表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
12/33

第十二話 謎の組織

 

 僕は謎の男と対面していた、対異能機関に電話する一瞬の隙きで男は目の前に現れ女を担いだのだろう。だが僕は警戒は解いていないのにどうやって現れたのか気付かなかった。瞬間移動か透明にでもなれるのではないかという程の彼の動きに僕は蛇に睨まれた蛙の様に一歩も動けないでいた。

 

 目の前の男は怠そうに深く被ったフードの上から頭を掻いている、隙きだらけの様に見えるが僕は動けない、目の前の男からは威圧感もそうだが何より異様な気味が悪るさが僕の体を縛っていた。


「んで、君がこいつを倒したのか……。まぁいい目的は達成したし、面倒なやつらも来てるっぽいし俺達は帰るわ面白い物も見れたしな」

「ま……て―――」


 男は僕の言葉を最後まで聞くこと無く目の前から消えた。

視界から外さなかった、しかし男を見失ってしまう。異能力を使って逃走したのだろう、僕は後を追うことを諦め対異能機関の到着を待つことにした。

 意外と早く対異能機関は到着した。以前、僕の異能力を調べた時に居た金剛さん?と月火が一緒に居た。どうやら月火はあの後すぐに対異能機関へと通報したようだ、流石は教師だ、もしあの時に男と戦闘になっていれば、対異能機関も交えての戦闘になっていただろう。

 だからこそ疑問に思うのが男の言葉だ。あの時『面倒なやつも来てる』と言っていた、他にも数人が監視していたのだろうか、ならば男たちには僕の異能力がバレてしまった可能性が高い。


「君は確か……優君だったか、ここで何があったんだ?」

「実は―――」


 僕はここで起きた詳細を金剛さんへ話した。黒装束の女と男、突如現れ消える異能力、そして倒れた女性のことや二人が話していた内容など覚えている限りのこと全てを話す。金剛さんはすぐに心当たりがあったのだろう、頷きそれ以上は聞くことはしなかった。


「そうか、後日また話を聞くかもしれないが、今日の所は家に帰るといい」


 こういう場合、ドラマや映画では第一発見者として長々と事情聴取をされると思っていたが、そうではないようだ。僕はこれだけでいいのかと疑問が顔に出ていたのだろう、金剛さんが補足してくれた。


「まぁこっちには制度の高い嘘発見器があるからな」


 金剛さんはそう言うと、横に居た若い青年の背中を力強く叩いた。

どうやらあの青年が金剛さんの言う、何らかの異能力で嘘発見器の役目を担っているようだ。ならば言葉に甘え、僕たちは家へ帰ることにする。


 僕と月火は二人きりになった、既に夕暮れになり桜が橙色の光に当てられ輝いている。

だが僕たちの気分は落ち込んでいた、昼の浮かれた気持ちは何処かへ消え失せ、無言が続く。

月火の目を見ると、赤く腫れ上がっている。どうやら泣いていたようだ。


「心配掛けてごめん」

「うん……あまり無茶しないで、けど止めても無駄だよね、あの二人の子供なんだもん」


 僕はその言葉の意味を知っている、あの二人……。それは両親の事だ。

自らの命をも惜しまない、それで他人の命が助かるのなら。だが二人とは決定的に違う部分がある、それは僕の力量だ。両親は誰しも諦めるであろう状況でも勇敢な行動で人々を助けてきたしてきた、それには実力が伴っていたからこそ成し遂げられる事、僕の行動は勇敢ではない無謀な行動だろう。

 今回は上手く行った、だが次は違うかもしれない、それならば次に同じ状況に見合わせた時の事を考えより自分を鍛える、その事が唯一月火を安心させることに繋がるだろう、そう僕は結論を出した。


「折角お兄ちゃんと花見で楽しかったのにね、また今度改めて花見しよっ」


 月火は僕を元気づけるように笑顔で問いかけてきた。

僕はそれに短く返事をするが、それから帰宅まで一切会話は無かった―――。


 その日の夜、帰宅後に僕は枕に顔を沈めた。

何故だろうか、僕の体が燃えるほど熱い。今日の昼間までは何とも無かった、戦闘が終わって帰っている最中に体の熱さに気づいた。

 最初は戦闘の熱が冷めていないのだろうと思っていたが、違う気がする。体温を測っても平熱で風邪を引いたわけでもないようだ。ならばこの異常な体の熱さはなんだろうか、月火に相談するが風邪じゃない?と言われた。僕もそれ以上のことは考えず、今日はゆっくりと眠ることにした。


 ◇◇◇◇


 優が花見をした夜、誰も居ない廃墟の奥に黒装束を身に纏った男達はそこに居た。その中には優が昼間会った女と男の姿もある、彼らはある目的の下集まり組織行動をしている。

 彼らの組織には名などない、名は体を表すとは言うが、ただ彼らは同じ目的を持って集まった同志である。

 先日、対異能機関の重鎮を殺し、今日再び別の女性を殺したのもこの組織である。

この二人に共通した事、それは対異能機関に属しているというだけではない、他の共通点が彼らには一番重要であった。

その内容とは、彼らは同志達を陥れた、ある人は陥れられ人生を狂わされ、ある人は最愛の人を無くした。

多くの同志達の人生を狂わせた人物がこの日本には今もまだ彼らを陥れたにも関わらずのうのうと暮らしている。

そして彼、『神崎 新』もその内の一人であった。



 十年前、隕石の襲来により世界は多大なる被害を受けた。

神崎は事態の沈静化の為に国に尽くし働いた、だがそんな彼に一つの異能力が発症する。

国は当初、異能力を恐れていた、発症した異能力を使った犯罪、隕石の影響で凶暴化した動物、それらの対処を彼は担っていた。

無力な人々の為、国の為に彼が試行錯誤して考えついた結果が異能力の使用による事態の沈静化であった。

この時、国は異能力の対処を全て自衛隊に一任していた、自衛隊の中にも強力な異能力を発症していた者たちは快く任務を遂行していく。

 神崎新、彼の異能力は『毒』であった、神経毒や致死毒などあらゆる毒を使用できる異能力。

その異能力を使い、数多の犯罪を解決していく、その事に喜びさえ覚えていた。

だがそんな彼を国は恐れた、知る限りの中、彼の異能力は驚異だと感じたのだ、異能力には人を操る物さえあると聞く、そして彼の異能力が国に向けばそれは驚異となると考える。


 そして国が次に取った行動は彼の忠誠心を裏切る結果となった、唐突に突きつけられる逮捕状という形で―――。

罪状は毒による大量殺戮、見に覚えなどあるはずがない弁護士すら雇うことも出来ぬまま彼は投獄されることになる。


 彼が送られた監獄は異能力犯罪を犯した者が送られる難攻不落の城。

最新の技術が搭載され異能力による脱獄さえ困難なほどの場所へ彼は投獄される事となる。

彼は今まで何人もの異能力犯罪を取締り塀の中へと入れてきた、当たり前だがその犯罪者達も同じ監獄に居る。

そんな犯罪者とその犯罪者を捕まえたものが同じ塀の中に居ては彼が何をされるかなどわかりきった事だ。

看守の目を盗み犯罪者達は彼に暴行を繰り返す。


 そんな中、彼は一人の人物と出会う、その人物の名は『信条 真』彼こそが同志達の現状を変える事となる。

信条の異能力、それは全ての情報を頭へ留め処理し最適解を導き出す能力、そして信条も彼と同じ境遇だという。

信条はかつて国に仕えていた重鎮である、仕事をしている時ある事を知ってしまいここへと投獄される事となった。

そのある事とは、後に国の驚異になりうる異能力者の投獄という内容、そんな話を聞いても彼は信じることは出来なかった。

 国が自分に下した決断を聞き、彼は絶句し耳を疑った。彼は国のために働き国に忠誠を誓っていた、だが裏切られた。

しかし素直に全ての言葉を信じることは出来なかった。

だが信条は全てを知っているかのように彼の境遇を言い当てていく、話を聞いていく内に信じないという気持ちは信じたくないという気持ちへと変わり、最後には信条の言葉を受け入れる事となった。


 それから、信条は自分の知識を元に投獄されている同胞を募っていく。

集まった同胞達は同じ目標を掲げる『日本を変える』という目標を―――。


 彼らが集まってからは状況は目まぐるしく変わった、塀の中には多くの同胞が投獄されていた。

通常の刑務所とは違い異能力者の刑務所という事もあってか男女が別れて居ない。

そして同胞達に話を聞いていく中、他の共通点を発見する、それは全員が無期懲役か死刑囚であるという事。

このままでは日本を変える事すら出来ない、彼らは考え一つの選択肢に辿り着く、その選択肢とは脱獄だ。

しかし脱獄は簡単ではない、最新の技術が搭載され看守も異能力を使用しての弾圧を許可されている。

だが彼らは8年という長い時間を掛け、同胞達全員の脱獄を成功させる。


 脱獄後、彼らは現在の日本の情報収集を行っていく中、彼らを驚愕する出来事が耳に入る。

内容は国は異能力者を受け入れ、それに対応する為の国の政策を行ったとのこと、彼らのように強硬手段を行ったのは異能力発症の最初期にしか行われていなかった。

全員が絶句した、この8年間はなんだったのだろうか、人生を狂わせれ、犯罪者に成り下がり家族も最愛の人も無くした。

同胞を募った当初掲げた目標である『日本を変える』という目標は脆くも崩れ去る。

同じ被害者をこれ以上増やさないという正義感溢れた目標はいつの間にか、復讐へと変わっていくこととなった。

 そして現在―――。


「なぁ次はどうする」


 彼が問いかけた相手は信条、この組織を作り統率している人物。

信条は同胞達を束ね指示を出す、皆は何度も救われ絶対的な信頼を置いている。


「そうだな、神崎はこのままでいいと思うか?」

「俺はそうは思わない、このままでは後手に回る気がする」

「同じ意見だ、ならば手始めに戦力を補充しようではないか」


 薄暗い廃墟の中、二人の会話は続いた。

 こういう報われない人々も裏にはいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ