↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIは敗戦を知っている  作者: E


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/56

第四十七章 明日の頁

一九四二年一月二十八日


坂本(さかもと) 瑠花(るか)は、朝から三度、鞄の中を確かめていた。


教科書。帳面。鉛筆。

今度は教科書と帳面を一冊ずつ指で押さえ、鉛筆も確かめた。全部ある。


鞄をのぞくと、肩まで伸びた蜂蜜色の髪が、さらさらと頬を包んだ。耳にかけても、一房だけは戻ってくる。瑠花は唇を少し尖らせ、その髪をもう一度押さえた。伏せたまぶたには淡い色の長いまつ毛が並び、白い頬に細かな影を落としていた。


「瑠花。それ、さっきも見ていたでしょう」

店の奥から母の声がした。


「忘れてないか、見てるだけ」


「もう大丈夫よ。ほら、時計。そろそろ行かんと遅れるよ」


顔を上げると、氷のように澄んだ淡い青の瞳が時計を捉えた。大きな目をさらに丸くして、瑠花は慌てて鞄を閉じた。


母の坂本 レベッカは、客から預かった上着を広げていた。灰色を帯びた金髪を後ろへまとめ、窓から入る光に袖を透かして、ほつれを見ている。白い横顔は鼻梁が高く、頬骨から顎へ流れる線がすっきりしていた。布を扱う手に迷いがなく、細かな縫い目へ首を傾ける仕草にも、母らしい凛としたところがあった。


佐世保の下町にある小さな店で、母は衣類を仕立て、繕い、洗濯物を引き受けていた。近所の人や店の客は、母をベッキーと呼ぶ。


入口のそばにあった洗濯済みのシャツの包みを、瑠花は受け渡しの机へ運んだ。

「お母さん、シャツはここに置いとくね」


「ありがとう。ほかの分は帰ってからでいいよ。もう出ないと」


ベッキーは上着を置いて近づいてきた。高い腰と、すっと伸びた背筋が、店の狭い通路でも目を引く。瑠花は母を見上げた。


「瑠花、襟。片っぽ入っとるよ」


母の手が襟元へ伸びた。瑠花は先に自分の襟をつまんだ。

「襟くらい、自分で直せるよ」


引き出しすぎて、今度は反対側まで曲がった。ベッキーは手を止め、口元を緩めた。

「ほら、鏡を見てごらん。反対も曲がっとるよ」


「……今、見ようと思っとった」


鏡の中では、白い肌に淡い青の大きな瞳がよく映えていた。鼻梁は母に似て高めだが、小さな口と顎には、まだ十歳の幼さがある。頬を膨らませた自分の顔よりも、瑠花は曲がった襟が気になり、左右の形を直した。

「これでいい?」


母が鏡の中でうなずいた。瑠花の淡い青とよく似た、澄んだアイスブルーの瞳に笑みが残っている。ロシア人の母と日本人の父の間に生まれた瑠花は、母から受け継いだ淡い髪と白い肌を持っていた。

鏡には、よく似ていて、ずいぶん違う二人が並んでいた。母は高い腰の位置から長い脚がすらりと伸び、背筋を伸ばした、均整の取れた立ち姿を崩さない。白い顔に浮かぶ微笑みには、大人の女性の華やかさがあった。その隣の瑠花は、まつ毛に縁取られた目を母へ向けるだけで、表情が大きく動く。頭はまだ母の肩にも届かない。少し背伸びをして、比べても仕方がないと思い、踵を戻した。


「帰ったら、今日は勉強を先にするのよ」


「店、手伝うよ」


「手伝いは助かる。でも、あなたの勉強を私が代わりにするわけにはいかないでしょう」


「……分かってる」


小さく返して鞄を持つと、瑠花は戸口へ小走りに向かった。細くしなやかな手足が、今度は迷わず動いた。


今日は、帰ったらすぐに勉強する。母が夕方の仕事を終えるころには、帳面を開いて見せられるようにしておこう。


学校へ向かう道で、蜂蜜色の髪が風に揺れた。小さな顎を襟に寄せ、軽い足取りで進む姿は、風の中へすっと溶け込んでしまいそうだった。十歳のあどけなさを残す顔立ちも、明るい瞳も、同じ年頃の子の中ではひときわ目を引いた。瑠花はそんなことより、帰ってからの勉強を考えていた。


* * *


国民学校の初等科四年の教室は、窓のそばだけ一段と寒かった。


教室へ入ると、隣の席の市川(いちかわ) 羽衣子(はいこ)が顔を上げた。瑠花が休み時間にもよく話す同級生だった。

「おはよう、羽衣子ちゃん」


「おはよう、瑠花ちゃん。今日は寒かね」


「うん。指が冷たくなった」


瑠花は空いている方の手を口元へ寄せ、息を吹きかけた。羽衣子も両手をこすり合わせている。目が合うと、二人は小さく笑った。


瑠花が席へ向かうと、近くで話していた男の子が言葉を切った。肩の上で揺れる蜂蜜色の髪と、羽衣子へ向けた笑顔に見惚れ、目元を緩めて、しばらくぼんやりと見送った。話し相手に声をかけられて、ようやく顔を戻す。別の席の男の子は、机へ向いたまま横目で瑠花を見ていた。瑠花がそちらへ顔を向けると、目が合う前に慌てて視線を落とした。


瑠花は窓から来る冷気が気になって、肩をすくめながら鞄を下ろした。男の子たちが見ていることには気づかなかった。


「また坂本の方、見とる」


離れた席の女の子が、男子と瑠花を見比べ、眉を寄せた。そばの女の子も目を細め、仲間の方へ顔を寄せた。


「あの子ばっかり。そんなに可愛くないよね」


続きは、そばの女の子たちの間だけで交わされた。教室の反対側では、別の女子が羽衣子に朝の挨拶をしていた。


算数の時間が始まる前、瑠花は机の中へ手を入れた。


算数の教科書が、なかった。


帳面の下も、鞄の底も確かめた。朝、指で押さえた一冊がない。休み時間の前には、まだ机にあった。


後ろで、椅子を引く音がした。

鉾田(ほこた) 礼模(れいぼ)が、こちらを見ていた。皆からはレボと呼ばれている男の子だ。瑠花が振り向くと、鉾田は机の上の腕を組み直した。そのそばの男の子は鉾田の顔を見てから、同じように瑠花へ目を向けた。いつも鉾田の言うとおりに動く子だった。


「鉾田くん。あたしの算数の教科書、知らん?」


鉾田は名前を呼ばれると口元を動かしたが、すぐそっぽを向いた。

「知らん」


「休み時間の前は、ここにあったんだけど」


「スパイなら、自分で見つけられるだろ」


鉾田が隣の男の子を見ると、その子が短く笑った。


瑠花は椅子の背を握った。

「スパイじゃない。隠した人が、一番よく知っとるよ」


鉾田は口を曲げたが、それ以上は言わなかった。


教師が入ってきたので、瑠花は手を上げた。

「先生。算数の教科書がなくなりました。休み時間の前にはありました」


教師は机の中をのぞき、近くの席へ目を向けた。

「誰か、坂本の本を見ていないか」


返事はなかった。


「授業のあとでもう一度捜そう。市川、坂本にも教科書を見せてやってくれ」


羽衣子が教科書を二人の机の間へ寄せ、瑠花にも見えるように開いた。

「これなら、見える?」


「うん。ありがとう」


頁をめくるたびに羽衣子が待ってくれるので、瑠花も授業に遅れず、計算を帳面へ書き取れた。


授業が終わると、教師が教室の後ろを捜し始めた。


瑠花も机の下をのぞいた。掃除に使う道具の脇に、紙の角が見えた。


本を引き出すと、表紙に自分の名前があった。端が床の埃で黒くなっている。


今の授業で開いたところを探して、瑠花は手を止めた。頁の番号が飛んでいる。


間の一枚が、根元から丸ごと破り取られていた。


そこには印刷された問題だけでなく、瑠花が自分で書き込んだ計算のメモもあった。分からなくなったときに見返せるように、鉛筆で書き足した言葉も、問題の横に付けた印も、なくなっている。


瑠花はもう一度、前後の頁をめくった。探しても、書き込みのある一枚は出てこなかった。


「見つかったか」


教師に本を見せると、口元が引き締まった。

「この一枚は、いつなくなった」


「休み時間の前に見たときは、ありました」


教師は前後の頁を確かめ、後ろの席にも尋ねた。鉾田が知らないと答えると、そばの男の子も首を振った。


「人の本を勝手に扱ってはいけない」


教師は教室へ向けて言った。それから、瑠花へ本を返した。


「なくなった頁の問題は、市川の教科書を見せてもらって帳面に写しておきなさい。家で勉強するときに困らないように」


瑠花はうなずいた。けれど、自分で書き込んだメモは、羽衣子の本にはない。


瑠花は表紙の埃を払い、教科書を鞄へしまった。


放課後、羽衣子が帰りの支度を始めたところで、瑠花は声をかけた。

「羽衣子ちゃん。なくなった頁、写させてくれる? 家でも算数の勉強したいから」


「いいよ。今、書く?」


「うん。教科書は、書いたらすぐ返す」


羽衣子は鞄へ入れかけた教科書を出し、瑠花の机に開いた。

「あたし、今日はあまり遅くなれんけど、この頁なら待てるよ」


「ありがとう。なるべく急ぐね」


瑠花は帳面に、問題と計算の例を書き写した。自分のメモは思い出しきれなかったが、問題までなくしたままにはしたくなかった。

急ぐうちに、鉛筆が紙へ強く当たった。


「瑠花ちゃん。そこ、十八だよ」


羽衣子が教科書の数字を指した。瑠花の帳面では、八が三に見えた。


「……十八って書いたつもり」


「三に見える」


瑠花は自分の字を眺めた。そう言われると、三にしか見えなくなった。


「じゃあ、八にしておく」


「八に戻すんでしょ」


羽衣子が笑い、瑠花も小さく吹き出した。消してから、今度は数字の輪を二つ、きちんと閉じた。


写し終えた問題を確かめ、瑠花は羽衣子へ教科書を返した。

「待ってくれて、ありがとう」


「うん。これで家でも読めるね」


「家でやってみて、分からんところがあったら、明日聞いてもいい?」


「いいよ。あたしも分からんかったら、一緒に考えよう」


「あたしが先に分かったら、羽衣子ちゃんに教えるね」


瑠花は少し胸を張った。


「じゃあ、頼むね」


羽衣子を見送り、瑠花も帰りの支度をした。


帰り道で、教室の「スパイ」という声がまた浮かんだ。

母の髪や顔が近所の人たちと違うことを、瑠花は小さいころから知っている。その母まで悪いことをしているように言われるのが嫌だった。


母は客の服を繕い、冷たい水で洗濯をする。指が荒れても仕事を続けて、瑠花の食事も学校の支度もしてくれる。あの子たちは、そんな母を知らない。


自分へ向けられた言葉でも、母を笑われたようで腹が立った。言われたまま黙っていればよかったとは、思わなかった。


瑠花は鞄の持ち手を握り直した。母には、今日こそ勉強のできた帳面を見せたい。


* * *


店へ戻ると、入口のところに男の客がいた。畳んだ上着を腕に掛け、奥の母を見つけると、顔をほころばせた。

「ベッキーさん。胸のボタンが取れたんだ。頼めんかな」


「いらっしゃい。見せてください」


ベッキーは針を置いて立った。背筋を伸ばして受け渡しの机へ来る姿には、華やかさがあった。ほどけた灰金色の髪を耳へ戻し、澄んだ青い瞳を客へ向ける。


客が上着を広げると、前の合わせにボタンが一つ足りなかった。瑠花は母の隣からのぞいた。

「お母さんがこの前付けたボタン?」


「違うボタンだよ。この前、ベッキーさんに付けてもらった袖のボタンは、ちゃんと付いとる。今日は胸のボタンが取れてね」


「では、胸の方を付け直しますね。上着はお預かりします」


ベッキーが上着を受け取っても、客は帰ろうとせず、母が顔を上げるのを待っていた。


「今日は冷えるね。水仕事は大変だろう」


「ええ。洗ったあとは、針を持てるようになるまで手を温めています。でも、包みを運ぶのは、瑠花が手伝ってくれるので」


母が笑顔を向けると、客も嬉しそうに笑った。瑠花は母の横で、少し顎を上げた。

「朝も、シャツを運んだよ」


「そりゃ、頼りになるね」


褒められると嬉しくて、瑠花の口元が緩んだ。すぐに母も見たが、母はちゃんとうなずいてくれた。


「助かっていますよ。朝は急いで学校へ行ってもらわないと、店の手伝いを続けてしまうから」


「お母さんが忙しそうだったら、置いていけんもん」


瑠花が言い足すと、客はもう一度笑った。それからも寒さの話を続けて、ようやく戸口へ向き直った。


「また頼むよ、ベッキーさん」


「はい。お気をつけて」


来たときより機嫌よく帰っていく客を見送って、瑠花は母を見上げた。ベッキーはまだ微笑んでいた。


瑠花が洗い上がった衣類へ手を伸ばしかけると、母がこちらを見た。

「朝の約束。今日は勉強が先でしょう」


「まだ何もしてないよ」


「これからしようとした顔だった」


瑠花は伸ばしかけた手を引っ込めた。

「……分かった。先に算数する」


奥の机に帳面を広げ、羽衣子の教科書から写したところを読む。授業で聞いた説明は覚えていたが、教科書の余白に残しておいた自分の言葉は、もう見られない。


瑠花は例の計算を見てから、問題に取りかかった。答えを出せたつもりで次へ進んだが、分ける計算になると、どの数を使えばいいのか迷った。こういうところで止まるのは、今日だけではなかった。

朝は、母の仕事が終わるころまでに全部できているはずだった。


母が湯を入れた茶碗を持ってきたとき、瑠花は教科書を閉じかけた。開いたままの頁の番号へ、母の目が留まった。

「瑠花。頁が一枚、抜けているの?」


「学校で、一枚なくなった」


「外れたの?」


瑠花は首を振り、紙の残る根元を指した。

「破り取られとった。あたしが書いたところも、全部」


ベッキーは本を手に取って、前後の頁を確かめた。瑠花は膝の上で指を重ね、それ以上のことは言わなかった。


「この頁がないと、家でも困るでしょう」


「羽衣子ちゃんの教科書、見せてもらった。印刷してあるところは、帳面に写したよ」


母は瑠花の隣へ座り、差し出された帳面を読んだ。

「これを全部、書いたの?」


「うん。帰る前に。羽衣子ちゃん、待っててくれたんだ」


「お礼は言った?」


「言ったよ。数字を間違えたのも、教えてくれた」


母はうなずき、教科書を机の端へ置いた。

本が机から消えたことや、鉾田の言ったことまでは、まだ話せなかった。母がさっき客と笑っていた顔を思い出すと、全部話してその笑みを消してしまうのが怖かった。


「お母さん、算数も見て」


瑠花は母の前へ帳面を寄せた。

「ほんとは、全部できたって見せたかったんだけど」


頬へ落ちた髪を耳にかけながら、少しだけ口を尖らせた。


「どこまでやってみたの?」


「鉛筆の問題。十二本入りの箱が三つあって、六本もらうの。……次の、残りを三人で分けるのは、まだ分からん」


ベッキーは最初の問題を読み、瑠花の計算を見た。

「三箱で三十六本ね。六本をもらったら、ここで四十二本になっているでしょう。どうして、もう一度六本を足したの?」


母の指が、次の行の「四十二たす六」を示した。瑠花は問題を読み返した。六本をもらうのは、一度だけだった。


「……二回もらってしもうた」


母は小さく笑って、帳面を瑠花の手元へ戻した。

「もらうのは一度よ。増やしすぎた六本を、計算から外してごらん」


瑠花は余計な六本を足した行を消し、「三十六たす六」を計算し直した。

「これで、四十二本」


「うん。問題に書いてあるとおりになったね」


ベッキーがうなずくと、瑠花はほっと息を吐いた。


「一つもできとらんかと思った」


「間違いに気づいて、自分で直せたでしょう。次に計算するときも、何本もらうのか、問題の文と見比べてね」


瑠花は答えの横に、小さく丸を付けた。


次の問題も、十二本入りの箱が三つあるところから始まった。今度は先生が六本使い、残った鉛筆を三人へ同じ数ずつ配る。瑠花は先に三十六本を三人で分けてから六本を引こうとして、そこで迷っていた。

「六本を引くのは、分けてから? 分ける前?」


入口で客の声がして、ベッキーが顔を上げた。

「少し待っていてね」


「うん。もう少し考えてみる」


母が店へ戻ると、瑠花は問題の「先生が六本使い」の下に線を引いた。先に三人へ分けると、一人分から六本ずつ引くことになりそうだった。それでは、先生が使う数まで増えるのだろうか。どこで六本を引くのか、確かめたい。


夕飯の支度が始まるまで考えても、迷いは残った。瑠花は帳面を閉じ、母のところへ行った。

「残りの鉛筆を三人に分ける問題、明日、羽衣子ちゃんに聞くね」


「そう。どこが分からないか、言えそう?」


「先生が使う六本を、いつ引いたらいいか」


母はうなずいて、茶碗を二つ渡した。

「聞きたいことが決まったなら、今度は夕飯を手伝って」


「任せて」


瑠花は二人分の茶碗を食卓へ運んだ。


飯をよそうところで、母が聞いた。

「今日は、大人と同じくらい食べる?」


「食べる。いっぱい書いたし」


ベッキーは茶碗へ飯を入れながら笑った。

「鉛筆を動かすのも、お腹がすくのね」


「すくよ。お母さんだって、縫ってるとすくでしょう」


「そうね。じゃあ、二人とも食べないと」


瑠花はよそってもらった飯の量を見て、付け足した。

「でも、お代わりは、食べてから決める」


食後、瑠花は帳面に「六本を引くのは、分ける前?」と書いた。明日の朝、羽衣子に尋ねることを忘れないように。


教科書のなくなった一枚も、自分のメモも戻ってはいない。明日また何かされるかもしれない。それでも、家で勉強するための問題は写せたし、計算の間違いは一つ直せた。


「瑠花。もう寝る時間だよ」

戸口の方から母が呼んだ。


「うん。明日の支度、できた」


瑠花は帳面を鞄へ入れた。


「お母さん。朝、ちょっと早く起こしてね。授業の前に羽衣子ちゃんに聞きたいから」


「分かった。起こしたら、ちゃんと起きるのよ」


「起きるよ。あたしが先に分かるつもりだったのに」


得意になって羽衣子へ言った自分を思い出し、瑠花は鼻の先を掻いた。母に口元を見られ、照れたまま鞄の留め具を閉じた。


明日は、写した問題の続きを、自分で分かるようになりたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。