第2話 魔人(八咫烏)初戦闘
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名前:高木アタル
スキル:
・魔人(八咫烏)
・カラスの王
・道案内
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「見せてもらってもいいっすか? 基本的に自分のスキルは他人にベラベラしゃべるもんじゃないんすけど、スキルについてのヒントとかを聞きたいならオレを信じて見せるのが効率いいっすね。もちろん拒否ってもオッケー」
正直、ダンジョン協会には不信感がある。
できることなら見せたくないが……パッと見てもこれがいいスキルなのかどうか俺には判断がつかない。
さわやかに笑う酒井さんの顔を5秒ほど見つめたが、そこに悪意のようなものは見えなかった。
今の俺の目標は、『俺を殴ってきた奴らをぶん殴る』だ。
そのためには効率よく強くなりたい。
今は酒井さんを信じてみることにした。
「確認をお願いします」
「了解っす。ふーん……魔人かぁ。レアっすね。この八咫烏ってのは聞いたことないっすけど、基本的には狼人間みたいに変化できるやつっす。てことはカラス人間みたいになんのかな? ウケる」
「カラス人間……それで、他の二つは?」
「うーん、聞いたことないっすねぇ。一般的な剣術とか火魔法とかならある程度使い方のコツとかは確立されてるんすけど、こういう特殊なのは自分で試行錯誤するしかないっす。てことで、ドンマーイ!」
「……」
インターネットとかで調べれば出てくる程度の情報だった気もするが、時間短縮できたと思おう。
「周りに誰もいないし、とりあえず魔人スキルだけでも試しません? オレも見てみたいんで」
「この八咫烏ってのになれるんですか? どうやれば……」
「さぁ……? なるっ! って気持ちでふんばればいいんじゃないっすかね」
八咫烏というと、日本神話に出てくる三本足のカラスだ。
目を閉じてその姿を頭に思い描きながら、なると念じる。
「お? おぉ~、すげー!」
「カァ? カァカァ」
目を開けると、酒井さんが巨人になっていた。
逆だ。俺が小さくなっている。
下を向くと黒く長いくちばしが見える。
カラスになっている。
羽を動かすと、体が浮き上がった。
酒井さんのまわりを一周飛んで元の位置に戻った。
人間に戻る、と念じると元の姿に戻った。
「あの、カラス人間じゃなくてただのカラスになったみたいなんですが?」
「あー、確か半人半魔の形態と、完全に魔物になる形態を使い分けられるみたいっす」
カラス人間というのがいまいち想像がつかなかったが、やってみる。
目を閉じて、今度は人間の体を保ったままカラスになるイメージ。
バサリという音とともに背中でなにかがはじけ飛ぶような感覚。
「おぉっ!? すげー、怖ぇー。堕天使……っていうより、悪魔みたいっすね」
目を開けて確認すると、背中から天使のような翼が生えているのが見えた。
ただし色は黒だ。
すぐに飛べるものでもなさそうだが少なくとも自分の意思で動かせる。
そしてまたしても自分のくちばしが目に入る。
「これ、顔までカラスになってます? あれ……この体だと喋れるのか……」
「なってるっすね。なんか怖いっすよ」
手足はどちらも黒く変色してひきしぼられ、黒光りする爪がするどく伸びている。
カラスの足のような質感だ。
手の指は5本のままなのは助かるが……足の指はカラスと同じように4本になってしまっている。
ここで異変に気付く。
さきほどまで履いていた革靴が消えて、カラスの足がそのまま見えてしまっている。
「まさか……背中も? 俺の背中ってどうなってます? スーツをつきやぶって羽が生えた気がするんですが」
「ちょっと後ろ向いてください。あれ? 破けてないっすよ?」
酒井さんいわく、スーツからそのまま翼が生えているように見えるそうだ。
とりあえず全身の力を抜いて元の体に戻す。
「ふぅ……あれ? 革靴が復活してる……どういう仕組みなんですかね?」
「さぁ? まぁ便利だからいいんじゃないっすか!」
ひとまず、『元の人間の姿』『カラス形態』『魔人形態』の3パータンを自由に行き来できることは確認できた。
ここまでくると欲が出てくる。
「このまま一匹魔物を倒すとこまでやってみたいんですけど、酒井さんの仕事はここまでですか?」
「そっすね。スキル覚醒の儀式はここまでっすよ? でも、一匹倒すのを手伝うくらいならやってもいいっすよ。もちろん有料っすけど」
後で受付で払うと約束し、さらにダンジョンの奥へ進んだ。
「このダンジョンの1階にいる雑魚はゴブリンっすね。E級なんで、まぁ喧嘩強い人ならスキルがなくてもタイマンならいい勝負はできるって感じっす」
角を曲がってさらに進んでいると前方から1匹のゴブリンが歩いてくるのが見えた。
「ゲヒッ!」
俺を見つけると、走りはじめた。
武器も持たない身長130センチくらいの小鬼だが…………怖い。
いそいで魔人形態に変化する。
「うわッ……!」
初手は殴ってくるだろうと決めつけて翼でガードをしていたら、いきなり飛びついてきた。
俺の翼をガジガジと嚙み始めるゴブリン。
痛みと恐怖で一瞬、頭が真っ白になる。
だが、そのおかげで逆に頭の中のノイズが消えた。
効率。
「そうか」
大切なのは効率だ。
これは仕事と同じ。
目の前にいるのは丁寧に接するべき人間ではない。
敵だ。
処理すべきタスクだ。
「であれば」
やるべきことをやればいい。
効率だけを重視した俺の脳が選んだのは目つぶしだった。
鋭くとがった黒い爪でゴブリンの両目をつぶす。
「ギヒィッ!?」
ゴブリンは自分の目を押さえて、俺から離れた。そしてそのまま後ろを向いて逃げ出す。
「魔物が……逃げるのか?」
翼をはためかせて加速する。
一足でゴブリンまでたどり着き、首をつかんだ。
そしてそのまま地面に頭を叩きつける。
「グギャッ」
「ハァ……ハァ……」
ゴブリンはそのまま動かなくなった。
後ろから拍手が聞こえる。
「うぇーい……高木さん、なんか戦うとキャラ変わるっすね……? とりあえずお疲れっす!」
「ハァ……ハァ…………ありがとうございます」
ダンジョン協会の受付に戻ると探索者タグができていた。
受付の女性からドッグタグのようなものを渡される。
「再発行にはお金がかかりますのでなくさないようにお願いします」
「了解です。あと、一つ聞きたいんですが、カラス系の魔物が出るダンジョンってこの近くにありますか?」
「そうですね……一番近いところだと新宿御苑です」
受付と酒井さんにお礼を言い、協会を出ると、もう夕方だった。
さすがに今日は疲れたので家に帰ることにする。
明日は、新宿御苑に行き、『カラスの王』というスキルを検証しよう。




