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04 輝けるストーキングの日々と青天の霹靂


春の早朝は陽の光が柔らかい。


桜の花の蜜を食む小鳥の鳴き声が長閑に、少しだけ肌寒さを残した空気を温めるように賑わしていた。


メルカは機嫌良く、それはもう、思わず『聖ヒロ』のテーマソングを鼻歌で奏でるほど上機嫌に、貴族学院男子生徒寮の門の前に立っていた。


トールの出待ちである。


メルカの機嫌がこの上なく良好なのは、12年弱恐れていたトールをヒロインにかっさらわれる可能性が無くなったこと、もう二度と会えないと思っていた親友ミカと再会出来たことの両方に起因する。


ミカの性別をはじめ、その他様々大きな問題があるにはあるけれども、一旦は手放しで喜んでも良いだろう、とメルカの心は弾んでいた。


ミカといえば、彼もこの男子生徒寮で生活を始めているはずだ。


今ごろは……前世では朝に弱いタイプだったことを考えると、やっと起き出して顔を適当に洗っているところだろうか。


前世の小中学校の頃などは、お互いの家がほどほど近所だったこともあって、登校の際には早くに家を出る覚が御嘉を迎えに行き、遅刻を防いでいた時期もあった。


今はメルカといえど男子生徒寮内へ立ち入ることは出来ないので、ミカには自力で頑張ってもらいたい。


アムドゥシア王国立貴族学院は男女別の全寮制である。


理由は王国の領土、特に王都自体が広いことにある。


アムドゥシア王国の貴族には公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士爵の順で爵位があり、いずれも世襲制である。


例外的に一代貴族として準男爵という位があるが、準男爵は基本的に領地は持たず、広く社交を行うことも少ない。


もう1つの区分として、領地持ちの貴族と、領地を持たない法衣貴族とがいる。


一代貴族を除き、余程貧乏だとか特殊な理由のない限り、ほぼ全ての貴族は王都の貴族街に、爵位に見合った規模と立地の邸を持っているものだ。


領地を持つ貴族であれば領地から王都へ出て来て社交をするためのタウンハウス、法衣貴族なら本邸である。


それならそちらから通えば良いじゃないか、というわけにもいかないのが王都の広さである。


貴族街といっても王宮へのアクセスの良さによってグレードがあり、目だった功績や財産の無い下位貴族は貴族街でも職人街に近い、端の方にしか邸を持てない。


下位貴族の邸の連なった辺りは入り組んでおり、高位貴族がヒッソリと法的に怪しい利用目的で買い上げている邸もあるくらいだ。


そんな貴族街の中でも辺境にある邸から貴族学院へ通うには、馬車で1時間以上もかかってしまい、時間も費用も嵩むのである。


一般的には下位貴族ほどお金に困るものであるのに、下位貴族ならではの出費などがかかってきてしまっては、子女を学院へ通わせない選択をとる下位貴族も増えてしまう。


王家としては優秀な人材は爵位の貴賤なく登用していきたい方針で貴族学院を開校した経緯があるので、主に下位貴族への配慮として建前上、貴族学院は全寮制と決まっている。


侯爵以上の爵位を持つ家の生徒は例外的に自宅から通うことも可能であるし、王族は特に警備の都合上、基本的には王宮から通うと決まっている。


その通例を面白くないという理由ではねのけて寮生活をしていたらしいクリスとかいう変人王太子がいたのは数年前の話だ。


トールは通学にかかる時間を惜しむ故に寮生活を選択している。


メルカは、公爵家のタウンハウスで自分1人の世話をさせるのも使用人らに気を遣うし、何より寮に居た方がトールとの物理的距離が近いので、やはり寮生活である。


そんなわけで、朝早いトールを出待ちして一緒に登校♡するため、メルカは人数倍早く起床して朝食やモーニングティーを早々切り上げ、1人男子生徒寮前に立っているのだった。


男女ともに、寮から学院へは徒歩で10分程度の距離である。


その10分のためだけにこの2年強、人より数時間も早起きしているメルカの執念には、その他の生徒も脱帽、というか引いている。


今も、課題や委員会等の都合で早くに登校する男子生徒らが、遠目でやけに上機嫌なメルカを見て、スッと目を逸らしたり、友人同士ヒソヒソと噂したりしているけれども、メルカはその全てを気にも留めていない。


17年弱まともに友達も作らずトールのストーカーをして生きてきた肝の太さをナメないでいただきたい、というものだ。


誰もナメやしないし、何なら恐れられてすらいるのだが。


15分も待っていただろうか、待ち人であるトール・ケムエルンが寮から出て来てきた。


黒に近い青、深海に似た色の髪は、今日も一分の隙なく左肩上の同じ位置で留められ肩に流されてあり、人を拒む意志の籠った薄い水色の瞳は氷柱を思わせる鋭さと怜悧な印象を与える。


トールの髪留めは(主にメルカのせいで)負の方向に乱される感情をなるべく平坦にするため、平静の効果のある魔道具となっている。


効果のほどは、メルカには分からないところだ。


顔はメルカも数回挨拶したことのあるトールの父親、宰相閣下の方に似ているのではないかとメルカは思っているが、顔の造り全体はどちらかといえば女性的で、男性的な落ち着きを感じさせるかの宰相閣下とは違い、トールは儚げな美形である。


侯爵家の格を損なわない程度には質の良い生地で作られた、飾り気の少ない服装からは、トールの無駄を嫌う性格が滲んでいて、メルカは毎日見ていても見飽きない。


トールの身長は平均より少し高い程度で、小柄ではないものの、昨日話したミカと比べると体つきは細く、目線も10cmほどは下にある。


ただ、トールとメルカの視線が合うことは、主にトール側からの拒絶によって滅多に無い。


寮の外へ出てきたトールは、メルカの姿を視界に入れた瞬間、ナメクジの群体でも見たかのごとき嫌悪の表情を浮かべる。


平静の魔道具が働いているはずなのに、これである。


ああ、メルカが登校出待ちをしているのはこの2年強毎日のことであるというのに、いつも新鮮なこの侮蔑と嫌悪の視線と言ったら!


メルカは萌えにときめく胸を押さえて顔を赤らめた。


そんなメルカの不審な挙動も無視、今日もトールは一言もなく、メルカを居ないものとして無視したまま学院へ向かう。


一応、学院1年生の初めの頃は一言くらいはあった、「僕を待ち伏せするのをやめろ」という抗議である。


メルカが聞き入れやしなかったので、数回のうちに諦めたトールがほとんど無視する形をとり、無理やり一緒に登校する体となっているのだった。


トールの歩調に合わせて、彼の斜め1歩後ろを早足になってついていくメルカは今日もほとんど一方的にトールへ話しかける。


登下校時は貴重なトールとの2人きりのふれあいタイム(無論実際にふれあうことは無い)であるからだ。



「おはようございます、トール様。今日もご尊顔を拝見出来て、わたくし幸せですわ。御髪の艶も美しくて、職人が1本ずつ魂込めて染め上げた絹糸かと錯覚いたしました。肌荒れも無いようですし、トール様が健康でいらして、何より嬉しく思っております」



見上げてくるメルカを一瞥もせず、トールは無表情のまま、学院への道をさっさと歩いている。



「昨夜も、またトール様のお顔を毎日見ることの出来る日々が再開したのだと実感して、わたくし胸が潰れそうなほど嬉しくて、中々寝付けませんでしたの。トール様のお姿やお声を想うと、どうしても浮き上がるような気持ちになってしまって……わたくし、今日も昨日も明日もトール様をお慕いしておりますわ」



これもまた顔色1つ変えず、無視である。


聞いている側が恥ずかしくなるほどのメルカからの熱烈な恋心アピールも、トールにとっては12年弱耳にタコを作ってきた念仏に等しいのだろう。



「そういえば、この間お兄様からお聞きしましたの。トール様が春期休暇中に王宮へ提出なさった地方医療に関する政策案が議会を通る見込みだと……学院での首席をずっと誰にも譲らないでいらして、将来のための政策奏上まで完璧にこなしてしまうトール様の優秀さは尊敬の念に堪えません。お兄様だって、褒めていらしたのですよ? 滅多にないことですわ、詳しい内容も伺ったのですけれど、爵位の有無にかかわらず全ての王国民に益をもたらすことが約束されているような内容で、わたくし一層感動いたしました」



メルカの言うお兄様、つまり王太子クリスが褒めていた、というくだりでようやっとトールは柳眉をピクリと動かしたが、メルカの感想は全て聞き流し、口を開きはしない。


淡い桜の花びら色に染まる道を10分弱歩いてきて、学院の正門が見えてくる。



「トール様、今日のお昼はご一緒していただけませんか? わたくし、資料を見ながらでも食べやすいよう、バゲットサンドを用意してまいりましたの」



この昼食の誘いもいつもの流れだ。


毎度断られ続けているのに毎日誘えるメルカの鋼の心臓と、何なら断っても勝手にトールの近くでトールの顔を見ながら食事をしている無神経なまでのストーカー精神は、驚嘆に値する。


トールにしてみれば災難以外の何物でもないのだろう、毎回これについてはキッパリと断りの返事がある。



「絶対に嫌だ。お前なんかの顔を見ながら食事をとると消化に障る」



もはや暴言である。


だが今日初めてトールの声を聞けたと喜ぶメルカは、春の景色に負けないくらい明るくこの世の春とばかりの笑顔を浮かべている。


つまり、毎回トールからの断り文句も聞き入れやしない。


今までと同じように、トールが食事をとっている場所の近くへ寄ってきてトールの顔を見ながら勝手に1人で食べるのだろうことが予測できる笑顔であった。


トールは眉間の皺を深くし、深々とため息を吐いてから、正門前で足を速めて、メルカを置き去り校舎へと向かった。


ストーカーから解放された清々しさを背に滲ませ、早足で去っていくトールの背中を、メルカは見えなくなるまで目に焼き付けようと見送った。


どうせ同じ校舎、同じ教室に向かうのだから、ここまでの道のりと同じように一緒に歩いてくれても良いのに……とメルカは毎度思っている。


クリスの推測するには、トールは寮からの登校時間である10分もの間、メルカを撒くためだけに走るのは貴族としての品位に欠けると考えているのだろう、とのことだった。


しかし教室にまでストーカー女(メルカ)と共に入ると、本当に仲の良い婚約者同士なのだと外堀を埋められているように思われて怖気が走るため、妥協の一種として登校時間の10分だけメルカのストーキングを放置しているのではないか、とクリスは無礼極まりないルビ遣いで笑っていた。


きっと1年生のうちにめげてストーキングを控えるだろうと思っていたメルカが一向に音を上げないものだから、トール側が妥協を強いられているんだろうね、と解説するクリスは完全に面白がっていたが、こと完璧王太子の言うことである、大体トールの内心を見透かした話ではあるのだろう。


教室に着く頃には、早足の結果少し息が上がっているトールの姿に同情している生徒もいるとかどうとか。


トールの背が見えなくなった頃、メルカは淑女らしいペースで教室へ向かう。


メルカとトールは1年生の頃からずっと同じAクラスである。


貴族学院にはAクラスからDクラスまであり、身分と成績の両方を見てクラス分けが成されているが、どちらかといえば実力主義の傾向が強い。


ミカエルのような特殊例、あるいは豪商の子女などの平民出身者は、最も優れているとされるAクラスに入ることは出来ないが、爵位持ちの家の子女であれば、一代貴族の子であっても成績次第でAクラスに入ることが可能なシステムになっている。


トールは代々宰相を務める侯爵家の嫡男であり学年主席、メルカは現在王国に1つだけの公爵家の1人娘であり、成績も常に5位以内であるため、双方同じAクラスに振り分けられている。


他には『聖ヒロ』で攻略対象だったカナン第二王子や、悪役令嬢という立ち位置にいたユリエラ・リリスベルがAクラスに在籍している。


昨日聞いたところ、ミカエルは、学問については平民向けの学校や下町の古本屋などに通って平民としての平均以上には修めており、剣や魔法の腕も実践級の上澄み、ということで、転入試験での成績がかなり良く、クラス分けではBクラスとなっているらしい。


ただ、学年全体の試験結果はクラスの別なく順位が貼りだされるので、ミカエルやBクラスの上澄みの生徒が学年全体の高順位に入ることも考えられる。


ほとんどトールのストーカーをするために通っている学院(とメルカは思っている)とはいえ、公爵家の1人娘として世間体を思えば、あまり低い順位をとるわけにもいかない。


3年生での成績は王宮への仕官など進路に大きく影響するため、多くの生徒が必死に順位を上げようと奮起する。


メルカもあまり気を抜かずに過ごした方が良いだろう。


そのように一応のクラス分けはされているものの、連絡事項などを告げる朝のホームルームがあるのみで、貴族学院は前世でいうところの大学に似たシステムで授業を行っている。


マナー、ダンス、魔法学の一部、などの一定の必修科目以外は、個人の必要な授業を選択して受け、進路を決める方式だ。


当然、メルカは進路のことなど知ったことかとばかりにトールと全く同じ科目を履修している。


授業中、遠目に眺めるトールの真剣に授業を聞く横顔は美しく、賢さが後光のように輝いて見えて、メルカは素晴らしく充足した気持ちになる。


遠目にというのは、トールは授業中近くには座らせてくれないためである。


実際、メルカもトールの学業の障りになるのは嫌なので、ちゃんと離れた距離の席に座っている慎みあるストーカーなのだ。


メルカは授業中ずっとトールを眺め続けているが、ちゃんと授業を聞き、ノートもまとめるという無駄に小器用な芸当をやってのけているため、教員もメルカを叱るに叱れないのだった。







そんなこの2年強で学院全体に染みついた"いつも通り"が崩れ去ったのは、その日の昼休みのことである。


というのは、メルカが昼休みになったとき、教室を出ていくトールを追っての昼食へのお誘い(ついでに告白)を行わなかったのだ。


メルカのトールへのストーキング及び愛の告白、からのトールのぶった斬り劇は彼らが学院へ入学してから毎日のことであり、タイミングとしては朝の登校ストーキング、昼休みの昼食のお誘いついでに告白、放課後の下校ストーキング、の3回ある、というのが学院生徒の共通認識であった。


もはや前世でいうところの印籠を見せるご老公ドラマ程度のお約束、学院の名物劇場と化しており、トールへ同情する生徒も居れば、メルカの恋路が成るか面白がっている生徒も居て、昼休みになると別のクラスの生徒もAクラス近くの廊下へ見物に集まるのだった。


ちなみに、原作のメルカ・ロマリウスは本来控えめな性質であり、互いの生母間の確執についてトールへ大きな負い目を感じており、今のようにドストレートなストーキングや告白玉砕劇場などはしていなかったことを添えておく。


ともかく、朝の登校ストーキングがあった以上、トールを昼食に誘い、同時に愛の告白を叫んですげなく拒絶されるメルカの姿は当たり前に観測されるものだと学院の生徒たちは思っていた。


それが、メルカは告白どころか教室を出ていくトールのあとすら追わず、のんびりと教科書類を整理してから、トールが向かったのとは別方向へ向かったのである。


そのメルカがどうしたのかと言えば、隣のBクラスの教室へ向かい、3年生からの転入生、聖人と噂のある美青年、ミカエルと共に食堂へ行って、持参した昼食を一緒に食べたという……!


まさに青天の霹靂である。


しかも、食堂で近くに座っていた生徒が言うには、メルカとミカエルは互いに「ミカ」「メル」と愛称で呼び合い、まるで以前からの恋人同士のような親し気な雰囲気で笑いあっていたとのことだ。


無論、メルカとしては何のことはない、貴族学院では珍しい平民出身者かつ急な転入生となったミカエルのことを親友として心配し、学院の案内、暗黙の了解だとか、基礎的マナーなどを教える機会が必要だろうと思っての行動である。


メルカは登下校をトールに合わせて行う上、授業でもミカエルとはあまり一緒にならない。


男子生徒寮にはメルカは立ち入れないことも合わせて考えると、昼休みの時間をミカエルの世話焼きに当てるのが良いかなという判断であった。


トールへの昼食の誘い自体は朝にもしており、その際既に断られている。


トールが昼食をとる姿を目に焼き付けられないのは残念だが、前世からの親友を放っておくのは気が咎める。


昼休みに改めて誘ったところでトールが断ることはそれこそお約束となっているし、ミカエルが学院に慣れるまでは一緒に昼食をとろう、とメルカはこの程度の意識だった。



「このバゲットサンドうまいじゃん。メルの手作り?」


「ミカ、高位の貴族令嬢は普通厨房には立ち入れませんのよ。わたくしは使用人にレシピを渡して作らせているだけですわ」


「そういうのめんどくさそ~……」


「聖人となった以上、高位貴族にまつわるマナーは避けられませんわよ、ミカ。貴方は昔からその辺りいい加減でしたし、わたくし心配で」


「お母さんかよ~ありがとね。でも懐かしい味だな、20年以上ぶりに食べた。毎日食べたいくらいおいしいよ」


「ふふ、それはどうもありがとうございます。使用人にも伝えておきますわ」



このように、メルカとミカエルの意識では前世の延長線上、親友同士の距離感で談笑していただけなのだが、2人は自分たちが前世とは性別が分かたれたことを失念していた。


メルカは今まで事務的必要事項が生じない限り、トール以外の男子生徒と話をしたことが無い、というのは学院中の常識であった。


メルカは、実は絶世の美少女なのである。


トールへの行き過ぎたストーカー行為さえなければ、声をかけてお近づきになりたい男子生徒は蟻塚の蟻ほど居た。


公爵家令嬢という身分を恐れ多く思う敬意もメルカから異性を遠ざけた原因ではあるものの、ほとんどはトールしか見えていない一途さを前に声をかけることから諦めていたのだ。


それが! トール以外の異性と談笑し、可憐な笑みを見せている……!


妬み嫉み驚愕羨望、といった感情を伴って、その事実は瞬く間に生徒から生徒へ広まった。


ミカエルとはどういう関係なのか、聖人だから王家の血を引くメルカが特別に世話係となったのか、しかし同性であるカナン第二王子が同学年に在籍している以上、王家からの打診とも思えない……等々、噂は尾鰭や胸鰭をつけながらぐるり学院を巡る。


Aクラスの教室も昼休みの後半はその話で持ち切りであり、トールが昼食を済ませて教室へ戻ってきた時には、数秒不自然な静寂が生まれたほどであった。


とはいえ人の口に戸は立てられぬ、トールの耳に入らないよう声を潜めて話しても、複数人がほとんど同じ話をしていれば自然、トールも内容を理解する。


メルカが、自分ではない男と、昼食を共にし、談笑していた。


噂からその事実を拾ったトールは、不快すら匂わせない、一切の感情を排した能面のごとき無表情を浮かべた。

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