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第7話 ゴブリンダンジョン

 カラス経由の情報収集にはしばらく時間がかかるだろう。


 その間に俺は俺で強くなっておきたい。


 探索者の強さをてっとりばやく把握するには、探索者ランクが基準になる。


 今の俺は一番下のE級。論外だ。


 ただし、いくら強くなっても四つ足の魔物ばかり相手をしていては人間との戦闘は上達しない可能性がある。


 そこで俺が目をつけたのはゴブリンだった。


 E級のゴブリンは背が低すぎるが、D級のゴブリンファイターやC級のゴブリンジェネラルともなると人間と同じくらいかそれ以上の体格となる。


雨照アマテラス』の奴らとやり合うにはせめてC級のゴブリンジェネラルくらいは軽く倒せるようになっておきたい。


 ということで、やってきたのは奥多摩にある日原鍾乳洞にっぱらしょうにゅうどう


 天然の鍾乳洞がダンジョン化し、より深く、より複雑な迷宮となった場所だ。


 ここは通称ゴブリンダンジョンと呼ばれており、ゴブリンしか出てこない。


 地下へいけばいくほどゴブリンの強さが上がっていくらしい。


 ひとまず地下1階から3階まではE級のゴブリンしか出てこないので、3階までのクリアを最初の目標にした。


 都内からのアクセスが悪いせいかあまり人気のないダンジョンのようだ。


 ダンジョン横にある協会の建物に入ると人もまばらで、受付嬢が暇そうにしていた。


「ダンジョンへの入場手続きをお願いします」


「はい、かしこまりましたぁ……なんでスーツなんです? てっきり探索者保険の営業さんかと思っちゃいましたよ」


 あらためて自分のかっこうを見てため息が出る。


 黒スーツ、白シャツ、黒い革靴。装備なし。


 我ながらダンジョンをナメていると思うが、いろいろ考えた結果これしかなかった。


「……これが一番都合がいいんですよ」


「はぁ、そうなんですねぇ。はい、手続きできましたよ。お気をつけて」


 鍾乳洞ダンジョンに一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気が体をつつみこむ。

 地面はでこぼこしていて、革靴だともちろん歩きにくい。


 まわりに誰もいないことを確認した。


「ムギン、出てこい」


『ここに』


 一羽のカラスが俺の体から出てくるのを確認し、俺も魔人形態に変化した。


 バサリと黒い翼が背中から飛び出る。

 手足はするどいかぎ爪となった。


『王よ、顔が人間のままですぞ。はやく美しいご尊顔をお見せくだされ』


「よし、成功だな。このまま行く」


『そんな!?』


 家で何度か練習して部分的に変化させるコツをつかんだ。

 顔をカラスにして、もし他の探索者と鉢合わせたら確実に戦闘が始まってしまう。

 そのため、顔以外を変化させることにしたのだった。


 足下を見ると、いつの間にか革靴が消え、四本爪が見えている。


 これこそ俺がスーツを着続けざるを得ない理由だった。


 どうやらこのスーツと革靴のセットは俺の人間形態の一部のような扱いになっているらしい。

 なので魔人やカラス形態になったときに不要な部分は自動的に消えるし、戦闘中に破れても自動で修復される。

 逆に、これ以外の服や防具を来た状態で魔人になると背中や靴が破れたまま修復されないし、カラス形態になると全裸になってしまう。


 おそらく最初にこのスキルに覚醒したときに着ていた服がスキルの一部になってしまったのだろうと予想している。


 結局、このスーツセットと、素手で戦闘をするのが最も効率がいいという結論になった。


『王よ、さっそくあらわれましたぞ』


「あぁ、いきなり3匹か」


『手下を呼びますか?』


「いや、まずは自分だけでやりたい。ムギンも手を出さないでくれ」


 ゴブリンが3匹。

 1匹だけこん棒を持っており、他の2匹は無手。


「やるか……」


「グギャギャッ!」


 こん棒ゴブリンがリーダーなのか、一匹だけ後ろに待機し、他の2匹が俺に向かって走り出した。


 特にコンビネーションもなく二匹同時にしがみつこうとしてくる。

 俺は両手をのばし、それぞれの首をつかむ。

 魔人形態になり指が長くなりかぎ爪もあるためゴブリンの細首ならつかむのもたやすい。


 さてここからどうするか……と思ったその瞬間、勢いあまって首を握りつぶしてしまった。


「「グェッ」」


「うん?」


 俺の握力だとここまで簡単に首をつぶすようなことはできないと思ったけど……魔人化のおかげか?


 ゴブリンたちは虫の息ではあるものの、まだ生きている。

 だが、もう脅威ではないだろう。


 残るは、こん棒を持ったゴブリン一匹。


 まず右手に持ったほうのゴブリンを、こん棒ゴブリンに向かってぶん投げた。


「ギギィ!?」


 飛んできたゴブリンをよけて姿勢をくずした相手に対し、左手のゴブリンを盾にしながら走り寄る。


「グギィ!」


 案の定、何も考えないゴブリンは、俺が盾がわりにしたゴブリンにこん棒を振り下ろした。


 俺はゴブリンを地面に手放てばなしながら、右足でこん棒ゴブリンのアゴを蹴り上げる。


 その衝撃でこん棒ゴブリンの頭はスイカみたいに弾け飛んだ。


「は?」


 首から上を失ったゴブリンはそのまま後ろに倒れこんだ。


 気絶ねらいの蹴りが予想外の威力を発揮した。

 混乱しつつも、とりあえず首だけ握りつぶしておいた2匹の頭も踏みつぶし、戦闘を終了させる。


 首無し遺体が3つできあがった。


『さすが王よ。我らの力は不要でしたかな』


「いや……おい、まだ何か隠してるな? 前回この姿でゴブリンとやりあったことがあるんだが……その時の俺はこんなに強くなかったはずだ」


 スキル覚醒の儀式。

 あの日、ガイドの探索者である酒井さんに見守られながら、ゴブリンを1匹倒した。

 その時の感覚とは明らかに違う。

 誤差っていうレベルじゃあない。


『隠すことなど何もありませぬ。我は言いました。王は我らの巣であり、城であり、国だと』


「国ねぇ……。ならカラスが国民か?」


 最初は俺一人だった。

 カラスダンジョンでムギンたちに出会い、ブラッククロウの集団が支配下に……つまり国民になった。


 さらに、現在進行形でブラッククロウたちが日本中を飛び回り、カラスたちを従える旅に出ている。


 国民が増えている……国力の増加……?


「つまり、支配下のカラスが増えれば増えるほど……俺の力も増す?」


『ご明察。王の力は日ごとに増えております』


 どうりで全然体感が違うわけだ。

 というか、それを知らずにいきなり雨照アマテラスの奴らに殴り込みに行ってたら危うく殺してたんじゃないのか……?


 もう他に知ってることはないか? とムギンを見つめる。


『お、王よ……もし王が我の知っている八咫烏ヤタガラスであれば、導きの力も使えるはずですが……』


「導き……? あぁ、そういえばあったな」


 あらためて鑑定結果を思い出す。


『魔人(八咫烏ヤタガラス)』『カラスの王』。

 そして、『道案内』だ。


 この道案内がムギンの言う導きの力だろう。

 これは使い方がわからなくてまだ試していない。


「道案内というスキルを持ってる」


『おぉ、やはり……。それこそ王が王たるゆえん。我らを約束の地へと導く力ですぞ』



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― 新着の感想 ―
いい設定で、今後が楽しみです! キャラ付けのためかもだけど、スーツにするための理由が少し強引に感じましたね。 とりあえずこれからも読み進めてみたいと思います。 無理せず頑張ってください!
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