久しぶりの小旅行の気分で僕は楽みにしている。

 親戚の家では一日滞在する予定だ、行くまでに時間が掛かり家に着く頃には最終のバスが出るからだ。

十数年ぶりに会う親戚のおじちゃんとおばちゃんは元気にしているのだろうか、楽しみだ。


 今、僕達は電車に乗っている。窓から見える景色は田畑が辺り一面に広がっている。

6月という事もあってか田植えをしている人達が目につく、昔は僕も田植えをしていた事もあったなと思い出していた。何とも言えない泥の感触が好きで月火と田んぼで遊び怒られていたのは良い思い出だ。

 

 そんな事を考えているとどうやら終点に着いたらしい。ここで降りて次はバスに乗り継ぎ更に山の奥へと行く。僕はバスの時刻表を見て驚いた、二時間に一本しか出ていないのだ。ここに住んでいて乗り遅れたら遅刻は免れないだろう。そのあたりは不便だが田舎には良い所もたくさんある。

 たとえば―――。


「お兄ちゃん、ボーってしてないで早く、バス行っちゃうよ」

「わかった、今行く」


 田舎の良さを考えていたが、月火に呼ばれ僕は慌ててバスに乗り込んだ。

向かう先はここからバスで1時間程山道を登った場所にある、僕はその間に仮眠を取ることにした。


「お兄ちゃん、起きて」


 体を揺すられ僕は目を覚ます。バスはまだ走っているようだが既に日が沈みかけ辺りは暗くなっていた。どうやらもうすぐ着くようだ僕は眠気を覚ますように背伸びをした。

 起きてから数分後にバスが停まる、どうやら目的地に着いたらしい。

  

 僕はバスから降りると、辺りを見渡した。ここに来るのも十数年振りになるが変わった様子はない。

数軒の家が立ち並ぶ田舎村、コンビニも無く道を照らすのは家の明かりのみ。

月火は歩き慣れた様子で暗い道をずんずんと進んでいく。 


「着いたよー」

「久しぶりだけどあまり変わってないね」


 親戚の家は僕の記憶にあった通りの外見だった、少し古びれているが風情のある日本家屋である。 

月火は、ただいまと言いながら鍵の掛かっていない玄関を開ける。不用心だと思うがこの村の人達の家は、鍵の存在を知らないのかと疑問に思うほど掛ける習慣が無い。人が少なく泥棒も居ないから出来ることなのだが、僕としては不安になる。


 玄関を開けると、足音が近づいてくる。

最初に現れたのは親戚のおばちゃん、名前は確か佳苗さんだったか……会ったのが昔の事であまり思い出せない。


「月火ちゃん良く帰ってきたね……あらあら、優君もあまり変わってないわね……あれ?本当に変わってないね」

「お久しぶりです。お元気そうでう良かったです」


 佳苗さんは僕の顔を見ると驚いていたが無理も無いだろう、10年も経っているのに容姿はそのままなのだから。だがそれ以上の事は聞いてこない、長生きすればそういう所にも気が回るのだろう。僕もあえて話を掘り返す事はせずそのままにしておく。

僕達は佳苗さんの案内で奥へと通されると、そこにおじさんも居た。おじさんの名前は義之さんだったかな。


「月火にそれと優君か、元気そうでなによりじゃ」

「お久しぶりです義之さん。突然の訪問なのに歓迎していただいてありがとうございます」

「いいんじゃ、それより二人とも飯はまだだろ、佳苗が用意するからここで待っておれ」


 義之さんが佳苗さんに飯の準備はまだかと言うと、台所から皿の音が聞こえ始める。

料理を温め直しているのだろうか、良い匂いが部屋まで漂ってくる。昼も軽食で済ませていたから、匂いを嗅ぐだけで涎が溢れて来そうだ。

温め終わったのか、佳苗さんが皿を持って部屋に入ってくる、テーブルに置かれた料理を見て僕は懐かしさに浸った。


 月火の家では簡単に作れる料理か冷凍食品が多く、和風料理をあまり口にしてこなかった。

だが今目の前に並べられているのは和風料理だ、山の幸の天ぷらや焼き魚、どれもこの地域で取れる物ばかりである。僕達は箸を持ち、いただきますと感謝の気持ちを込め料理に手を付けた。

 天ぷらはサクサクしており山菜の独特な味が口の中に広がる、焼き魚も脂が乗っており程よい塩加減でご飯が進む。美味しくて料理はすぐに平らげた、日本人に生まれてきて良かったと心から思う。


「美味しかったです、それとお話があるんですが―――」


 僕はそう切り出して二人に話しを始める。

長年、月火を育ててくれたこと。そして僕の入院費を払っていてくれた事。感謝してもしきれないほどの恩が二人にある、僕達は改めて深々とお辞儀をした。


「いいんじゃよ、儂らも孫が出来たようで嬉しかったんじゃ」

「義之さんはね、月火ちゃんが来た時は凄い喜んでたんだよ。孫娘が出来たって」

「え?そうだったの」

「よさんか、昔の話じゃ。それより今日はもう遅い、儂達も寝る時間じゃし明日改めて色々話を聞かせてくれ」


 確かに今の時間は21時、お年寄りは既に眠っている人も居る時間だ。無理に起きてもらうのは悪いと思い僕は部屋へと移動した。月火は二人に呼び止められていた。何か話があるのだろうが僕は呼ばれなかった事を思うと聞いてはまずい事なのだろう。

 部屋へ入り布団の中へと潜る……が、月火達の話が気になって眠れない。

何の話をしているのだろうか、僕は布団からゆっくり出て音を立てずに壁に耳を当てた。


「月火ちゃんや、少し話があるんじゃ」

「どうしたのおじさん?」

「この辺りでじゃが最近妙な噂があっての……鬼って知っておるか?」

「あの、桃太郎とかに出てくる?」

「そうじゃ、その鬼が出たと村のものが話しておってな。畑の作物も盗まれ村の人も行方不明になっておるんじゃ……帰ったら異能力機関とやらに掛け合ってはくれんかの……」

「わかった、二人も気をつけてね……」

「すまないね、ありがとう」


 話はそこで終わった。

鬼、それは童話の話で良く出てくる怪物。巨体で棍棒を振り回し金銀財宝を盗む。そんな物、現実に居るはずがない、だが村の人に実際見た人も居るとなるとわからない。

 この村付近には対異能力機関も無く村の人達で何とかするしか無かったのだろう。僕が話に呼ばれなかったのは、まだ子供で巻き込みたくはないという事だったのかもしれない。

鬼は少し見てみたい気もするが、危ないのならここに居る間は気をつけなければ。

 月火達の話も終わったようなので、僕は再び布団へ潜り眠りに入った。


 そして次の朝、僕は悲鳴と共に目を覚ます事となる―――。 


 猿と犬とキジを呼ばなければッ!


日間15位まで行きました。ありがとうございます!

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