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第22話 えげつない魔法

 俺はまず近場のこいつらを仕留めるか。


 ――ギィンッ!


 またしても狙撃された。

 今度はくちばしだ。

 くちばしは表面が少しけずれた程度で銃弾を弾いた。

 頑丈らしい。


『王の美しいご尊顔を傷つけるなど! 許さぬッ。お前たち、行くぞ!』


 ムギンが張り切りながらどこかへ飛び去った。


 カラスの数はもう十分に足りるだろう。俺はカラスの流出を止めた。

 カラスたちは上空で渦をまくようにして飛びながら待機している。


 カラスとの共闘も考えたが、コンビネーションの練習もしてないし、戦闘中に俺がカラスを殺してしまいそうな気がする。


『名前付き以外のカラスの半分は、俺たちを囲むようにして適当に飛んでくれ。スナイパーからの目隠しをしてほしい。もう半分はムギン達と一緒にスナイパーを探せ』


 上空にいたカラスたちはカァカァ鳴きながら、飛ぶ軌道を変えていく。


 俺と残った探索者たちを囲むようにして、黒い竜巻ができあがった。

 俺たちのまわりだけぽっかりとカラスがいない。

 台風の目にいるような状態だ。


 生き残っている探索者たちはカラスたちの行動に警戒しつつも、ゆっくりと立ち上がった。


 角刈りの男は左腕のほとんどが骨になってしまっているが、剣を持った右腕は健在だった。

「テメェ……やりやがったな……チクショウ、みんな死んじまった……」


 その他に生き残っているのは、大きな盾を持った男、メイスを持った男、黄色い宝玉のついた杖を持った女だ。


 こいつらの顔には見覚えがない。

 俺を拉致したパーティとは別で、最初からここに待機していたのだろう。


 メイスを持った男が上空のカラスを見上げた。


「カラスを操るってのはホントだったみたいだな。一匹一匹は雑魚だがあの数はなかなか……とはいえ、この程度で死ぬのはダサすぎだろ」


 メイスの男は角刈りの男を馬鹿にするように笑った。


「うるせぇよ! お前らだけ生き残りやがってェ……お前らが本気だせばこっちのメンバー含めて守れただろうが、殺すぞッ!」


「そんな命令受けてないっての。それより、もう尋問は無理だろ。るぞ」


 メイスの男がハンドサインのようなものを出すと、俺の額を銃弾が突き抜けた。

 後ろから撃たれたようだ。

 一瞬意識が途切れて、ふらふらと前によろける。

 ずるりと額からカラスの死体が1つ抜け落ちた。


「チェーンバインド!」


 魔法使いの女が唱えると、地面から鎖が飛び出し俺の体を拘束した。


「死んどけッ」


 頭に衝撃。パキャンッと妙に軽い音が聞こえた。

 世界が真っ暗になる。


 ……。


 一瞬、意識が飛んでいた。


「頭つぶしてもダメなのかよ……」


 すぐ近くに呆然とした顔でたたずむ角刈りの男とメイスの男。

 右手で角刈りの男の首を、左手でメイスの男の首をつかんだ。


「なッ!? 拘束が!」


「うっそだろ! チェーンバインドを引きちぎりやがった……」


 二人の首を握りつぶす直前、俺の左肘がはじけ飛んだ。

 遅れて聞こえたのは狙撃音だ。

 左肘をピンポイントで狙撃したのか。


 角刈りは殺せたが、メイスの男は首に俺の腕をくっつけたまま後退していく。


『おいムギン、スナイパーはどうなってる?』


『も、申し訳ございません! まだ場所を特定できておりませぬ。どうやら姿を隠すスキルを持っているようでして……』


『なるほど。とりあえず引き続き探してくれ』


 角刈りを殺して残りはスナイパーをのぞくと3人。


 俺から少し距離をとった場所にメイスの男。


 さらに離れた場所には、盾の男と、その後ろに隠れるようにして魔法使いの女がいる。


 メイスの男は、まだ首にひっかかっていた俺の左腕をはがして横に投げ捨てた。


「へへへ、さすが東堂さんだ。片腕がなくなった気分はどうだカラス野郎ッ!」


 地面に落ちた俺の左腕がもぞもぞと動きだしたかと思うと、数羽のカラスに変化した。


 俺がメイスの男を指さしながら、「やれ」というと、そのカラスたちはメイスの男に向かって矢のように突っ込んだ。


「へ? うぉわッ!?」


 男がカラスに気を取られたすきに俺も翼をはためかせ急加速する。


 右手のかぎ爪でメイス男の首をかき切る。


「ぐッ……ぶッ…………!?」


 即死ではないが、すぐに死ぬだろう、もう放置でいい。


 残るは2人。

 盾の男と魔法使いの女だ。


 男のほうは大きな盾を構えながらも、しきりに後ろを気にしている。


「おぉい! まだか!? もうボクたちだけなんだぞッ!?」


 彼が盾をかまえる後ろには魔法使いの女がいる。


 彼女は杖をかかげて、目を閉じたまま早口で何かを唱えているようだった。


「……いけますっ! アイアンメイデンっ!」


 ――ガコンッ!


 俺のすぐ近くで鈍い音がしたかと思うと、暗闇につつまれた。


 身動きが取れない。


 体を覆うようにして金属製の壁がある……?


 密閉空間に閉じ込められた?


 それに加えて、体のいたるところに何かが挿入されたような異物感がある。


 痛みがないのでわかりにくかったが、どうやら全身のいたるところに金属製のトゲが刺さっているらしい。


 まさにアイアンメイデンを模した魔法。

 手足だけでなく胴体部分にも大量のトゲが突き刺さっている。

 普通なら即死だ。


 あの女魔法使い、なかなかにえげつない。


 ひとまず脱出するために全身に力を入れようとしたが、うまく体が動かない。

 妙な脱力感。


 毒の効果まであるのかと一瞬考えたが、そういうダルさはない。


「あぁ、そういうことか?」


 腕にも脚にもいたるところにトゲが刺さっているのだ。当然、筋肉もズタズタに引き裂かれている。


 それでは力が上手く働かないだろう。


 そこまで考えられているのかはわからないが嫌らしい魔法だ。


 いったんトゲから抜けるためカラス形態に変化した。

 トゲは抜けたがあまりのトゲの密度でカラス形態であってもきゅうくつに感じる。


 トゲが邪魔でここから魔人形態になるのは無理そうだ。


 だが、そもそも俺はスキル『カラスの王』のおかげで力が強くなっているはず。


 カラス形態のままでも鉄の壁を壊せないだろうか?


 トゲを足場にして、鉄の壁をくちばしで叩く。


 ――ガキンッ!


 少しへこんだような気がする。


 同じ所をくちばしで叩き続ける。

 キツツキのようにヘッドバンキングを続けた。


 しばし叩き続けると、ズブリと開通する感覚。

 穴から光が差し込む。


 穴にかぎ爪をねじこんで、力任せに広げる。


 ギギギッ、と嫌な音をたててアイアンメイデンは引き裂かれた。


 カラスの体が通れるくらいに穴を広げ外に出ると、周りには誰もいなかった。


 盾使いと魔法使いはどこに行った?



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